壁に向かって九年座ったと伝えられる、禅の教えを伝えた僧。
達磨とはどんな仏か
達磨をひとことで言えば禅を伝えた僧です。南インドの生まれで、中国へ渡って教えを説いたと伝えられます。
もっともよく知られているのは、壁に向かって九年のあいだ座り続けたという話です。面壁九年といいます。言葉で説くのではなく、ただ座ることそのものを教えとしました。
中国の皇帝に「どれほどの功徳があるか」と問われ、「無功徳」とだけ答えたという逸話も伝わります。積み上げたものを数える見方そのものを退けた答えでした。
日本では禅宗の寺の祖として祀られます。同時に、丸い張り子の玩具としても親しまれてきました。九年座り続けて手足が使えなくなったという伝えが、あの形を生んだとされます。
奈良県王寺町の達磨寺には、重要文化財の木造達磨坐像が伝わります。
達磨の読み方と梵名
読みは「だるま」です。梵名ボーディダルマの後半を音で写したものです。
「ボーディ」は悟り、「ダルマ」は法を指します。あわせて「悟りの法」という意味になります。
菩提達磨という書き方は、前半を「菩提」と音で写し、後半を「達磨」と音で写したものです。同じ語を二通りに写して並べた形になっています。
達磨(だるま)
もっとも広く使われる形。
菩提達磨(ぼだいだるま)
正式に近い形。
達磨大師(だるまだいし)
敬って呼ぶ形。
初祖(しょそ)
禅宗で最初の祖という意味。
ボーディダルマ(Bodhidharma)
意味は「悟りの法」。「ボーディ」が悟り、「ダルマ」が法。読みは「ぼーでぃだるま」。
達磨の見分け方(印相・持ち物・姿)
衣を頭からかぶり、太い眉と大きな目。手も持ち物も見えないのが達磨です。
姿 ─ 頭から衣をかぶる
衣を頭からすっぽりかぶった姿で彫られます。これを頭巾をかぶるという言い方で説く場合もありますが、実際には袈裟をそのまま頭にかけた形です。
寒さをしのぐためとも、外の世界を断つためとも説かれます。
顔の輪郭が衣に縁取られるため、正面から見ると顔だけが浮き上がって見えます。
顔 ─ 異国の顔立ち
太い眉、大きく見開いた目、濃い髭が特徴です。中国の人が思い描いた西方の顔立ちで、日本の僧の像とは明らかに違います。
目を見開いているのは、眠らずに座り続けたことを示すとされます。まぶたを切り落としたという伝えもありますが、経典に根拠はありません。
耳には輪の飾りを付ける例があります。出家前が王子だったという伝えによるものです。
持ち物 ─ 何も持たない
手は衣の中に隠れ、持ち物は何も持ちません。 これが達磨のいちばんはっきりした目印です。
錫杖も経巻も剣も持ちません。言葉によらず、物によらず伝えるという禅の立場が、そのまま姿に出ています。
片方の履物だけを杖に掛けた姿で描かれることがあり、これは死後に西へ帰る途中を見られたという伝えによります。
座り方 ─ 坐像がほとんど
立像はまれで、ほとんどが坐像です。九年座ったという話がそのまま形になっています。
背をまるめ、うつむき加減に座る姿が多く見られます。堂々と胸を張る如来の坐像とは、姿勢そのものが違います。
禅宗の寺では、開山堂や祖師堂に祀られます。本堂の中心に置かれることは多くありません。
達磨のご利益
志を貫く
九年座り続けたという伝えによる。
厄除け
張り子の達磨が転んでも起き上がることによる。
願いをかなえる
目を入れて願う習わしによる。
病を退ける
赤い色が疱瘡を退けるとされたことによる。
達磨に会える寺
達磨の像は、禅宗の寺の祖師堂に広く置かれています。臨済宗・曹洞宗・黄檗宗のいずれでも祀られます。
ただし国の指定を受けた古い像は多くありません。ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。
祖師堂は本堂と別の建物にあることが多く、公開されていない寺もあります。
達磨寺(だるまじ)
重要文化財
寺の名がそのまま達磨である寺です。文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が達磨寺と記されています。
聖徳太子が飢えた人に出会った場所という伝えを持ち、その人が達磨だったとされてきました。
寺の名と本尊の名が一致する例は、そう多くありません。
境内には古墳を利用した本堂が建つ。
達磨をめぐる仏のつながり
達磨の位階と、似た仏との違い
達磨は羅漢と高僧の組に置かれます。実在したとされる僧で、仏や菩薩ではありません。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。達磨はそのどれにも属さず、実在した人を祀る組に入ります。
禅宗では、釈迦から摩訶迦葉へ、そこから代々受け継がれた教えの二十八番目にあたるとされ、中国では最初の祖なので初祖と呼ばれます。
摩訶迦葉 ─ 禅の系譜の始まりと中継ぎ
禅の教えは、釈迦から摩訶迦葉へ、そこから達磨へ受け継がれたとされます。
見分けは姿です。摩訶迦葉は袈裟をまとった痩せた老僧で、頭は丸めています。達磨は衣を頭からかぶり、濃い髭をたくわえます。
賓頭盧 ─ どちらも赤く彩られる
どちらも老いた姿で、赤い衣を着せられることがあります。
見分けは置かれる場所です。賓頭盧は堂の外に置かれてなでられます。達磨は祖師堂の中に安置され、なでる対象ではありません。
賓頭盧は膝に手を置いて座り、達磨は手を衣に隠します。
役行者 ─ どちらも道をひらいた祖
どちらも人でありながら祖として祀られます。
達磨は座り、役行者は歩くという点が、そのまま教えの違いになっています。持ち物でも分かれ、達磨は何も持たず、役行者は錫杖と経巻を持ちます。
達磨についてよくある質問
達磨とはどんな人ですか。
南インドから中国へ渡り、禅の教えを伝えたとされる僧です。壁に向かって九年座り続けたという話が知られ、禅宗では最初の祖にあたります。
達磨の読み方は。
「だるま」です。梵名ボーディダルマの後半を音で写したもので、「悟りの法」という意味になります。
達磨はどう見分けますか。
衣を頭からかぶり、太い眉と大きな目、濃い髭をたたえた顔で座ります。手は衣に隠れ、持ち物を何も持ちません。
張り子の達磨とどう関係しますか。
九年座り続けて手足が使えなくなったという伝えから、手足の無い丸い形が生まれたとされます。転んでも起き上がることが縁起のよいものとされました。
達磨の像はどこで見られますか。
禅宗の寺の祖師堂に広く祀られます。国の指定を受けたものでは、奈良県王寺町の達磨寺に重要文化財の木造達磨坐像があります。
達磨と併せて覚えたい言葉・用語
面壁九年(めんぺきくねん)
壁に向かって九年座り続けたという達磨の伝え。
祖師堂(そしどう)
宗派を開いた人を祀る堂。禅宗では達磨を祀る。
初祖(しょそ)
中国における禅の最初の祖。達磨を指す。
無功徳(むくどく)
積み上げた功徳など無いという達磨の答え。