岩屋や崖に堂を構えた観音。同じ呼び名が各地にある。
岩殿観音とはどんな仏か
岩殿観音をひとことで言えば岩場に堂を構えた観音です。「岩殿」は、岩でできた御殿という意味になります。
崖のくぼみや岩屋に堂を懸け、そこに観音を安置した場所が、そう呼ばれてきました。堂へ至る道が急な石段になっていることが多く、登り着いた先に堂があります。
険しい岩場は、古くから行の場とされてきました。そこへ観音を安置する形は、山にこもる修行と観音信仰とが結びついた跡と考えられます。
同じ「岩殿」を名乗る観音は各地にあります。呼び名が土地の形そのものから来ているためです。詳しい所在や由緒は、確かな資料で確かめられませんでした。
岩殿観音の読み方と梵名
読みは「いわどのかんのん」です。「がんでん」とは読みません。
「岩殿」は、岩が御殿のように見える地形、あるいは岩に懸けた堂そのものを指します。
同じ呼び名の観音が各地にあるため、「岩殿観音」だけでは一つの堂を指せません。 どこの岩殿かを添えて呼ぶ必要があります。
岩殿観音(いわどのかんのん)
もっとも広く使われる形。
岩殿観世音菩薩(いわどのかんぜおんぼさつ)
正式に近い長い形。
岩殿山(いわどのさん)
堂のある山を指す呼び方。
岩屋観音(いわやかんのん)
同じ成り立ちの別の呼び名。
アヴァローキテーシュヴァラ(Avalokitesvara)
意味は「見下ろす自在なるもの」。観音の梵名。岩殿という語は日本の地形から生まれた呼び名。読みは「あう゛ぁろーきてーしゅう゛ぁら」。
岩殿観音の見分け方(印相・持ち物・姿)
堂の位置そのものが呼び名の由来です。像の姿に決まった目印はありません。
場所 ─ 崖に懸ける
崖のくぼみや岩屋を利用して堂を建てます。平地の寺と違い、堂の背に岩壁が迫っているのがふつうです。
参道が長い石段になっていることが多く、登り着いた先に堂が現れます。
岩場そのものが古い行の場であった名残と考えられます。
本尊 ─ 千手観音や十一面観音
見分け ─ 腕と頭上を数える
岩殿観音のご利益
救済
観音のはたらきそのものによる。
苦しみを除く
観音が七つの難を除くと説かれることによる。
道中の安全
険しい参道を登って詣でてきたことによる。
岩殿観音に会える寺
岩殿観音の所在は、確かな資料で確かめられませんでした。 そのため寺の名も住所も書いていません。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、「岩殿」の名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
同じ呼び名の堂が各地にあることも、確かめにくさの一因です。 どの岩殿を指すかを決めないまま調べると、別の土地の別の堂の話が混ざります。
訪ねるときは、地名を添えて調べ、現地の案内板や自治体の説明を確かめてください。
岩殿観音をめぐる仏のつながり
岩殿観音の位階と、似た仏との違い
岩殿観音は菩薩の位に置かれます。観音菩薩を安置する堂の呼び名です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。観音は菩薩にあたります。
「岩殿」は位階でも尊名でもなく、堂の建つ場所を指す言葉です。 立木観音が彫り方から名を得たのに対し、こちらは地形から名を得ました。
観音菩薩 ─ 尊格と、場所の呼び名
岩殿観音の中身は観音菩薩そのものです。観音菩薩には別に記事があります。
千手観音であったり十一面観音であったりと、本尊は堂ごとに違います。
立木観音 ─ どちらも尊名以外で呼ばれる
どちらも尊名ではない言葉で呼ばれてきた観音です。
立木は彫り方、岩殿は堂の場所が呼び名のもとになっています。どちらも同じ呼び名の像が各地にあります。
蔵王権現 ─ どちらも岩場と結びつく
どちらも険しい岩場の行と結びついてきました。
蔵王権現は片足を高く上げ、忿怒の顔で立ちます。 観音は静かな顔で立つのがふつうですので、姿はまったく違います。
岩殿観音についてよくある質問
岩殿観音とは何ですか。
崖のくぼみや岩屋に堂を懸け、観音を安置した場所の呼び名です。「岩殿」は岩でできた御殿という意味になります。
岩殿の読み方は。
「いわどの」です。
本尊は何ですか。
千手観音や十一面観音とされることが多くあります。「岩殿」は場所を指す言葉ですので、堂ごとに本尊は違います。
岩殿観音はどこにありますか。
同じ呼び名の堂が各地にあり、確かな資料で所在を確かめられませんでした。地名を添えて調べてください。
なぜ岩場に堂を建てたのですか。
険しい岩場が古くから行の場とされてきたためと考えられます。山にこもる修行と観音信仰とが結びついた跡といえます。
岩殿観音と併せて覚えたい言葉・用語
岩屋(いわや)
岩にできたくぼみや洞。行の場とされてきた。
懸造(かけづくり)
崖に柱を立てて張り出させる建て方。
化仏(けぶつ)
宝冠や光背に付けられる小さな仏の姿。