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羅漢と高僧

龍樹(りゅうじゅ)|八宗の祖とはどんな仏か|見分け方・ご利益

龍樹菩薩  / リュウジュ

救済 密教

大乗の教えを理屈で組み立てた僧。八宗の祖と呼ばれる。

龍樹とはどんな仏か

龍樹をひとことで言えば大乗の教えを組み立てた人です。二世紀から三世紀ごろの南インドにいたとされます。

主著の『中論』では、あらゆるものに固定した中身は無いという見方を、徹底した理屈で示しました。この考え方を空といいます。

日本の宗派の多くが、教えの系譜をこの人までさかのぼらせます。そのため八宗の祖と呼ばれます。真言宗では付法の八祖の一人に数え、浄土の教えでは七高僧の最初に置きます。

どの宗派に行っても名が出てくる、めずらしい人物です。

像や絵は、僧の姿で表されます。単独で祀られることは少なく、八祖像や七高僧像の一員として掛軸や壁に並ぶ形が多く見られます。

龍樹の読み方と梵名

読みは「りゅうじゅ」です。「たつき」ではありません。

名は梵名ナーガールジュナを意味で訳したものです。「ナーガ」は龍、「アルジュナ」は樹の名で、あわせて「龍樹」となります。龍に導かれて経典を得たという伝えと、樹の下で生まれたという伝えの両方が名に重ねられています。

真言宗では龍猛という別の訳語を使います。同じ人物を指しますが、系譜の説き方が違うため、別人とする見方もあります。

龍樹(りゅうじゅ)

もっとも広く使われる形。

竜樹(りゅうじゅ)

新しい字体で書いた形。

龍樹菩薩(りゅうじゅぼさつ)

敬って菩薩と呼ぶ形。位階が菩薩になるわけではない。

龍猛(りゅうみょう)

真言宗の付法の八祖で使われる呼び方。

ナーガールジュナ(Nagarjuna)

意味は「龍と樹」。「ナーガ」が龍、「アルジュナ」が樹の名。読みは「なーがーるじゅな」。

龍樹の見分け方(印相・持ち物・姿)

僧の姿で、持ち物はほとんど無い。 単独で見分けるより、並びの位置で判じるほうが確実です。

姿 ─ 僧の身なり

頭を丸め、袈裟をまとった僧の姿で表されます。冠も瓔珞も着けません。

顔は年を重ねた僧として描かれることが多く、髭をたくわえる例もあります。

インドの人であることを示すため、肌を濃く塗ったり、鼻を高く描いたりする作例もあります。

持ち物 ─ 経巻か合掌

手には経巻を持つか、胸の前で合掌します。武器も法具も持ちません。

『中論』を著したことにちなみ、書物を膝に置く形もあります。

持ち物がほとんど無いため、これだけで龍樹と判じるのは困難です。

頭のうしろの蛇

インドやチベットの図では、頭のうしろに蛇の頭が並ぶ姿で表されます。龍宮から経典を得たという伝えによります。

日本ではこの形はほとんど用いられません。日本の八祖像は、みな同じような僧の姿で描かれます。

蛇の頭が見えたら、それは日本以外で作られた図だと考えてよいでしょう。

並び ─ 八祖の一番目

真言宗の付法の八祖では、大日如来・金剛薩埵に続く三番目、人としては最初に置かれます。

浄土の教えの七高僧では、いちばん初めに置かれます。

堂の壁や掛軸で高僧が並んでいるとき、もっとも古い側の端にいるのが龍樹だと覚えておくと見当がつきます。

龍樹のご利益

学びの成就

教えを筋道立てて説いたことによる。

迷いを断つ

空の教えを示したことによる。

教えを受け継ぐ

八宗の祖とされることによる。

龍樹に会える寺

龍樹だけを本尊とする寺は、日本には確かめられませんでした。 文化庁の国指定文化財等データベースでも、龍樹の名を持つ国指定の彫刻は見つかりません。

会えるのは、真言宗の寺の八祖像と、浄土真宗の寺の七高僧像です。どちらも掛軸や壁画として、堂の側面に掛けられていることが多くあります。

単独の像を探すより、八祖・七高僧の並びの端を見るほうが確実です。

龍樹をめぐる仏のつながり

龍樹の位階と、似た仏との違い

龍樹は羅漢と高僧の組に置かれます。実在したとされる僧で、仏や菩薩ではありません。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。龍樹はそのどれにも属しません。

「龍樹菩薩」と呼ばれることがありますが、これは敬って付けた呼び方であって、位階が菩薩になるわけではありません。 役行者が神変大菩薩と呼ばれるのと同じ形です。

金剛薩埵 ─ 真言の八祖で隣り合う

真言宗の付法の八祖では、大日如来・金剛薩埵・龍樹の順に並びます。

見分けは装身具です。金剛薩埵は宝冠をかぶり瓔珞を着けた菩薩、龍樹は頭を丸めた僧です。金剛薩埵は五鈷杵と五鈷鈴を持ちますが、龍樹は経巻しか持ちません。

維摩居士 ─ どちらも教えを説いた在俗と出家

どちらも仏でも菩薩でもない人物として祀られます。

見分けは身なりです。維摩居士は頭巾をかぶった俗人の姿で脇息にもたれます。龍樹は頭を丸めた僧の姿で座ります。

達磨 ─ どちらも系譜の祖

どちらもインドから出て、後の宗派の祖と仰がれました。

見分けは容易です。達磨は衣を頭からかぶり髭が濃く、龍樹は頭を丸めた僧の姿です。達磨は禅宗だけの祖、龍樹は宗派をまたいで祖とされる点も違います。

龍樹についてよくある質問

龍樹とはどんな人ですか。

二世紀から三世紀ごろの南インドで、大乗の教えを筋道立てて説いた僧です。『中論』を著し、あらゆるものに固定した中身は無いという見方を示しました。

龍樹の読み方は。

「りゅうじゅ」です。梵名ナーガールジュナを意味で訳した名で、「ナーガ」が龍、「アルジュナ」が樹を指します。

なぜ八宗の祖と呼ばれるのですか。

日本の宗派の多くが、教えの系譜をこの人までさかのぼらせるためです。真言宗では付法の八祖の一人、浄土の教えでは七高僧の最初に置かれます。

龍樹の像はどこで見られますか。

単独の像はほとんどありません。真言宗の寺の八祖像、浄土真宗の寺の七高僧像として、掛軸や壁画のなかで会うことになります。

龍猛と龍樹は同じ人ですか。

真言宗の付法の八祖では龍猛と呼びます。同一人物とするのが一般的ですが、別人とする見方もあり、はっきり決着していません。

龍樹と併せて覚えたい言葉・用語

中論(ちゅうろん)

龍樹の主著。空の教えを理屈で示した書。

空(くう)

あらゆるものに固定した中身は無いという見方。

付法の八祖(ふほうのはっそ)

真言宗で教えを受け継いだとされる八人。

七高僧(しちこうそう)

浄土真宗が仰ぐ七人の僧。龍樹が最初に置かれる。