十二神将の筆頭。薬師如来を守る十二体の先頭に立つ。
宮比羅とはどんな仏か
宮比羅の読み方と梵名
読みは「くびら」です。「宮毘羅大将」は「くびらたいしょう」と読みます。
「宮毘羅」は梵名クンビーラの音を漢字に写したもので、字そのものに意味はありません。
同じクンビーラから、讃岐で信仰された金毘羅という名も生まれています。 十二神将の筆頭と、海の道を守る権現。名の出どころは同じです。
宮比羅(くびら)
もっとも短い形。
宮毘羅大将(くびらたいしょう)
文化財の名称に使われる形。
金毘羅大将(こんぴらたいしょう)
字を替えた形。金毘羅と同じ語から出る。
倶尾羅(くびら)
梵名の音を漢字に写した別の形。
クンビーラ(Kumbhira)
意味は「鰐」。インドの川にすむ鰐を指す語。金毘羅権現も同じ語から出る。読みは「くんびーら」。
宮比羅の見分け方(印相・持ち物・姿)
十二神将のなかで、どこに置かれているかが決め手です。姿は十二体でよく似ています。
姿 ─ 甲冑を着けた武将
甲冑を着け、武器を構えて立ちます。 顔は忿怒の相で、髪を逆立てる作例が多く見られます。
十二神将は十二体とも同じ装いで、姿だけで一体ずつを判じるのは困難です。
並びと、堂の説明に記された名で知るのが確実です。
位置 ─ 筆頭
十二神将を数えるとき、宮毘羅がいちばん初めに置かれます。
十二体には担当する時刻と方角が割り当てられ、宮毘羅は多くの場合その先頭にあたります。ただし割り当ての順序には流儀の違いがあります。
頭の上に十二支の獣を戴く形は、後の世に整えられたものです。古い像には見られません。
役目 ─ 薬師如来の十二の願い
薬師如来は十二の願いを立てたとされます。十二神将は、その一つずつを受け持って守ると説かれます。
一体につき七千の眷属を従え、あわせて八万四千になるとも言われます。
宮毘羅は、その先頭に立って全体を率いる位置にあります。
国宝から外れた一体
奈良の新薬師寺に伝わる塑造十二神将立像は、天平時代にさかのぼる名高い群像です。
しかし国宝の指定は十一躯で、宮毘羅大将像だけが含まれていません。 もとの像が失われ、後の時代に作り直されたためです。
筆頭の一体だけが国宝でないという事情は、この群像を訪ねるときにぜひ知っておきたい点です。
宮比羅のご利益
病気平癒
薬師如来を守ることによる。
厄除け
甲冑を着けて災いを退けることによる。
航海の安全
水にすむ鰐を名の由来とすることによる。
身の守り
十二の時刻と方角を分担することによる。
宮比羅に会える寺
宮比羅は、十二神将の一員として堂に置かれます。単独で祀られる例はほとんどありません。
奈良の新薬師寺には、天平時代の塑造十二神将立像が伝わります。国宝ですが、指定は十一躯で、宮毘羅大将像だけが外れています。 もとの像が失われ、後の時代に作り直されたためです。訪ねるときは、この一体だけ扱いが違うことを知っておくと見え方が変わります。
神奈川の曹源寺には、十二躯そろった重要文化財の木造十二神将立像が伝わります。こちらには宮毘羅大将も含まれます。
なお兵庫の温泉寺には、十二神将のうち波夷羅大将だけが重要文化財として伝わります。一体ずつが指定される場合もあるということです。
新薬師寺(しんやくしじ)
国宝
天平時代にさかのぼる塑造の群像です。国宝の指定は十一躯で、宮毘羅大将像だけが除かれています。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、名称に「宮毘羅大将像を除く」と明記されています。もとの像が失われ、後の時代に作り直されたためです。
筆頭の一体だけが国宝から外れているという、この群像ならではの事情です。 本堂に安置され、十二体そろって薬師如来を囲みます。
所在地は文化庁の国指定文化財等データベースおよび寺の公式の案内で確かめた。
曹源寺(そうげんじ)
重要文化財
曹源寺の住所:神奈川県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造十二神将立像 十二躯/重要文化財
この像に結び付く願い:身の守り
十二躯そろって重要文化財に指定されています。 宮毘羅大将も含まれます。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が曹源寺と記されています。
十二体が欠けずに残る例は多くありません。新薬師寺の像が十一躯の指定であるのと、対照的な形です。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
宮比羅をめぐる仏のつながり
宮比羅の位階と、似た仏との違い
宮比羅は天部の位に置かれます。十二神将の筆頭として薬師如来を守ります。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。宮比羅は天部です。
天部のなかでは、眷属にあたります。眷属とは、主となる尊格に従って働く者のことです。十二神将は十二体そろって薬師如来を囲むことで意味を持ち、一体だけ取り出して拝む形にはなっていません。
十二神将 ─ 組と、その筆頭
宮比羅は十二神将の一員です。十二体とも甲冑を着け、姿はよく似ています。
見分けは並びと、堂の説明に記された名です。持ち物で一体ずつを判じるのは困難です。
宮比羅は多くの場合、その先頭に数えられます。
金毘羅権現 ─ 同じ梵名から分かれた二つ
どちらも梵名クンビーラから出ています。 宮毘羅は十二神将の筆頭、金毘羅は讃岐で信仰された権現です。
見分けは姿と場です。宮毘羅は甲冑を着けて薬師如来を守ります。金毘羅権現は海の道を守るとされました。
同じ言葉から、寺の堂の中と海の上という別々の場へ広がりました。
四天王 ─ どちらも甲冑の守り手
どちらも甲冑を着け、武器を構えて仏を守ります。
見分けは数と足元です。四天王は四体で、邪鬼を踏みます。 十二神将は十二体で、邪鬼を踏みません。
守る相手も違います。四天王は堂全体と四方を守り、十二神将は薬師如来を守ります。
宮比羅についてよくある質問
宮比羅とはどういう尊格ですか。
薬師如来を守る十二神将の筆頭です。梵名クンビーラはインドの川にすむ鰐を指します。
なぜ新薬師寺の国宝は十一躯なのですか。
宮毘羅大将像だけが指定から外れているためです。もとの像が失われ、後の時代に作り直されました。文化庁の国指定文化財等データベースでも名称に「宮毘羅大将像を除く」と明記されています。
宮比羅の像はどこで見られますか。
奈良の新薬師寺と神奈川の曹源寺です。曹源寺の木造十二神将立像は十二躯そろって重要文化財に指定されています。
金毘羅と関係がありますか。
同じ梵名クンビーラから出ています。宮毘羅は十二神将の筆頭、金毘羅は讃岐で信仰された権現として、別々に広がりました。
十二神将のなかで宮比羅を見分けられますか。
姿は十二体ともよく似ており、持ち物で判じるのは困難です。並びと、堂の説明に記された名で知るのが確実です。
宮比羅と併せて覚えたい言葉・用語
十二神将(じゅうにしんしょう)
薬師如来を守る十二体の武将。宮毘羅が筆頭。
塑造(そぞう)
心木に土を盛って造る像の作り方。
眷属(けんぞく)
主となる尊格に従って働く者。