釈迦を生んだ母。右の脇から子が生まれる場面で表される。
摩耶夫人とはどんな仏か
摩耶夫人をひとことで言えば釈迦の母です。カピラの城の王の妃でした。
花の咲く園で木の枝に手を伸ばしたとき、右の脇から釈迦が生まれたと伝えられます。産後まもなく世を去り、天に生まれ変わったと説かれます。
像はこの誕生の場面を写します。右の脇から小さな人が現れるという形は、日本の仏像のなかでほかに例がありません。
東京国立博物館には、法隆寺から献納された重要文化財の「摩耶夫人および天人像」が伝わります。摩耶夫人像と天人像を合わせた四躯一組で、飛鳥時代・七世紀の銅製鋳造・鍍金像です。摩耶夫人像は高さ16.5センチメートル。小さな像のなかに誕生の場面が組み立てられています。寺ではなく博物館が持つ像なので、会えるのは展示に出ているときにかぎられます。
摩耶夫人の読み方と梵名
読みは「まやぶにん」です。「まやふじん」ではありません。
「夫人」を「ぶにん」と読むのは、仏教で使われる古い読み方です。一般の「ふじん」と字は同じですが、読みが違います。
梵名マーヤーを音で写して「摩耶」としました。
摩耶夫人(まやぶにん)
もっとも広く使われる形。
摩訶摩耶(まかまや)
「摩訶」は大いなるという意味。
マーヤー(まーやー)
梵名を仮名で写した形。
マーヤー(Maya)
意味は「幻」。読みは「まーやー」。
摩耶夫人の見分け方(印相・持ち物・姿)
右手を上げて木の枝をつかみ、右の脇から小さな釈迦が現れる。 これ以外の形はほとんどありません。
姿勢 ─ 右手を上げる
右手を高く上げ、木の枝をつかむ姿で立ちます。園で花を見ようと手を伸ばした場面です。
体をわずかにひねり、左手は下げます。
この姿勢は摩耶夫人だけのもので、ほかの尊格には見られません。
右の脇 ─ 小さな釈迦
上げた右手の脇のあたりから、小さな釈迦が上半身だけ現れます。
生まれたばかりの釈迦は片手を上げた姿で、灌仏会に水を注がれる誕生仏と同じ形です。
小さすぎて見落とすことがあるため、像を見るときは右の脇に目をこらしてください。
身なり ─ 唐風の衣
装身具を着けた女性の姿で、唐風の衣をまといます。頭には髪を結い上げます。
天人を伴う作例があります。東京国立博物館の像は、摩耶夫人像と天人像を合わせて四躯一組です。
武器も法具も持ちません。
摩耶夫人のご利益
安産
釈迦を生んだ母であることによる。
子どもの健やかさ
誕生の場面を表すことによる。
亡き母を偲ぶ
産後まもなく世を去ったという伝えによる。
摩耶夫人に会える寺
摩耶夫人の像を寺で拝める例は、確かめられませんでした。
国の指定を受けた像は、東京国立博物館が持つ摩耶夫人および天人像(重要文化財、四躯)です。東京国立博物館は飛鳥時代・七世紀の銅製鋳造・鍍金像とし、法隆寺の誕生会で用いられたと説明しています。もとは法隆寺から献納されたものです。
博物館に預けられている像なので、会えるのは展示に出ているときだけです。 常に見られるわけではありません。
摩耶夫人をめぐる仏のつながり
摩耶夫人の位階と、似た仏との違い
摩耶夫人は羅漢と高僧の組に置かれます。仏でも菩薩でもなく、実在したとされる人物です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。摩耶夫人はそのどれにも属しません。
出家した弟子ではありませんが、釈迦のまわりの人として、弟子たちと同じ組に置かれます。
鬼子母神 ─ どちらも子と結びつく女性
どちらも子どもの守りと結びつきます。
見分けは持ち物です。鬼子母神は吉祥果を持ち、子を抱くか従えます。摩耶夫人は右手を上げて枝をつかみ、脇から釈迦が現れます。
羅睺羅 ─ どちらも釈迦の身内
摩耶夫人は釈迦の母、羅睺羅は釈迦の子です。
見分けは容易です。摩耶夫人は女性の姿、羅睺羅は頭を丸めた僧です。
吉祥天 ─ どちらも唐風の衣の女性
どちらも装身具を着けた女性の姿で、唐風の衣をまといます。
見分けは手です。吉祥天は如意宝珠を捧げて正面を向き、摩耶夫人は右手を高く上げます。
摩耶夫人についてよくある質問
摩耶夫人とはどんな人ですか。
釈迦の母です。花の咲く園で木の枝に手を伸ばしたとき、右の脇から釈迦が生まれたと伝えられます。産後まもなく世を去ったとされます。
摩耶夫人の読み方は。
「まやぶにん」です。「夫人」を「ぶにん」と読むのは仏教で使われる古い読み方で、「ふじん」ではありません。
摩耶夫人はどう見分けますか。
右手を上げて木の枝をつかみ、その右の脇から小さな釈迦が現れる形です。この姿勢はほかの尊格には見られません。
摩耶夫人の像はどこで見られますか。
寺で拝める例は確かめられませんでした。東京国立博物館が持つ重要文化財の銅造摩耶夫人及天人像があり、展示に出ているときに会えます。
摩耶夫人と併せて覚えたい言葉・用語
誕生仏(たんじょうぶつ)
生まれたばかりの釈迦の像。片手を上げる。
灌仏会(かんぶつえ)
釈迦の誕生を祝い、像に水を注ぐ行事。
寄託(きたく)
寺の像を博物館に預けること。会える場所が変わる。