『大般若経』を守るとされる十六体の善神。彫刻ではなく絵として伝わる。
十六善神とはどんな仏か
十六善神の読み方と梵名
読みは「じゅうろくぜんじん」です。
「善神」は、仏の教えに従い、教えを守る側についた者を指します。ここでは夜叉の大将にあたります。
守るとされる『大般若経』は六百巻あり、全部を読むかわりに、巻をぱらぱらと繰って読んだことにする「転読」という作法が生まれました。 その法会の場に掛けるのが、この十六善神の図です。
十六善神(じゅうろくぜんじん)
もっとも広く使われる形。
釈迦十六善神(しゃかじゅうろくぜんじん)
中央の釈迦如来を含めて呼ぶ形。
大般若十六善神(だいはんにゃじゅうろくぜんじん)
守る経典の名を添えた形。
十六善神像(じゅうろくぜんじんぞう)
文化財の名称に使われる形。
十六善神の見分け方(印相・持ち物・姿)
中央の釈迦如来と、左右に八体ずつ並ぶ甲の者。下に経を背負う僧がいれば十六善神です。
構え ─ 釈迦を囲む二列
画面の中央上に釈迦如来を大きく描き、その左右に八体ずつを二列に配します。
十六という数は、四方と四隅に二体ずつを置いた並びから来ていると考えられます。
一体ずつは甲を着け、鉾・剣・弓・宝珠などを持ちます。忿怒の顔と穏やかな顔が混じります。
下の二人 ─ 僧と護法者
画面の下に、二人が小さく描き添えられます。
一人は経巻を背負った旅の僧で、玄奘三蔵とされます。もう一人は髑髏の飾りを胸に掛けた大きな身体の者で、深沙大将とされます。
この二人がいれば、十六善神の図とほぼ判じられます。 経典が天竺から運ばれた道のりを、画面の下に置いたものです。
彫刻がほとんど無い
十六善神は掛軸として作られました。 法会のたびに掛け、終われば巻いて納めます。
そのため彫刻に彫り起こす必要がなく、堂に据える像はほとんど作られませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで確かめたところ、国の指定を受けたものは絵画に限られ、彫刻は見あたりませんでした。
十六善神のご利益
経典を守る
『大般若経』を持つ者を守るとされることによる。
災いを払う
転読の法会が災いを除くために行われたことによる。
旅の安全
玄奘三蔵を守ったという筋立てによる。
十六善神に会える寺
十六善神の像を安置する堂は、確かめられませんでした。 掛軸として作られてきたためです。
文化庁の国指定文化財等データベースで「十六善神」を引くと、絹本著色の十六善神像が各地に指定されていますが、いずれも絵画で、彫刻の指定は見あたりません。
会いたい場合は、寺の宝物館や博物館の展示、あるいは『大般若経』の転読の法会に合わせて掛けられる機会を探すことになります。常に見られるとは限りません。
十六善神をめぐる仏のつながり
十六善神の位階と、似た仏との違い
十六善神は天部の位に置かれます。夜叉の大将にあたる十六体です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。十六善神は天部です。
天部のなかでは、経典を守る役目を負った群れという位置づけになります。薬師如来を守る十二神将、千手観音を守る二十八部衆と同じ組み立てです。
守る相手が仏ではなく経典である点が、この十六体の変わったところです。
十二神将 ─ どちらも夜叉の大将の群れ
どちらも甲を着けた夜叉の大将が並びます。
見分けは数と守る相手です。十二神将は十二体で薬師如来を守り、十六善神は十六体で『大般若経』を守ります。 十二神将は彫刻が多く残り、十六善神は絵ばかりです。
八大夜叉大将 ─ 同じく夜叉の大将
どちらも夜叉を率いる大将です。
見分けは数です。八大夜叉大将は八体で、曼荼羅の外側の院に描かれます。十六善神は十六体で、釈迦如来を囲む一枚の図として掛けられます。
深沙大将 ─ 同じ図に描き込まれる
十六善神の図の下方に添えられるのが深沙大将です。
見分けは容易です。深沙大将は髑髏の飾りを胸に掛け、腹に人の顔を持つ姿に作られます。 十六善神は甲を着けた大将の姿です。
十六善神についてよくある質問
十六善神とは何ですか。
『大般若経』を読み、書き写し、供養する者を守るとされる十六体の善神です。一体ずつは夜叉の大将の姿をとります。
十六の名前は決まっていますか。
決まっていません。図像集によって顔ぶれが食い違い、一定していません。まとまりとして扱われてきたためと考えられます。
十六善神の彫刻はありますか。
文化庁の国指定文化財等データベースで確かめたところ、国の指定を受けたものは絵画だけで、彫刻は見あたりませんでした。
図の下に描かれた二人は誰ですか。
経巻を背負った僧が玄奘三蔵、髑髏の飾りを掛けた大きな身体の者が深沙大将とされます。この二人がいれば十六善神の図と判じられます。
十六善神の図はどこで見られますか。
寺の宝物館や博物館の展示、あるいは『大般若経』の転読の法会に合わせて掛けられる機会にかぎられます。常に見られるものではありません。
十六善神と併せて覚えたい言葉・用語
大般若経(だいはんにゃきょう)
六百巻からなる長い経典。空の教えを説く。
転読(てんどく)
巻を繰って読んだことにする作法。
善神(ぜんじん)
仏の教えを守る側についた者。
絹本著色(けんぽんちゃくしょく)
絹に色をつけて描いた絵。文化財の名称に使う語。