孔雀に乗る童子の姿の天部。韋駄天と同じ源をもつとされる。
鳩摩羅天とはどんな仏か
鳩摩羅天をひとことで言えば孔雀に乗る童子です。名の「鳩摩羅」は、梵語で少年・童子を意味する語を音で写したものとされます。
姿の決め手は乗り物です。孔雀の背に乗る童形の像は、天部のなかではこの尊格にほぼ限られます。 顔が六つ、腕が十二本という多面多臂の形で説かれることもあり、手には鉾・鈴・鶏などを持つとされます。
インドで軍勢を率いるとされた尊格に由来し、韋駄天と源を同じくすると考えられています。日本では韋駄天のほうが広まり、鳩摩羅天の名は曼荼羅の外側の院にとどまりました。
単独で祀られることはなく、曼荼羅の一員として名を残しています。
鳩摩羅天の読み方と梵名
読みは「くまらてん」です。
「鳩摩羅」は梵語クマーラを音で写したもので、少年・童子を意味します。仏典を訳した鳩摩羅什(くまらじゅう)の名にも同じ字が使われています。
同じ源をもつ尊格が、日本では韋駄天として広まりました。 鳩摩羅天と韋駄天は、もとをたどれば一つに行き着くとされます。
鳩摩羅天(くまらてん)
もっとも広く使われる形。
鳩摩羅(くまら)
「天」を外した形。
童子天(どうじてん)
名を意味で訳した形。
塞建陀(そけんだ)
同じ源をもつとされる尊格の音写。
クマーラ(Kumara)
意味は「少年・童子」。インドで軍勢を率いるとされた尊格の名でもある。読みは「くまーら」。
鳩摩羅天の見分け方(印相・持ち物・姿)
孔雀に乗った童子。この組み合わせは、天部のなかでほぼこの尊格に限られます。
乗り物 ─ 孔雀
孔雀の背に乗る姿で説かれます。孔雀に乗る尊格は数が少なく、これだけで見当がつきます。
孔雀は毒蛇を食べるとされ、害を除く力の象徴として仏教に取り込まれました。
同じく孔雀に乗る尊格に孔雀明王がありますが、こちらは明王の位です。
姿 ─ 童子の形
髪を左右に結い、幼い顔立ちに作られます。甲を着ける図と、着けない図があります。
大人の姿に彫られることはありません。 童子であることが名の意味そのものです。
顔が六つ、腕が十二本という多面多臂の形で説かれることもあります。
持ち物 ─ 鉾と鈴と鶏
手には鉾・鈴・鶏などを持つとされます。
鶏を持つ点が変わっています。 夜明けを告げる鳥として添えられたと考えられますが、確かなことはわかっていません。
図像集によって持ち物の組み合わせが違い、一定していません。
鳩摩羅天のご利益
子を守る
童子の姿であることによる。
毒を除く
孔雀が毒蛇を食べるとされることによる。
災いを払う
軍勢を率いる尊格に由来することによる。
鳩摩羅天に会える寺
鳩摩羅天を安置する堂は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで「鳩摩羅天」を引いても、国指定の彫刻は見あたりません。曼荼羅に描かれる尊格で、堂に据える像として彫られなかったためです。
同じ源をもつ韋駄天のほうが日本では広まり、鳩摩羅天の名は曼荼羅のなかにとどまりました。 会いたい場合は、曼荼羅の外側の院を探すことになります。
鳩摩羅天をめぐる仏のつながり
鳩摩羅天の位階と、似た仏との違い
鳩摩羅天は天部の位に置かれます。童子の姿をとる少数派です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。鳩摩羅天は天部にあたります。
天部のなかでは童形の組に入ります。大人の姿をとらない尊格は多くありません。
韋駄天 ─ 同じ源をもつ
どちらもインドで軍勢を率いるとされた尊格に由来します。
見分けは姿と乗り物です。韋駄天は甲を着けた若者の姿で走り、剣を横に構えます。鳩摩羅天は童子の姿で孔雀に乗ります。
孔雀明王 ─ どちらも孔雀に乗る
どちらも孔雀に乗ります。
見分けは位階と姿です。孔雀明王は明王でありながら忿怒の顔をとらず、菩薩のような穏やかな顔で四本の腕を持ちます。 鳩摩羅天は童子の姿です。
矜羯羅童子 ─ どちらも童子の姿
どちらも幼い姿に作られます。
見分けは従う相手です。矜羯羅童子は不動明王の脇に立ち、合掌します。鳩摩羅天は孔雀に乗り、曼荼羅の外側の院に置かれます。
鳩摩羅天についてよくある質問
鳩摩羅天とは何ですか。
孔雀に乗る童子の姿で説かれる天部です。名の「鳩摩羅」は梵語で少年・童子を意味する語を音で写したものです。
韋駄天と同じですか。
同じ源をもつとされます。日本では韋駄天のほうが広まり、鳩摩羅天の名は曼荼羅の外側の院にとどまりました。姿は大きく違います。
鳩摩羅天はどう見分けますか。
孔雀に乗った童子の姿です。顔が六つ、腕が十二本という形で説かれることもあり、手に鉾・鈴・鶏などを持ちます。
鳩摩羅天の像はありますか。
確かめられませんでした。文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は見あたりません。
孔雀明王とはどう違いますか。
どちらも孔雀に乗りますが、孔雀明王は明王の位で四本の腕を持つ大人の姿、鳩摩羅天は天部の位で童子の姿です。
鳩摩羅天と併せて覚えたい言葉・用語
童形(どうぎょう)
子どもの姿に作ること。
多面多臂(ためんたひ)
顔や腕が多くある姿。
外金剛部(げこんごうぶ)
曼荼羅のいちばん外の院。天部が並ぶ。
孔雀(くじゃく)
毒蛇を食べるとされ、害を除く象徴とされた鳥。