人が生まれた時から両肩に乗り、善悪の行いを書き留める二体。
倶生神とはどんな仏か
倶生神の読み方と梵名
読みは「くしょうじん」です。
「倶生」は「ともに生まれる」という意味です。その人と同時に生まれ、生涯そばを離れないという性格が、名にそのまま表れています。
二体のうち一方を同生、もう一方を同名と呼び分けます。どちらが善を記しどちらが悪を記すかは、説によって入れ替わります。
倶生神(くしょうじん)
もっとも広く使われる形。
同生神(どうしょうじん)
二体のうち一方を指す形。
同名神(どうみょうじん)
二体のうちもう一方を指す形。
倶生天(くしょうてん)
天部として呼ぶ形。
サハジャ(Sahaja)
意味は「共に生まれるもの」。同時に生まれることを表す語。「倶生」はこれを意味で訳したもの。読みは「さはじゃ」。
倶生神の見分け方(印相・持ち物・姿)
筆と巻物を持つ官人の姿が決め手です。閻魔王のかたわらに置かれます。
姿 ─ 中国の官人
冠をかぶり、道服という官服をまとった中国の官人の姿で表されます。閻魔王や十王と同じ装いです。
角も牙もなく、恐ろしい顔にはなりません。事務を執る役人の顔つきです。
責める獄卒と、書き留める倶生神。地獄の場には、恐ろしい顔と静かな顔の両方が置かれています。
持ち物 ─ 筆と巻物
筆と巻物、あるいは書物を持ちます。記録係であることを示す持ち物です。
巻物を広げて読み上げる姿、筆を構えて書き付ける姿があります。
武器はいっさい持ちません。 十王の堂のなかで、唯一「書く」ことを担当する尊格です。
数 ─ 本来は二体
二体そろえるのが本来の形です。同生と同名で、善と悪を分けて記します。
ただし一体だけ伝わる例も多く、堂によっては片方しか残っていません。
神奈川の円応寺は、文化庁の国指定文化財等データベースで員数が二躯と記されており、本来の形を残した数少ない例です。
置かれ方 ─ 閻魔堂のなかで
閻魔王を安置する堂に、十王・奪衣婆・獄卒とともに置かれます。
王の脇に控え、記録を読み上げる位置です。
単独で本尊になることはありません。裁きの場の一員としてのみ存在します。
倶生神のご利益
戒めを守る
行いが常に記録されることによる。
身の守り
生涯そばを離れないとされることによる。
正直
嘘が通じない仕組みによるとされる。
倶生神に会える寺
倶生神の像は、閻魔王を安置する堂に置かれます。倶生神だけを祀る堂はありません。
文化庁の国指定文化財等データベースで所有者が寺であることを確かめられたのは、神奈川の円応寺、滋賀の浄信寺、京都の宝積寺の三か寺です。このうち二躯そろって指定されているのは円応寺だけです。
浄信寺の像は立像で、名称に「伝僧空海作」と添えられています。「伝」は、そう伝えられているという意味で、確かめられていないことを示します。
閻魔堂の拝観は日を限る寺が多いものです。訪ねる前に、その寺の案内で公開の有無を確かめてください。
円応寺(えんのうじ)
重要文化財
円応寺の住所:神奈川県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造倶生神坐像 二躯/重要文化財
この像に結び付く願い:戒めを守る
二躯そろって指定されています。 同生・同名という本来の形を残した例です。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が円応寺と記され、員数は二躯です。閻魔王・初江王・奪衣婆・鬼卒・檀拏幢もあわせて指定されています。
裁きの場を一式そろえて残した堂は、日本でもきわめて少数です。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
浄信寺(じょうしんじ)
重要文化財
浄信寺の住所:滋賀県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造倶生神立像〈伝僧空海作〉一躯/重要文化財
この像に結び付く願い:正直
立像の作例です。坐像が多いなかでめずらしい形にあたります。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、名称に「伝僧空海作」と添えられています。「伝」は、そう伝えられているという意味で、確かめられていないことを示します。
同じ寺には木造閻魔王立像も重要文化財として伝わります。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
宝積寺(ほうしゃくじ)
重要文化財
一躯だけの指定です。二体そろえるのが本来の形ですが、片方だけ伝わる例も多くあります。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が宝積寺と記されています。
閻魔王をはじめとする十王の像とともに伝わってきました。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
倶生神をめぐる仏のつながり
倶生神の位階と、似た仏との違い
倶生神は天部の位に置かれます。閻魔王と十王に従う記録係です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。倶生神は天部に数えられます。
天部のなかでは、眷属にあたります。救う役も責める役も持たず、ただ書き留めるという一点だけを担当する、めずらしい尊格です。
生涯そばにいるという性格から、守り手として受け取られることもありました。
閻魔 ─ 読み上げる者と裁く者
倶生神が記録を読み上げ、閻魔王が裁きを下します。
見分けは持ち物です。閻魔王は笏を持ち、椅子に座って正面を向きます。倶生神は筆と巻物を持ち、王の脇に控えます。
神奈川の円応寺には、この二体がそろって重要文化財として伝わります。
奪衣婆 ─ どちらも裁きを支える
どちらも閻魔王の裁きを支えます。倶生神は行いを書き留め、奪衣婆は衣の重さで罪を計ります。
見分けは姿です。倶生神は中国の官人の姿、奪衣婆は上半身をあらわにした老女です。
順序も違います。奪衣婆は三途の川で、倶生神は王の前で働きます。
十王 ─ 装いがよく似ている
どちらも中国の官人の姿で、冠をかぶり道服をまといます。堂のなかで見分けにくい組み合わせです。
見分けは持ち物と位置です。十王は笏を持ち、椅子に座ります。倶生神は筆と巻物を持ち、立つか低い座に控えます。
座っているか控えているかで、王か記録係かが分かります。
倶生神についてよくある質問
倶生神とは何をする尊格ですか。
人が生まれるのと同時に生まれ、生涯その人の両肩に乗って善悪の行いを書き留めるとされます。死後、閻魔王の前でその記録が読み上げられます。
なぜ二体なのですか。
同生・同名の二体とされ、一方が善い行いを、もう一方が悪い行いを記すと説かれるためです。ただし一体だけ伝わる例も多くあります。
倶生神の像はどこで見られますか。
神奈川の円応寺に重要文化財の木造倶生神坐像二躯、滋賀の浄信寺と京都の宝積寺にも重要文化財の像が一躯ずつ伝わります。
十王と見分けがつきません。
どちらも中国の官人の姿ですが、十王は笏を持って椅子に座ります。倶生神は筆と巻物を持ち、王の脇に控えます。
浄信寺の像は空海の作ですか。
文化財の名称には「伝僧空海作」と添えられています。「伝」はそう伝えられているという意味で、確かめられていないことを示します。
倶生神と併せて覚えたい言葉・用語
浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ)
閻魔王のかたわらの鏡。生前の行いがすべて映るとされる。
道服(どうふく)
中国の官人がまとう衣。閻魔王や十王の装い。
笏(しゃく)
官人が手に持つ細長い板。