大分の岩壁に彫られた大日如来の坐像。牛の守り仏としても拝まれた。
大迫磨崖仏とはどんな仏か
大迫磨崖仏をひとことで言えば土を塗り重ねた磨崖仏です。大分県に伝わります。
作り方が変わっています。岩を削っただけではなく、麻などの繊維を混ぜた土を上から塗り重ねて仕上げてあります。 石を芯にした塑像というべき形で、磨崖仏のなかでも例が少ないものです。
いま残る土の部分は、江戸時代に直されたものとされます。もとの姿がどこまで残っているかは分かっていません。
彫られた時期は定まっていません。 鎌倉時代の後期とする説、室町時代とする説、室町の末から江戸の初めとする説があります。
大迫磨崖仏の読み方と梵名
読みは「おおさこまがいぶつ」です。「大迫」は土地の名で、「おおさこ」と読みます。
「磨崖」は崖を磨くと書き、岩の面を削って仏を表すことを指します。
同じ字を「おおはさま」と読む地名が別の県にありますが、この磨崖仏とは関係がありません。
大迫磨崖仏(おおさこまがいぶつ)
もっとも広く使われる形。
大迫磨崖大日如来坐像(おおさこまがいだいにちにょらいざぞう)
文化財としての呼び方に近い形。
大迫の大日様(おおさこのだいにちさま)
地元での呼び方。
大迫磨崖仏の見分け方(印相・持ち物・姿)
削り出しではなく、土を塗り重ねて仕上げてあるという作り方が、この磨崖仏のいちばんの特徴です。
作り方 ─ 石を芯にした塑像
火山灰が固まってできた柔らかい岩に彫られています。削りやすい代わりに、崩れやすい岩です。
そのうえに、麻などの繊維を混ぜた土を塗り重ねて仕上げてあります。石を芯にした塑像というべき形です。
削るだけで仕上げるのがふつうの磨崖仏ですので、たいへんめずらしい作り方です。
尊像 ─ 大日如来の坐像
彫られているのは大日如来の坐像とされます。大日如来は如来でありながら宝冠をかぶり装身具を着ける、例外的な姿の仏です。
いま見える土の部分は江戸時代に直されたものとされ、もとの姿がどこまで残っているかは分かっていません。
修理のたびに姿が変わりうるのが、この作り方の弱いところです。
年代 ─ 説が分かれたまま
彫られた時期は定まっていません。鎌倉時代の後期とする説、室町時代とする説、室町の末から江戸の初めとする説があります。
塗り直しが重ねられているため、表面の様式から年代を決めることができないのです。
伝えでは日羅という人物の作とされますが、これも確かめられていません。
信仰 ─ 牛の守り仏
地元では牛の守り仏として拝まれてきました。堂のそばの笹を牛に食べさせると病気にかからないという言い伝えがあります。
田を耕す牛を守るという、農の暮らしに結びついた願いです。
大日如来そのものの経典には出てこない役どころで、土地のなかで育った信仰といえます。
なぜ資料が乏しいのか
磨崖仏は、造った人や願いを記した銘が残りにくい性質を持ちます。台座や光背に刻む余地が無いためです。
この像はさらに、塗り直しによって表面が新しくなっています。
国の指定ではなく、県の有形文化財に指定されています。 文化庁の国指定文化財等データベースを「大迫」で引いても、該当する彫刻は確かめられませんでした。
大迫磨崖仏のご利益
牛馬の無事
牛の守り仏として拝まれてきたことによる。
田畑の実り
農の暮らしに結びついた信仰であることによる。
土地を鎮める
岩壁に彫られていることによる。
大迫磨崖仏に会える寺
大迫磨崖仏の名を持つ国指定の彫刻は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースを「大迫」で引いても、該当する彫刻は確かめられませんでした。県の有形文化財に指定されています。
岩に彫る磨崖仏という形式そのものには、国宝の臼杵磨崖仏や重要文化財の熊野磨崖仏・菅尾磨崖仏(いずれも大分県)など、国の指定を受けた例があります。ただしこれらはすべて別の磨崖仏です。 詳しい住所と拝観の可否は、公式の情報を確かめられませんでした。
大迫磨崖仏をめぐる仏のつながり
大迫磨崖仏の位階と、似た仏との違い
大迫磨崖仏に彫られているのは大日如来で、如来の位に置かれます。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。大日如来は最上位の如来にあたります。
ただし牛の守り仏としての信仰は、位階とは別の筋から育ったものです。 暮らしの願いが、経典の枠を越えて仏に結びついた例といえます。
大日如来 ─ 彫られている仏そのもの
彫られているのは大日如来の坐像とされます。
大日如来は如来でありながら宝冠と装身具を着けます。 ただし塗り直しによって細部が変わっており、姿から確かめるのは容易ではありません。
佐貫石仏 ─ どちらも岩に彫られた大日如来
どちらも磨崖仏で、大日如来を表すとされます。佐貫石仏は栃木県に伝わります。
佐貫石仏は削り出しただけ、大迫磨崖仏は土を塗り重ねて仕上げてあります。 作り方が違います。
大岩磨崖仏 ─ どちらも国の指定を受けていない
どちらも磨崖仏で、国の指定は受けていません。大岩磨崖仏は福岡県に伝わります。
大迫は県、大岩は町の指定です。地域で守られてきた点が共通します。
大迫磨崖仏についてよくある質問
大迫磨崖仏とは何ですか。
大分県の岩壁に彫られた磨崖仏です。彫られているのは大日如来の坐像とされます。
ほかの磨崖仏と何が違いますか。
岩を削っただけではなく、麻などの繊維を混ぜた土を上から塗り重ねて仕上げてあります。石を芯にした塑像というべき形です。
いつ彫られたものですか。
定まっていません。鎌倉時代の後期とする説、室町時代とする説、室町の末から江戸の初めとする説があります。
なぜ牛の守り仏なのですか。
堂のそばの笹を牛に食べさせると病気にかからないという言い伝えがあり、田を耕す牛を守る仏として拝まれてきました。
国の指定を受けていますか。
受けていません。県の有形文化財に指定されています。文化庁の国指定文化財等データベースでも該当する彫刻は確かめられませんでした。
大迫磨崖仏と併せて覚えたい言葉・用語
磨崖仏(まがいぶつ)
崖や巨岩の面を削って表した仏像。
塑像(そぞう)
土を盛り上げて作る像。
火砕流堆積物(かさいりゅうたいせきぶつ)
火山灰などが積もって固まった岩。削りやすい。
有形文化財(ゆうけいぶんかざい)
形のある文化財。国のほか都道府県や市町村も指定する。