釈迦のそばにいた十人の弟子。それぞれが得意なわざで名を残した。
十大弟子とはどんな仏か
十大弟子をひとことで言えば釈迦の高弟十人です。舎利弗・目連・摩訶迦葉・須菩提・富楼那・迦旃延・阿那律・優波離・羅睺羅・阿難の十人を数えます。
面白いのは、一人ずつに得意なわざが決められていることです。智慧第一の舎利弗、神通第一の目連、多聞第一の阿難というように、名の下に短い言葉が添えられます。
仏像としての見どころは、顔がひとりずつ違うことにあります。 如来や菩薩は決まりに従って同じ顔に彫られますが、十大弟子は若い顔から老いた顔まで彫り分けられます。人の顔を彫るという仕事が、ここで初めて表に出ます。
奈良の興福寺には天平時代の乾漆像が伝わります。国宝ですが、十躯そろってはおらず六躯だけが残っています。
十大弟子の読み方と梵名
読みは「じゅうだいでし」です。
「弟子」は、出家して釈迦に従った僧を指します。在家の信者は含みません。
十人の顔ぶれは経典によって少しずつ違います。「十大弟子」という数えかたそのものが、後の世に整えられたものだからです。
十大弟子(じゅうだいでし)
もっとも広く使われる形。
釈迦十大弟子(しゃかじゅうだいでし)
誰の弟子かを添えた形。
十弟子(じゅうでし)
短く呼ぶ形。
十大弟子の見分け方(印相・持ち物・姿)
冠も装身具も無い僧の姿で、顔がひとりずつ違います。菩薩や天部との見分けはここでつきます。
姿 ─ 頭を丸め袈裟をまとう
全員が頭を丸め、袈裟をまとって立ちます。冠・瓔珞・腕釧はいっさい着けません。
菩薩は必ず装身具を着けるので、そこで区別できます。天部のように甲を着けることもありません。
足は素足か履物で、台座は簡素な蓮華か框です。
顔 ─ 老いと若さを彫り分ける
摩訶迦葉は頬のこけた老僧、阿難と羅睺羅は若い顔に彫られます。
顔の年齢差そのものが、十人を並べたときの見どころになります。 興福寺の乾漆像は、この彫り分けの古い到達点として知られます。
ただし、どの像が誰かは伝えが揺れており、確定していないものもあります。
手 ─ 合掌か経巻
手は胸の前で合わせるか、経巻や払子を持ちます。武器も法具も持ちません。
口をわずかに開いた像は富楼那、目を伏せた像は阿那律と伝えられることがありますが、確かな決まりではありません。
持ち物で個々を判じるのはむずかしく、像に添えられた名で知るのが確実です。
十大弟子のご利益
学びの成就
教えを受け継いだ弟子であることによる。
言葉を正しく伝える
阿難が経典を伝えたことによる。
志を貫く
各自が一つの道を極めたとされることによる。
十大弟子に会える寺
十大弟子の像は、釈迦如来を本尊とする古い寺に伝わります。奈良の興福寺、京都の大報恩寺、神奈川の極楽寺などです。
ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。
十躯そろって残る例は多くありません。 欠けた像がある場合、堂の説明板に員数が記されています。
興福寺(こうふくじ)
国宝
天平時代の乾漆像です。十躯のうち六躯だけが残っています。
文化庁の国指定文化財等データベースでも員数は六躯と記されています。国宝館で公開されています。
所在地は寺の公式サイトで確かめた。
大報恩寺(だいほうおんじ)
重要文化財
大報恩寺の住所:京都府(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造十大弟子立像 十躯/重要文化財
この像に結び付く願い:志を貫く
十躯そろって伝わる数少ない例です。千本釈迦堂の名で知られます。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が大報恩寺と記されています。
同じ寺に六観音像の重要文化財も伝わる。
十大弟子をめぐる仏のつながり
十大弟子の位階と、似た仏との違い
十大弟子は羅漢と高僧の組に置かれます。仏でも菩薩でもなく、実在した弟子たちです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。十大弟子はそのどれにも属しません。
悟りを得た弟子を羅漢といい、十六羅漢・五百羅漢と同じ組に入ります。十大弟子は羅漢のなかでも、名と人柄がはっきりしている十人です。
十六羅漢 ─ どちらも釈迦の弟子
どちらも僧の姿で並べられます。十六羅漢は釈迦の命でこの世に留まった者たちで、名の顔ぶれが違います。
見分けは数と持ち物です。十六羅漢は虎や竜を伴ったり、経巻や払子を持ったりする形が多く、十大弟子より飾りが多くなります。
五百羅漢 ─ 人数の違い
どちらも羅漢です。五百羅漢は五百人まとめて表され、一人ずつの名は問われません。
十大弟子は名と得意なわざが決まっており、五百羅漢は決まっていません。 並ぶ数を見れば一目で分かります。
八部衆 ─ 興福寺で並んで伝わる
興福寺には、十大弟子と八部衆がどちらも天平時代の乾漆像として伝わります。
見分けは姿です。八部衆は甲を着け、顔が三つあったり鳥の頭を持ったりします。十大弟子は人の姿の僧です。
十大弟子についてよくある質問
十大弟子とは誰のことですか。
舎利弗・目連・摩訶迦葉・須菩提・富楼那・迦旃延・阿那律・優波離・羅睺羅・阿難の十人です。経典によって顔ぶれが少し違います。
十大弟子はどう見分けますか。
頭を丸め袈裟をまとった僧の姿で、冠も装身具も着けません。顔がひとりずつ彫り分けられているのが特徴です。
興福寺の像は十躯そろっていますか。
そろっていません。文化庁の国指定文化財等データベースでも員数は六躯と記されています。
十大弟子の像はどこで見られますか。
奈良の興福寺に国宝の乾漆像六躯、京都の大報恩寺に重要文化財の木造像十躯が伝わります。
十大弟子と併せて覚えたい言葉・用語
羅漢(らかん)
悟りを得た弟子。阿羅漢の略。
乾漆(かんしつ)
麻布を漆で貼り重ねて像を造る技法。
袈裟(けさ)
僧がまとう衣。四角い布を継いで作る。