十二天の一員として下方を守る尊格。大地そのものをつかさどる。
地天とはどんな仏か
地天をひとことで言えば大地そのものの尊格です。十二天では下方を受け持ちます。堅牢地神ともいいます。
梵名プリティヴィーは、インドで大地そのものとされた古い尊格です。すべてを載せて動かないという性格から、「堅牢」の字が当てられました。
姿は静かです。両手に花を盛った盤を捧げ、供え物を差し出す形で表されます。武器を持たず、女性の姿に彫られることが多いものです。男女二体を一組にする作例もあります。
この尊格には、仏教の物語のなかで大きな見せ場があります。釈迦が悟りを開こうとしたとき、さまたげる者に向かって大地へ手を触れると、その行いの証人として大地から涌き出たと説かれます。
地天の読み方と梵名
読みは「じてん」です。「堅牢地神」は「けんろうじじん」と読みます。
「堅牢」は固くて崩れないという意味で、大地の性格をそのまま字にしたものです。十二天の列では「地天」、堂や文化財の名では「堅牢地神」と、場面によって呼び分けられます。
「地天女」と呼ぶ場合もあります。女性の姿で表されることが多いためです。
地天(じてん)
十二天の一員としての呼び方。
堅牢地神(けんろうじじん)
文化財や堂の名に使われる形。
地天女(じてんにょ)
女性の姿であることを示す形。
比理底毘(びりていび)
梵名の音を漢字に写した形。
プリティヴィー(Prthivi)
意味は「広がるもの、大地」。インドで大地そのものとされた古い尊格。読みは「ぷりてぃう゛ぃー」。
地天の見分け方(印相・持ち物・姿)
花を盛った盤を両手で捧げる姿が決め手です。武器も乗り物も持ちません。
持ち物 ─ 花を盛った盤
両手で盤を捧げ、そこに花を盛ります。 大地が生み出すものを差し出す形です。
十二天のなかで、供え物を捧げる姿をとるのは地天だけです。守る側ではなく、与える側として表されています。
盤のかわりに稲穂や宝を盛る作例もあります。
姿 ─ 女性、あるいは男女一対
女性の姿に彫られることが多く、唐風の衣をまとい、天冠をいただきます。
男女二体を一組にして表す作例もあります。堅牢地神を二体で祀る堂がそれにあたります。
甲冑は着けず、武器も持ちません。十二天のなかでもっとも穏やかな姿です。
位置 ─ 下方
地鎮とのつながり
堂や家を建てる前に土地を鎮める作法では、この尊格に供え物をします。
土を掘り、柱を立てるという行いが、大地を傷つけることになるという考えが根にあります。
いまも各地で行われている地鎮の作法は、この尊格に断りを入れる儀式です。
地天のご利益
土地の鎮め
大地をつかさどるとされることによる。
五穀豊穣
大地が作物を生むことによる。
家の安泰
地鎮の作法で供えられることによる。
下方の守り
十二天のうち下方を受け持つことによる。
地天に会える寺
地天をめぐる仏のつながり
地天の位階と、似た仏との違い
地天は天部の位に置かれます。十二天の一員として下方を受け持ちます。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。地天は天部です。
天部のなかでは、火天・水天・風天とともに自然そのものを受け持つ組にあたります。そのなかで地天だけが、仏の悟りを証明したという場面を持っています。
地蔵菩薩 ─ 「地」の字が重なる
どちらも「地」の字を持ちますが、位階が違います。地蔵菩薩は菩薩、地天は天部です。
見分けは姿です。地蔵菩薩は僧の姿で錫杖と宝珠を持ちます。地天は唐風の衣をまとい、花を盛った盤を捧げます。
地蔵菩薩の「地」は大地の徳を蔵するという意味で、大地そのものを指す地天とは意味の向きが違います。
梵天 ─ 上と下で対になる
十二天では、梵天が上方、地天が下方を受け持ちます。二体で世界の上下を挟みます。
見分けは姿です。梵天は四つの顔を持つことが多く、鵞鳥に乗ります。地天は一つの顔で、乗り物を持ちません。
上下の二体は、四方四隅の八体とは別の組として扱われます。
吉祥天 ─ 女性の姿の天部どうし
地天についてよくある質問
地天と堅牢地神は同じものですか。
同じものです。十二天の列では「地天」、堂や文化財の名では「堅牢地神」と呼び分けられます。
地天はどう見分けますか。
両手に花を盛った盤を捧げます。武器も乗り物も持たず、女性の姿に彫られることが多い尊格です。
地天の像はどこで見られますか。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、地天・堅牢地神の名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
釈迦が大地に触れる姿と関係がありますか。
あります。さまたげる者に向かって釈迦が大地へ手を触れたとき、その行いの証人として大地から涌き出たのが、この尊格とされます。
地鎮の作法と関わりますか。
堂や家を建てる前に土地を鎮める作法では、この尊格に供え物をします。土を掘る行いへの断りという意味があります。
地天と併せて覚えたい言葉・用語
触地印(そくちいん)
右手を下ろして大地に触れる手の形。悟りの証人を呼ぶ形。
地鎮(じちん)
建物を建てる前に土地を鎮める作法。
天冠(てんかん)
天部や菩薩が頭にいただく冠。