朽ちずに残った僧の体を、そのまま像として堂に安置したもの。
肉身菩薩とはどんな仏か
肉身菩薩をひとことで言えば人の体そのものが像になったものです。全身舎利とも呼ばれます。
高僧が世を去ったのち、その体が朽ちずに残ったとき、漆や布を重ねて表を固め、そのまま堂に据えます。彫るのではなく、遺された体を包んで像に仕立てるという作り方です。
もとは中国の禅宗で行われました。座ったまま息を引き取り、体が崩れなかった僧を「生き身のまま仏となった」と受け取り、金箔を押して堂に安置したと伝えられます。
日本にも似た信仰があり、長い断食を経て入定した僧の体を祀る例が各地にあります。ただし中国の肉身菩薩と、日本のいわゆる即身仏とを同じ流れとして語ってよいかは、はっきりしていません。
肉身菩薩の読み方と梵名
読みは「にくしんぼさつ」です。
「肉身」は生身の体を指します。木や金銅を彫った像に対して、人の体そのものであることを示す言葉です。
舎利とは、もとは火葬したあとの骨を指します。 体が丸ごと残った場合を「全身舎利」と呼び分けます。
肉身菩薩(にくしんぼさつ)
もっとも広く使われる形。
肉身仏(にくしんぶつ)
菩薩を仏に置きかえた形。
全身舎利(ぜんしんしゃり)
体すべてが舎利であるという意味の呼び方。
真身(しんじん)
まことの体という意味の呼び方。
肉身菩薩の見分け方(印相・持ち物・姿)
彫った像ではないという一点が、他のすべての仏像と違います。
作り ─ 彫らずに包む
木を彫るのでも、金銅を鋳るのでもありません。残った体に漆や布を重ね、表を固めて形を保たせます。
内側に人の体があるという点で、他の仏像とまったく違います。
金箔を押し、衣を着せて堂に据えると、外からは彫像と見分けがつかなくなります。
姿 ─ 座ったまま
座ったままの姿で残されるのがふつうです。息を引き取ったときの形をそのまま留めるためです。
手は膝の上で組むか、合掌させます。
目を閉じ、口を結んだ静かな顔つきになるのは、彫り手が決めた表情ではないからです。
扱い ─ 厨子に納める
多くは厨子に納められ、決まった日にだけ開帳されます。秘仏として扱われるのがふつうです。
傷みを防ぐため、衣を替える行事を続けている堂もあります。
拝む側の心構えも、彫像とは違ったものが求められてきました。
肉身菩薩のご利益
志を貫く
長い行を続けたまま世を去ったとされることによる。
救済
世に留まって人を救うと願ったとされることによる。
病を除く
身を捧げて人の苦を引き受けたと語られることによる。
肉身菩薩に会える寺
肉身菩薩の名で国の指定を受けた彫刻は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで探しても、この名を持つ国指定の彫刻は見つかりません。彫った像ではないため、彫刻としての扱いを受けにくいことが理由と考えられます。
どの堂にどの像があるかを確かな資料で確かめられなかったので、この記事では寺の名を挙げません。 各地に伝わる例については、堂の説明や自治体の案内を確かめてください。
多くは秘仏として扱われ、開帳の日が限られています。
肉身菩薩をめぐる仏のつながり
肉身菩薩の位階と、似た仏との違い
肉身菩薩は、如来・菩薩・明王・天部のどれにも属しません。 人が仏として祀られたものです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。肉身菩薩はそのどれにも入りません。
実在した僧が、亡くなったのちに仏として祀られた例にあたります。菩薩の名が付けられていても、経典に説かれる菩薩ではありません。
達磨 ─ どちらも禅宗の僧
どちらも禅宗で祀られる僧です。達磨は木や漆で彫られた像として伝わります。
肉身菩薩は彫られた像ではありません。作り方そのものが違います。
五百羅漢 ─ どちらも人の姿を写す
どちらも人の顔を写します。五百羅漢は木や石を彫った像で、顔は彫り手が作ります。
肉身菩薩の顔は彫り手が作ったものではありません。そこが決定的に違います。
肉身菩薩についてよくある質問
肉身菩薩とは何ですか。
世を去ったのちも体が朽ちなかった僧を、漆や布で固めてそのまま像として堂に安置したものです。全身舎利ともいいます。
肉身の読み方は。
「にくしん」です。生身の体を指し、彫った像でないことを示す言葉です。
日本の即身仏と同じものですか。
よく似ていますが、同じ流れとして語ってよいかははっきりしていません。中国の禅宗の習わしと、日本の山中の行とでは背景が違います。
見た目で彫像と区別できますか。
できないことが多くあります。漆や布で表を固め、金箔を押して衣を着せると、外からは彫像と見分けがつきません。
肉身菩薩はどこで見られますか。
確かな資料で確かめられなかったため、寺の名は挙げていません。多くは秘仏として扱われ、開帳の日が限られています。
肉身菩薩と併せて覚えたい言葉・用語
全身舎利(ぜんしんしゃり)
体が丸ごと残った場合の舎利の呼び方。
入定(にゅうじょう)
行のうちに息を引き取ること。
厨子(ずし)
仏像を納める扉付きの箱。