江戸で奉公した女性が、大日如来の現れとして拝まれるようになったもの。
於竹大日如来とはどんな仏か
於竹大日如来をひとことで言えば人が仏として拝まれた例です。出羽の庄内から江戸へ奉公に出た「お竹」という女性と伝えられます。
語り継がれたのは、その暮らしぶりです。米一粒、野菜の切れ端も粗末にせず、余ったものを貧しい人に分け与えたと伝えられます。出羽から来た行者がその姿を見たとき、体から光が差していたという話も伝わります。
没後、奉公先が等身大の木像を納め、毎月十九日を命日として開帳したとされます。江戸の後期には芝居や絵入りの読み物になり、名が広く知られました。
働く場のただなかに仏を見るという、めずらしい形の信仰です。 生きた年には異なる伝えがあり、はっきりしていません。
於竹大日如来の読み方と梵名
読みは「おたけだいにちにょらい」です。「於」は「お」と読み、人の名に添える古い書き方です。
「お竹」は奉公していた女性の名と伝えられます。仏の名に人の名がそのまま入るのは、たいへんめずらしいことです。
大日如来の部分は、密教の中心に置かれる仏の名です。その仏がこの世に現れた姿だ、という受け取り方が名に表れています。
於竹大日如来(おたけだいにちにょらい)
もっとも広く使われる形。
お竹大日如来(おたけだいにちにょらい)
仮名で書いた形。
お竹如来(おたけにょらい)
短く呼ぶ形。
於竹大日如来の見分け方(印相・持ち物・姿)
特定の姿かたちの決まりはありません。 大日如来の像として作られたと伝えられます。
姿 ─ 大日如来として表す
大日如来の像として作られたと伝えられます。大日如来は如来でありながら宝冠をかぶり、装身具を着けるという例外的な姿をとります。
手は、右手で左手の人差し指を握る智拳印を結ぶのが金剛界、膝の上で両手を重ねるのが胎蔵界です。
於竹大日如来の像がどちらの形をとるかは、確かめられませんでした。
伝え ─ 台所の光
語り伝えの中心は、水を使う仕事の場にあります。米を研ぎ、野菜を洗うその手つきに、仏の働きを見たという話です。
捨てられるはずのものを拾い集めて人に分けたと伝えられます。
行者がその姿を見て光を認めたという場面が、仏の現れとされる根拠になっています。
広まり ─ 芝居と読み物
没後、木像が納められ、毎月十九日に開帳されたと伝えられます。
江戸の後期には芝居の題材となり、絵入りの読み物にもなりました。信仰そのものより、物語として広まった面が強くあります。
物語は時代ごとに書き変えられており、どこまでがもとの姿かは分かっていません。
なぜ記録が少ないのか
市井の女性を主人公とする信仰であるため、寺の正式な記録に残りにくい性質を持っていました。
生きた年についても異なる伝えがあり、確かめられていません。仕えた家との関係も、推し量る域を出ません。
伝えの中身を確かな事実として読むことはできません。
於竹大日如来のご利益
暮らしの徳
日々の仕事を丁寧に行ったと伝えられることによる。
施しが報いる
余ったものを貧しい人に分けたと伝えられることによる。
福徳
大日如来の現れとされることによる。
於竹大日如来に会える寺
於竹大日如来の名を持つ国指定の彫刻は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。木像が納められたという伝えはありますが、いまどこにあるかは公式の情報を確かめられませんでした。
伝えとして残っていることと、確かめられた事実は分けて読んでください。 出向く前に、その堂の公式の案内を確かめることをおすすめします。
於竹大日如来をめぐる仏のつながり
於竹大日如来の位階と、似た仏との違い
於竹大日如来は如来の位に置かれます。大日如来がこの世に現れた姿とされたためです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。名のうえでは最上位の如来にあたります。
ただし、もとは実在したと伝えられる人です。人が後から仏の名を与えられた例であり、経典に由来する仏とは成り立ちが違います。
大日如来 ─ もとになった仏
大日如来は密教の中心に置かれる仏です。於竹大日如来は、その仏がこの世に現れた姿とされました。
像の形は大日如来の決まりに従います。 宝冠をかぶり装身具を着けるという、如来のなかでは例外的な姿です。
蛸薬師 ─ どちらも暮らしから生まれた名
どちらも経典に由来しない名を持ちます。蛸薬師は堂につけられた通り名です。
於竹大日如来は人の名がそのまま仏の名になったという点で、さらに踏み込んだ例といえます。
役行者 ─ 人が尊格になった例
役行者も、実在したと伝えられる人が後から菩薩の名を贈られた例です。
どちらも人が出発点です。ただし役行者は行者としての名声、於竹大日如来は日々の暮らしぶりが理由になっています。
於竹大日如来についてよくある質問
於竹大日如来とは何ですか。
江戸で奉公したと伝えられる「お竹」という女性を、大日如来がこの世に現れた姿として拝んだものです。
いつの人ですか。
江戸時代の人と伝えられますが、生きた年には異なる伝えがあり、はっきりしていません。
なぜ仏として拝まれたのですか。
米一粒も粗末にせず、余ったものを貧しい人に分けたと伝えられます。行者がその姿に光を見たという話が根拠とされます。
像はどのような姿ですか。
大日如来の像として作られたと伝えられます。ただしどの形の印を結ぶかは確かめられませんでした。
於竹大日如来の像はどこで見られますか。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
於竹大日如来と併せて覚えたい言葉・用語
開帳(かいちょう)
厨子を開いて像を人に見せること。
智拳印(ちけんいん)
右手で左手の人差し指を握る印。金剛界の大日如来が結ぶ。
奉公(ほうこう)
他家に住み込んで働くこと。