根の付いた立ち木に、そのまま彫り出したと伝えられる観音。
立木観音とはどんな仏か
立木観音をひとことで言えば生えたままの木に彫った観音です。切り出した材ではなく、地に根を張って立っている木に、その場で彫り込んだと伝えられます。
彫り上げたあと、まわりに堂を建てて覆います。像が動かせないため、堂のほうを像に合わせて建てることになります。
木そのものに力が宿るという古い感じ方と、仏像を彫る技とが重なったところに生まれた形です。同じ呼び名の観音は各地にあり、彫った人を名高い僧に結びつける言い伝えが添えられていることが多くあります。
栃木の輪王寺には、木造千手観音立像〈立木観音堂安置〉が重要文化財として伝わります。ただし、この一躯がすべてではありません。
立木観音の読み方と梵名
読みは「たちきかんのん」です。「りゅうぼくかんのん」とは読みません。
「立木」は、地に根を張って立ったままの木を指します。切り倒して寝かせた材と区別するための言葉です。
同じ呼び名の観音が各地にあるため、「立木観音」だけでは一つの像を指せません。 どこの立木観音かを添えて呼ぶ必要があります。
立木観音(たちきかんのん)
もっとも広く使われる形。
立木観世音菩薩(たちきかんぜおんぼさつ)
正式に近い長い形。
立木仏(たちきぶつ)
観音以外も含めた呼び方。
生木仏(いきぎぶつ)
生えたままの木であることを示す形。
アヴァローキテーシュヴァラ(Avalokitesvara)
意味は「見下ろす自在なるもの」。観音の梵名。立木という語は日本で加えられた呼び名。読みは「あう゛ぁろーきてーしゅう゛ぁら」。
立木観音の見分け方(印相・持ち物・姿)
足もとが台座になっていないことがあります。木の根がそのまま床下へ続く形です。
足もと ─ 台座を持たない
彫り出したままの像は、蓮華座に載りません。木の根に続く部分がそのまま下へ伸びます。
堂の床が像の足もとで途切れていたり、床下に幹が続いていたりする例があります。
ただし後の世に台座を添えた例もあり、いまの姿だけでは判じられません。
姿 ─ 千手観音や十一面観音
確かめにくさ ─ 言い伝えとして受け取る
本当に立ち木のまま彫られたかどうかを、像の外から確かめるのは難しいところです。
言い伝えとして受け取り、断定しないのが正確な向き合い方です。
彫り方を調べた記録が残っている像は多くありません。
立木観音のご利益
救済
観音のはたらきそのものによる。
土地を守る
動かせない像として土地に留まることによる。
苦しみを除く
観音が七つの難を除くと説かれることによる。
立木観音に会える寺
立木観音と呼ばれる像は各地にあります。ここに挙げたのは、指定名称に「立木観音堂」と記され、所有者を文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。
他の土地の立木観音については、所有者や所在を確かめられなかったため、この欄には入れていません。
呼び名だけを頼りに探すと、別の土地の別の像にたどり着くことがあります。地名を添えて調べるのが確実です。
輪王寺(りんのうじ)
重要文化財
輪王寺の住所:栃木県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を輪王寺と確認。像を安置する立木観音堂の詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造千手観音立像〈立木観音堂安置〉一躯/重要文化財
この像に結び付く願い:救済
指定名称に「立木観音堂安置」と記された像です。文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が輪王寺と記されています。
なお輪王寺は複数の堂を持つ寺ですので、本坊の住所と、この像を安置する堂の場所とが同じとはかぎりません。 訪ねる前に公式の案内を確かめてください。
同じ寺に木造阿弥陀如来及四菩薩坐像の重要文化財も伝わる。
立木観音をめぐる仏のつながり
立木観音の位階と、似た仏との違い
立木観音は菩薩の位に置かれます。観音菩薩の像の一種です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。立木観音は観音菩薩ですので、菩薩にあたります。
「立木」は位階でも尊名でもなく、彫り方や由来を指す言葉です。 同じように、彫り方から名が付いた仏像には一木造や鉈彫りなどがあります。
観音菩薩 ─ 尊格と、彫り方の呼び名
立木観音の中身は観音菩薩そのものです。観音菩薩には別に記事があります。
千手観音であったり十一面観音であったりと、姿は像ごとに違います。共通するのは彫り方の言い伝えだけです。
千手観音 ─ 立木観音の多くがこの形
輪王寺の立木観音は、指定名称が「木造千手観音立像」です。
千手観音は腕が多数あり、頭上に小さな顔を載せます。 立木観音であっても、姿の見分け方は千手観音と同じです。
岩殿観音 ─ どちらも場所から名が付く
どちらも、尊名ではなく置かれ方や場所から呼び名が付いた観音です。
立木は木、岩殿は岩が呼び名のもとになっています。日本の観音信仰が土地と深く結びついてきたことを示す例です。
立木観音についてよくある質問
立木観音とは何ですか。
切り出した材ではなく、地に根を張って立ったままの木に彫ったと伝えられる観音像をいいます。彫ったあと、その場に堂を建てて覆います。
立木観音の読み方は。
「たちきかんのん」です。
本当に生えたまま彫ったのですか。
像の外から確かめるのは難しく、言い伝えとして受け取るのが正確です。彫り方を調べた記録が残る像は多くありません。
立木観音はどんな姿ですか。
一定しません。千手観音、十一面観音、聖観音などさまざまです。「立木」は彫り方を指す言葉で、観音の種類を指すものではありません。
立木観音はどこで見られますか。
栃木の輪王寺に、指定名称に「立木観音堂安置」と記された重要文化財の木造千手観音立像が伝わります。同じ呼び名の像は各地にあります。
立木観音と併せて覚えたい言葉・用語
一木造(いちぼくづくり)
一本の材から像の主要部を彫り出す作り方。
化仏(けぶつ)
宝冠や光背に付けられる小さな仏の姿。
蓮華座(れんげざ)
蓮の花をかたどった台座。