人を食らう王を教えに導いたとされる、前世の釈迦にあたる王。
普明王とはどんな仏か
普明王をひとことで言えば約束を守って牢に戻った王です。『仁王般若経』などに説かれ、釈迦の前世のひとつとされます。
物語はこうです。仙術をかけられて人の肉を食うようになった斑足王が、千人の王を捕らえました。そのなかにいた普明王は、婆羅門に施しをする約束が残っていると告げ、一日の暇を願い出ます。
約束を果たしたのち、逃げも隠れもせず、自分から牢へ戻りました。これを見た斑足王は心を改め、教えに帰依したと説かれます。
名に「王」の字がつきますが、忿怒の相をした明王ではなく、経に説かれる人の王です。日本では像として作られることがほとんどありません。
普明王の読み方と梵名
読みは「ふみょうおう」です。「ふめいおう」とは読みません。
「普」はあまねく、「明」は明らかにすることを指します。あわせて、広く照らす王という意味に解かれます。
字面が「明王」に近いため、忿怒の明王のひとつと思われがちですが、別の系統の尊格です。 経に説かれる人の王として語られてきました。
普明王(ふみょうおう)
もっとも広く使われる形。
普明大王(ふみょうだいおう)
大を添えた形。
須陀素弥王(すだそみおう)
梵名の音を写した形。
スタソーマ(Sutasoma)
意味は「よき月の飲み物を持つ者」。「ソーマ」は儀式で用いる飲み物を指す。読みは「すたそーま」。
普明王の見分け方(印相・持ち物・姿)
忿怒の明王ではありません。 王の身なりで表されるのが本来の姿です。
姿 ─ 王の身なり
物語 ─ 千人の王と斑足王
仙術をかけられて人の肉を食うようになった斑足王が、千人の王を捕らえたところから話が始まります。斑足王は鹿足王とも呼ばれます。
普明王はそのなかの一人でした。婆羅門との約束を果たすために一日の暇を願い、果たしてから自分で戻ってきます。
この行いが斑足王の心を動かし、千人の王が救われたと説かれます。
約束を守るという一点で人を変えるという筋立てです。
経典 ─ 仁王般若経
『仁王般若経』は、国を治める者が守るべき教えを説く経典です。
普明王の話は、その教えを説くための譬えとして置かれています。王が仏の教えによって国を守るという主題に、そのまま重なります。
日本では、国の安泰を願う法会でこの経が読まれてきました。
なぜ像が作られないのか
この王は、拝む対象としてではなく、教えを説くための例として置かれています。
願いを聞き届ける尊格ではありません。 そのため堂に安置する動機が生まれませんでした。
名は経典と、経を絵解きした図のなかに残っています。
普明王のご利益
約束を守る
自ら牢へ戻った話による。
人を改めさせる
斑足王が心を改めたと説かれることによる。
国を安んじる
『仁王般若経』が国を治める教えを説くことによる。
普明王に会える寺
普明王の名を持つ国指定の彫刻は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。拝む対象ではなく、教えを説くための例として経典に置かれた王だからです。
名は『仁王般若経』と、経を絵解きした図のなかに残っています。 国の安泰を願う法会でこの経が読まれるときに、話として語られる尊格です。
普明王をめぐる仏のつながり
普明王の位階と、似た仏との違い
普明王は、四つの位階のどれにも当てはめにくい尊格です。経に説かれる人の王とされます。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。普明王はそのどれにも収まりません。
名に「王」の字がつくために明王と紛れますが、忿怒の相をとる明王とは系統が違います。 釈迦の前世のひとつとして語られる王です。
不動明王 ─ 名だけが似ている
不動明王は如来の命を受け、忿怒の相で人を導く明王です。
普明王は忿怒の相をとりません。 王の身なりで表され、剣も火焔も持ちません。名の字面が似ているだけです。
釈迦如来 ─ 前世にあたる
普明王は釈迦の前世のひとつとされます。
修行を重ねた過去の生のひとつとして語られます。燃燈仏から授記を受けた話と同じ系統の物語です。
帝釈天 ─ どちらも王の姿
帝釈天は天部の王で、冠と衣をまとった姿で表されます。
姿は似ますが位階が違います。 帝釈天は天部、普明王は経に説かれる人の王です。
普明王についてよくある質問
普明王とはどんな尊格ですか。
『仁王般若経』などに説かれる王で、釈迦の前世のひとつとされます。人の肉を食うようになった斑足王を教えに導いたと説かれます。
明王のひとつですか。
違います。名に「王」の字がつきますが、忿怒の相をとる明王とは系統が違います。経に説かれる人の王です。
どんな話が伝わりますか。
捕らえられた普明王が、婆羅門との約束を果たすため一日の暇を願い、果たしてから自分で牢に戻ったという話です。
斑足王とは誰ですか。
仙術をかけられて人の肉を食うようになったとされる王です。鹿足王とも呼ばれます。
普明王の像はどこで見られますか。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
普明王と併せて覚えたい言葉・用語
仁王般若経(にんのうはんにゃきょう)
国を治める者が守るべき教えを説く経典。
斑足王(はんぞくおう)
人の肉を食うようになったとされる王。鹿足王ともいう。
婆羅門(ばらもん)
インドの祭祀をつかさどる身分。
前世(ぜんせ)
いまより前の生。釈迦の前世を語る物語が数多くある。