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天部

韋駄天(いだてん)とはどんな仏か|見分け方・ご利益・会える寺

韋駄天  / イダテン

守護 インド由来

足の速さで知られる天部。寺の食と伽藍を守る。

韋駄天とはどんな仏か

韋駄天をひとことで言えば足の速い神です。「韋駄天走り」という言い回しは、この天部の名から来ています。

物語はこうです。釈迦が世を去ったのち、その遺骨である仏舎利を、捷疾鬼という足の速い鬼が盗んで逃げました。韋駄天はこれを追いかけ、走って追いつき、取り返したと伝えられます。

足が速いことが、そのまま信仰の中身になったというのが、この天部の変わったところです。ほかの天部は武力や富や智慧で語られますが、韋駄天は速さで語られます。

禅宗の寺では、庫裏という台所を守る神として祀られます。走り回って食べ物を集めたという伝えから、食にまつわる仕事を守るとされました。

「ごちそう」という言葉は「馳走」、つまり走り回ることを指し、韋駄天の話にちなむという説があります。

岐阜の乙津寺と長瀧寺に、重要文化財の立像が伝わります。

韋駄天の読み方と梵名

読みは「いだてん」です。

「韋駄」は梵名スカンダの音を漢字に写したものとされます。もともとインドの軍神で、孔雀に乗る若い神でした。

ただし漢訳の過程で名が変わった経緯には諸説があり、「建駄」を「韋駄」と書き誤ったものだという説もあります。 はっきりとは決まっていません。

韋駄天(いだてん)

もっとも広く使われる形。

韋駄天神(いだてんしん)

神であることを添えた呼び方。

違駄天(いだてん)

「違」の字を当てた形。

塞建陀天(そけんだてん)

梵名の音を漢字に写した形。

スカンダ(Skanda)

意味は「飛び跳ねるもの」。インドの軍神の名。「韋駄」はこの音を漢字に写したものとされる。読みは「すかんだ」。

韋駄天の見分け方(印相・持ち物・姿)

韋駄天の見分けは、合掌した腕の上に載せた剣にあります。この構えをとる仏はほかにありません。

手 ─ 合掌した腕に剣を横たえる

甲冑を着けたまま、両手を胸の前で合わせます。そして曲げた両腕の上に、宝剣を横たえて載せます。

剣を握るのではなく、腕に載せるという構えです。武器を使わずに捧げ持つ形で、守りの姿勢を表します。

この構えをとる仏は韋駄天だけです。 甲冑を着けた像で手を合わせていたら、まずこの天部と考えてよいでしょう。

姿勢 ─ 走らずに立つ

足の速さで知られる天部ですが、像は走る姿をとりません。

両足をそろえてまっすぐ立ち、正面を向きます。動きのない、静かな姿勢です。

速さは物語のなかにあり、像には現れません。仏像は場面を彫るより、性格を形で示すものだという原則が、ここにも表れています。

装い ─ 唐風の甲冑

唐の武将の甲冑を着けます。胸に鎧、肩に袖甲、腰に垂れを付けます。

頭には鳥の羽を飾った兜をかぶるか、髻を結います。顔は若く、髭を生やしません。

四天王や十二神将が忿怒の相をとるのに対し、韋駄天の顔は穏やかです。目を細め、口を結びます。

置かれる場所 ─ 庫裏と山門

禅宗の寺では、庫裏という台所に祀られます。

食べ物を集めて回ったという伝えから、食にまつわる仕事の守り神とされました。修行僧の食事をまかなう場所に置かれます。

山門の裏に祀られる例もあり、伽藍全体を守る神という性格も持ちます。 本堂の本尊として大きく祀られることは多くありません。

韋駄天のご利益

足が速くなる

韋駄天走りの伝えによる。

盗難除け

盗まれた仏舎利を取り返したことによる。

食の守り

禅宗の寺で庫裏を守る神とされることによる。

子どもの健やかさ

若々しい姿にちなみ、成長を願う対象とされた。

韋駄天に会える寺

韋駄天の彫刻で国の指定を受けたものは数が限られます。ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。

一方で、禅宗の寺の庫裏には今も広く祀られています。曹洞宗や臨済宗の寺の台所には、たいてい韋駄天の像か札があります。

ただし庫裏は修行と生活の場であり、拝観の対象になっていないことがほとんどです。 訪ねる前に寺へ確かめる必要があります。

乙津寺(おっしんじ)

重要文化財

地図で開く

乙津寺の住所:岐阜県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)

像:木造韋駄天立像 一躯/重要文化財

この像に結び付く願い:足が速くなる

韋駄天が単独で重要文化財に指定された例です。

文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が乙津寺と記されています。

韋駄天の彫刻で国の指定を受けたものは数が限られ、確かめられたかぎり、そのほとんどが岐阜県にあります。

所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。

長瀧寺(ちょうりゅうじ)

重要文化財

地図で開く

長瀧寺の住所:岐阜県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)

像:木造韋駄天立像・木造善財童子立像 各一躯/重要文化財

この像に結び付く願い:食の守り

韋駄天と善財童子が対で登録された、めずらしい例です。

文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が長瀧寺と記されています。

位階も役目も違う二体が、なぜ一件として登録されているのかははっきりしません。 もとの安置の形によるものと考えられます。

所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。

韋駄天をめぐる仏のつながり

韋駄天の位階と、似た仏との違い

韋駄天は天部の位に置かれます。仏法と伽藍を守る神々のひとりです。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。韋駄天は天部です。

天部のなかでは、寺そのものを守るという役目を持つ組に入ります。金剛力士が門を守り、四天王が堂の四隅を守るのに対し、韋駄天は庫裏と伽藍全体を守ります。

どこを守るかで役割が分かれているのが、天部の面白いところです。

金剛力士 ─ 守る場所が違う

どちらも寺を守る天部です。金剛力士は門、韋駄天は庫裏と伽藍を受け持ちます。

姿もまったく違います。金剛力士は上半身を露わにし、筋肉を誇張して怒りの表情を見せます。韋駄天は甲冑を着け、穏やかな顔で合掌します。

金剛力士は二体一対、韋駄天は単独で祀られます。

四天王 ─ 甲冑を着けた天部どうし

どちらも唐風の甲冑を着けます。姿だけでは紛れます。

見分けは手と足もとです。四天王は武器を握り、邪鬼を踏みます。韋駄天は合掌した腕に剣を載せ、邪鬼を踏みません。

顔つきも違い、四天王は忿怒の相、韋駄天は穏やかな表情です。

善財童子 ─ ともに登録された例がある

岐阜の長瀧寺では、韋駄天と善財童子が一件の重要文化財として登録されています。

位階も役目もまったく違う二体です。韋駄天は天部、善財童子は教えを求める人間です。

姿も違い、韋駄天は甲冑を着けた大人、善財童子は簡素な衣の少年です。なぜ対で登録されているのかは、もとの安置の形によるものと考えられます。

韋駄天についてよくある質問

韋駄天とはどんな仏ですか。

足の速さで知られる天部です。仏舎利を盗んで逃げた鬼を追いかけ、走って取り返したと伝えられます。

韋駄天走りとは何ですか。

非常に速く走ることのたとえです。この天部が鬼を追って走った話から生まれた言い回しです。

韋駄天はどう見分けますか。

甲冑を着けたまま両手を胸の前で合わせ、曲げた腕の上に宝剣を横たえて載せます。この構えをとる仏はほかにありません。

なぜ台所に祀られるのですか。

走り回って食べ物を集めたという伝えから、食にまつわる仕事を守る神とされたためです。禅宗の寺では庫裏に祀られます。

韋駄天の像はどこで見られますか。

岐阜の乙津寺と長瀧寺に重要文化財の立像があります。国指定の彫刻は数が限られます。

韋駄天と併せて覚えたい言葉・用語

庫裏(くり)

寺の台所と住まいを兼ねた建物。韋駄天を祀る。

仏舎利(ぶっしゃり)

釈迦の遺骨。塔に納めて祀る。

捷疾鬼(しょうしつき)

仏舎利を盗んで逃げた足の速い鬼。

伽藍(がらん)

寺の建物のまとまり。