布を巻いて願をかけられてきた地蔵。腰から下の願いを受けるとされる。
腰巻地蔵とはどんな仏か
腰巻地蔵をひとことで言えば布を巻かれる地蔵です。腰に巻く布を奉じて願をかけたことから、この名で呼ばれてきました。
腰から下の病や、産の軽いことを願う対象とされてきました。願う場所と、布を巻く場所とが重なっています。
布を身につけさせるという願のかけ方は、地蔵に広く見られます。前掛けや帽子を着せる習わしと同じ流れにあり、自分の身につけたものを託して、身代わりになってもらうという考え方です。
そのため像は布に覆われていることが多く、彫りの細かいところが見えない場合があります。布をはずして拝むものではありません。
腰巻地蔵の読み方と梵名
読みは「こしまきじぞう」です。
「腰巻」は、腰に巻いて身につけた布を指す古い言葉です。いまの暮らしでは使わなくなった言葉ですので、呼び名だけを聞いても由来がつかみにくくなっています。
布を奉じて願う祀り方には、前掛けを着せる、帽子をかぶせる、赤い布を巻くなど、さまざまな形があります。
腰巻地蔵(こしまきじぞう)
もっとも広く使われる形。
腰巻地蔵尊(こしまきじぞうそん)
尊を添えた形。
腰巻さん(こしまきさん)
土地で親しんで呼ぶ形。
布掛け地蔵(ぬのかけじぞう)
同じ型の祀り方をする地蔵の呼び名。
クシティガルバ(Ksitigarbha)
意味は「大地の蔵」。地蔵菩薩の梵名。腰巻という語は日本の習わしから生まれた呼び名。読みは「くしてぃがるば」。
腰巻地蔵の見分け方(印相・持ち物・姿)
布に覆われているのがふつうです。像そのものが見えないことも珍しくありません。
布 ─ 願いを託して巻く
身につけていた布を像に巻いて願います。自分の身の代わりに、布を差し出すという考え方です。
前掛けや帽子を着せる習わしと、根は同じものです。
願いがかなったあと、新しい布を奉じてお礼にするという流れも見られます。
姿 ─ 布の下は地蔵菩薩
願い ─ 腰から下
腰から下の病、足腰の丈夫さ、産の軽さといった願いが寄せられてきました。
布を巻く場所と、願う場所とが重なっています。体の部位と願いが結びつく祀り方の一例です。
同じ考え方は、目の病を願って目の絵馬を奉じる習わしなどにも見られます。
腰巻地蔵のご利益
安産
産の軽いことを願う対象とされてきたことによる。
病を除く
腰から下の病を願う対象とされてきたことによる。
救済
地蔵菩薩のはたらきそのものによる。
腰巻地蔵に会える寺
腰巻地蔵の名で国の指定を受けた彫刻は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで探しても、この名を持つ国指定の彫刻は見つかりません。そのため寺の名も住所も書いていません。
布に覆われた像は、調べる側から中身が見えません。 これが記録の残りにくい理由のひとつです。加えて、女性の願いに結びついた祀り方は、寺の帳面よりも土地の口伝えで受け継がれてきました。
訪ねるときは、現地の案内板や自治体の民俗の説明を確かめてください。
腰巻地蔵をめぐる仏のつながり
腰巻地蔵の位階と、似た仏との違い
腰巻地蔵は菩薩の位に置かれます。地蔵菩薩の呼び名のひとつです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。地蔵は菩薩にあたります。
布を掛けられる仏は地蔵にほぼ限られます。 如来や明王に前掛けを着せることはありません。人がじかに手を触れられる仏だからです。
地蔵菩薩 ─ 本体と、呼び名
腰巻地蔵の中身は地蔵菩薩そのものです。地蔵菩薩には別に記事があります。
姿は変わらず、布を奉じる習わしによって呼び名が変わっただけです。
賓頭盧 ─ どちらも人が直に触れる
どちらも人が手を触れて願う仏です。賓頭盧はなでられ、腰巻地蔵は布を巻かれます。
触れ方は違いますが、体の悪いところを託すという考え方は同じです。
腰巻地蔵についてよくある質問
腰巻地蔵とは何ですか。
腰に巻く布を奉じて願をかけたことから、この名で呼ばれてきた地蔵です。腰から下の病や産の軽さを願う対象とされてきました。
腰巻の読み方は。
「こしまき」です。腰に巻いて身につけた布を指す古い言葉です。
なぜ布を巻くのですか。
自分の身につけたものを託し、身代わりになってもらうという考え方です。前掛けや帽子を着せる習わしと根は同じです。
なぜ記録が少ないのですか。
布に覆われて像の中身が見えないことに加え、女性の願いに結びついた祀り方が、寺の帳面よりも土地の口伝えで受け継がれてきたためです。
腰巻地蔵はどこにありますか。
確かな資料で確かめられませんでした。国指定の彫刻としても見つかりませんので、この記事では寺の名を挙げていません。
腰巻地蔵と併せて覚えたい言葉・用語
前掛け(まえかけ)
地蔵の胸から下に掛ける布。赤いものが多い。
奉納(ほうのう)
願いや礼として仏前に品を供えること。
安産(あんざん)
無事に子を産むこと。