釈迦より前にこの世に現れたとされる六人の仏に、釈迦を加えた七体。
過去七仏とはどんな仏か
過去七仏をひとことで言えば釈迦を含む七人の仏です。毘婆尸仏・尸棄仏・毘舎浮仏・拘留孫仏・拘那含牟尼仏・迦葉仏、そして釈迦牟尼仏を数えます。
もとになっているのは、仏は釈迦ひとりではないという考え方です。世が移るたびに仏が現れ、教えを説いては去ってゆく。釈迦はその列の最後に位置する仏として置かれています。
前の三体は過去荘厳劫、後の四体は現在賢劫という長い時のくぎりに現れたとされます。劫とは、数えきれないほど長い時間の単位です。
日本では像として彫り分けられることが少なく、経典と、寺で唱えられる短い偈のなかに名が残っています。
過去七仏の読み方と梵名
読みは「かこしちぶつ」です。
七体の名は、いずれも梵語の音を漢字で写したものです。毘婆尸は「びばし」、尸棄は「しき」、毘舎浮は「びしゃふ」、拘留孫は「くるそん」、拘那含牟尼は「くなごんむに」、迦葉は「かしょう」と読みます。
迦葉仏は、釈迦の弟子である摩訶迦葉とは別の仏です。 同じ字を使うため、たびたび取り違えられてきました。
過去七仏(かこしちぶつ)
もっとも広く使われる形。
七仏(しちぶつ)
短く呼ぶ形。七仏薬師と紛れやすい。
原始七仏(げんしななぶつ)
古い順に並べたことを示す言い方。
過去七仏の見分け方(印相・持ち物・姿)
七体が横一列に並んでいれば、まずこれを疑います。 ただし一体ずつの見分けはつきません。
姿 ─ 七体とも同じ形
七体はいずれも如来の姿で表されます。螺髪をいただき、衣一枚をまとい、持ち物は持ちません。
顔つきも手の形も、七体でほとんど区別されません。 名を記した札や光背が無ければ、どれが誰かは判じられません。
一体ずつに固有の目印を与えないことが、かえってこの組の性格を表しています。
数え方 ─ 三と四に分かれる
七体は二つの時期に分かれます。毘婆尸・尸棄・毘舎浮の三体が過去荘厳劫、拘留孫から釈迦までの四体が現在賢劫です。
三と四という切れ目は、七体を並べるときの順番の根拠になっています。
賢劫にはこの後さらに仏が現れると説かれ、弥勒菩薩がその次にあたるとされます。
偈 ─ 七仏通誡偈
七体がそろって説いたとされる四句の言葉が伝わります。悪を作らず、善を行い、自らの心を清めること、それが諸仏の教えである、という内容です。
七仏通誡偈と呼ばれ、禅の寺でよく唱えられます。
七体が同じことを説いたという形をとることで、教えが時代を超えて変わらないことを示しています。
過去七仏のご利益
教えが絶えない
仏が繰り返し世に現れると説かれることによる。
心を清める
七仏通誡偈の内容による。
悪を離れる
同じく偈の第一句による。
過去七仏に会える寺
過去七仏だけを安置する堂は、日本では確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、過去七仏の名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
七体並ぶ像として知られているのは、薬師如来を七体そろえた七仏薬師のほうです。千葉県の松虫寺に重要文化財の像が伝わりますが、これは過去七仏とは別のまとまりですので、混同しないでください。
過去七仏をめぐる仏のつながり
過去七仏の位階と、似た仏との違い
過去七仏は七体とも如来の位に置かれます。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。過去七仏は七体すべてが最上位の如来です。
七体をひとまとめに数えるという形は、五智如来や七仏薬師と同じ考え方です。一体では表しきれないことを、数で表そうとした組み立てといえます。
釈迦如来 ─ 七体の最後
釈迦如来は過去七仏の七番目にあたります。単独で祀られるときとは、置かれる文脈が変わります。
単独の釈迦如来は教えを説く仏、七仏のなかの釈迦は列の最後に立つ仏として扱われます。
弥勒菩薩 ─ 次に現れるとされる仏
過去七仏が過ぎ去った仏なら、弥勒菩薩はこれから現れる仏です。
いまはまだ菩薩の位にあり、はるか先に仏となって世に出ると説かれます。過去と未来で対になる関係にあります。
燃燈仏 ─ どちらも過去の仏
どちらも釈迦より前の仏ですが、数え方の枠が違います。
燃燈仏は七仏には含まれません。七仏よりもさらに昔、前世の釈迦に授記を与えた仏として語られます。
過去七仏についてよくある質問
過去七仏とは何ですか。
毘婆尸仏・尸棄仏・毘舎浮仏・拘留孫仏・拘那含牟尼仏・迦葉仏・釈迦牟尼仏の七体をまとめた呼び方です。
七仏薬師と同じものですか。
違います。七仏薬師は薬師如来を七体並べたもので、過去七仏とは別のまとまりです。
七仏通誡偈とは何ですか。
七体の仏がそろって説いたとされる四句の言葉です。悪を作らず善を行い、心を清めよ、それが諸仏の教えである、という内容です。
一体ずつ見分けられますか。
像の形ではほとんど見分けられません。名を記した札や光背によるほかありません。
過去七仏の像はどこで見られますか。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、過去七仏の名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
過去七仏と併せて覚えたい言葉・用語
劫(こう)
数えきれないほど長い時間の単位。
賢劫(げんごう)
いま続いているとされる時のくぎり。多くの仏が現れると説かれる。
偈(げ)
教えを短く韻文にまとめたもの。
螺髪(らほつ)
如来の頭に並ぶ巻き貝のような髪。