阿弥陀如来が修行者だったころの師にあたる仏。
世自在王仏とはどんな仏か
世自在王仏をひとことで言えば阿弥陀如来の師です。『無量寿経』に説かれます。
経の筋はこうです。ある国の王が位を捨てて出家し、法蔵と名のってこの仏の弟子になりました。法蔵はどのような国を作るべきかを尋ね、世自在王仏はおびただしい数の仏の国のありさまを、そのまま見せてやったと説かれます。
法蔵はそれを五劫のあいだ思いめぐらし、四十八の願を立てました。その願が成就して阿弥陀如来となり、極楽という国が生まれたとされます。
つまりこの仏は、阿弥陀如来の願いが生まれる場に立ち会った仏です。 浄土の教えの成り立ちをたどると、必ずこの名に行き当たります。
世自在王仏の読み方と梵名
読みは「せじざいおうぶつ」です。「よじざい」とは読みません。
名は「世に自在なる王」を意味で訳したものです。世のありさまを思いのままに見せることができる、という働きが名に表れています。
経典の訳によって「世饒王仏」など違う字が当てられており、同じ仏と気づきにくくなっています。
世自在王仏(せじざいおうぶつ)
もっとも広く使われる形。
世自在王如来(せじざいおうにょらい)
如来を添えた形。
世饒王仏(せにょうおうぶつ)
別の漢訳に見える形。
楼夷亘羅(るいごんら)
音を写した古い表記。
ローケーシュヴァラ・ラージャ(Lokesvararaja)
意味は「世に自在なる王」。「ローカ」が世、「イーシュヴァラ」が自在、「ラージャ」が王を指す。読みは「ろーけーしゅう゛ぁら・らーじゃ」。
世自在王仏の見分け方(印相・持ち物・姿)
像として作られることがほとんどありません。 『無量寿経』を読み解くときに名の出る仏です。
姿 ─ 如来の決まりどおり
表される場合は如来の決まりに従います。螺髪をいただき、衣一枚をまとい、持ち物は持ちません。
この仏だけの目印になる手の形はありません。
絵に描かれるときは、法蔵が向かい合って願を述べる場面として構図が作られます。
役どころ ─ 国土を見せる
この仏の働きは、法蔵に二百十億という数の仏の国を見せたことに尽きます。
法蔵はそれを見比べたうえで、自分の作る国のありさまを決めました。四十八の願は、見比べたうえで選び取られたものだという筋立てになっています。
願が思いつきではないことを示すための場面です。
五劫思惟 ─ 考えつづける
法蔵が願を練るのに費やしたのは、五劫という長さです。劫は数えきれないほど長い時間の単位です。
この場面から五劫思惟の阿弥陀という像が生まれました。考えつづけて髪が伸び放題になった姿に表されます。
世自在王仏そのものの像はほとんどありませんが、この派生の像は各地に伝わります。
なぜ像が少ないのか
浄土の教えでは、拝む対象は阿弥陀如来に絞られます。師にあたる仏は、由来を語るための存在にとどまりました。
願いを聞き届ける仏ではなく、願いが生まれた由来を語る仏だからです。
そのため彫像はほとんど残らず、名は経典と絵解きのなかに残っています。
世自在王仏のご利益
志が定まる
法蔵が願を立てる場に立ち会ったことによる。
選ぶ目を得る
数多くの仏の国を見せたと説かれることによる。
導きを受ける
師として教えを授けた役どころによる。
世自在王仏に会える寺
世自在王仏だけを安置する堂は、日本では確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
名は『無量寿経』と、経を絵解きした図のなかに残っています。 浄土の教えを説く寺で、阿弥陀如来の由来をたどるときに聞くことになる仏です。
世自在王仏をめぐる仏のつながり
世自在王仏の位階と、似た仏との違い
世自在王仏は如来の位に置かれます。阿弥陀如来より前の世に現れた仏とされます。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。世自在王仏は最上位の如来にあたります。
師が弟子より上位に置かれるという考え方は、仏の世界には無いことに注意が要ります。 阿弥陀如来もまた如来であり、位階のうえでは並びます。
阿弥陀如来 ─ 弟子にあたる
法蔵という修行者だったころの阿弥陀如来が、この仏の弟子でした。
師と弟子の関係にありますが、位階は同じ如来です。願を立てた側と、それを受けた側という役の違いです。
燃燈仏 ─ どちらも先に立つ仏
どちらも、後の仏が仏になるきっかけを与えた仏です。燃燈仏は釈迦に授記を与え、世自在王仏は法蔵に国土を見せました。
与える中身が違います。 一方は未来の予告、もう一方は選ぶための材料です。
観音菩薩 ─ 名の一部が重なる
観音菩薩の梵名にも「世に自在なる者」を意味する語が含まれ、観自在菩薩と訳されます。
名の一部が重なりますが、別の尊格です。 世自在王仏は如来、観自在菩薩は菩薩の位にあります。
世自在王仏についてよくある質問
世自在王仏とはどんな仏ですか。
『無量寿経』に説かれる仏で、阿弥陀如来が法蔵という修行者だったころの師にあたります。
読み方は。
「せじざいおうぶつ」です。訳によって世饒王仏などとも書かれます。
この仏は何をしたのですか。
法蔵の求めに応じて、数多くの仏の国のありさまを見せたと説かれます。それをもとに四十八の願が立てられました。
五劫思惟の阿弥陀とは何ですか。
法蔵が五劫のあいだ願を練りつづけた姿を表した像です。考えつづけて髪が伸びた姿に作られます。
世自在王仏の像はどこで見られますか。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
世自在王仏と併せて覚えたい言葉・用語
法蔵(ほうぞう)
阿弥陀如来が修行者だったころの名。
四十八願(しじゅうはちがん)
法蔵が立てたとされる四十八の願い。
五劫思惟(ごこうしゆい)
五劫のあいだ願を練りつづけたこと。またその姿の像。
無量寿経(むりょうじゅきょう)
阿弥陀如来の由来と願を説く経典。