死後の裁きを順に受け持つ、十人の王。
十王とはどんな仏か
十王をひとことで言えば死後の裁判官たちです。死者が受ける裁きを、順に十人が受け持ちます。
顔ぶれは、秦広王・初江王・宋帝王・五官王・閻魔王・変成王・泰山王・平等王・都市王・五道転輪王の十人です。
裁きの日は決まっています。初七日から七日ごとに七回、そして百か日・一周忌・三回忌。あわせて十回です。
日本の法要が七日ごとに営まれ、一周忌・三回忌と続くのは、この十王の裁きの日に合わせたものです。 遺族が法要を営むのは、その日の裁きが軽くなるよう願うためだと説かれます。
この考え方は中国で生まれました。インドの経典には十王という枠組みがありません。中国の官僚制度を死後の世界に持ちこんだものです。
姿はいずれも中国の官人で、冠をかぶり道服をまとって笏を持ちます。十体が並ぶと、見分けはほとんどつきません。
神奈川の円応寺に、重要文化財の像が伝わります。
十王の読み方と梵名
読みは「じゅうおう」です。
一人の名ではなく、十人をまとめて呼ぶ名です。四天王・十二神将と同じ、組み合わせの名にあたります。
日本ではのちに三体を加えて十三仏とし、七回忌・十三回忌・三十三回忌までを受け持たせました。十王が中国生まれ、十三仏が日本生まれという違いがあります。
十王(じゅうおう)
もっとも広く使われる形。
冥界十王(めいかいじゅうおう)
死後の世界であることを添えた呼び方。
十王信仰(じゅうおうしんこう)
この考え方そのものを指す語。
十三仏(じゅうさんぶつ)
日本で三体を加えて十三としたもの。
ヤマ(Yama)
意味は「抑制するもの」。十王のうち閻魔王の原語。十王は中国で生まれた枠組みのため、全体に対応する梵名は確かめられなかった。読みは「やま」。
十王の見分け方(印相・持ち物・姿)
十王の見分けは、中国の官人の姿で全体を判じ、そこから個々を絞ることになります。ただし個々の区別はきわめて難しいものです。
装い ─ 全員が中国の官人
十体すべてが、中国の官服をまといます。冠をかぶり、道服を着て、笏を持ちます。
如来も菩薩も明王も天部も、インド風の装いをします。中国の官服を着ているのは、十王だけです。 出どころが中国であることが、そのまま装いに出ています。
椅子に座る形が基本で、蓮華座には座りません。
見分け ─ 個々の区別は難しい
十体はほとんど同じ姿に造られます。
閻魔王だけは口を大きく開けて怒鳴る形が多く、区別がつきやすいものです。ほかの九体は、表情の細かい違いか、台座や光背の飾りで分けるほかありません。
文化財の名称でも「木造初江王坐像」のように個別に登録される例と、「十王像」とまとめられる例があります。
裁きの日 ─ 法要と対応する
十王の裁きの日は、そのまま法要の日にあたります。
初七日は秦広王、二七日は初江王、三七日は宋帝王、四七日は五官王、五七日つまり三十五日目が閻魔王。六七日は変成王、七七日つまり四十九日が泰山王です。
そのあと百か日が平等王、一周忌が都市王、三回忌が五道転輪王です。法要の日程表が、そのまま十王の担当表になっています。
眷属 ─ 奪衣婆と倶生神
十王には眷属が付き従います。
奪衣婆は三途の川で死者の衣を剥ぐ老女、倶生神は生前の行いを記録する神です。鬼卒という獄卒も付きます。
神奈川の円応寺には、これらの像が重要文化財としてそろっています。裁きの場そのものが堂に再現されています。
十王のご利益
先祖供養
法要の日と裁きの日が対応することによる。
地獄からの救い
裁きを軽くする願いによる。
厄除け
悪を裁く力にちなむ。
延命
生前に十王を祀ると死後の裁きが軽くなるとされた。
十王に会える寺
十王が十体そろって残る例は多くありません。神奈川の円応寺のように、数体がまとまって伝わる場合がほとんどです。
文化庁の国指定文化財等データベースで「十王」を検索しても、十体一組で登録された彫刻は確かめられませんでした。多くは「閻魔王坐像」のように、個別の名で登録されています。
ここに挙げたのは、所有者が寺であることを確かめられたものだけです。「閻魔堂」を構える寺には、十王の像が並んでいることがあります。
円応寺(えんのうじ)
重要文化財
円応寺の住所:神奈川県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造初江王坐像〈幸有作〉・木造閻魔王坐像・木造倶生神坐像・木造奪衣婆坐像〈弘円作〉・木造鬼卒立像・木造檀拏幢/重要文化財
この像に結び付く願い:地獄からの救い
十王の裁きの場そのものを堂に再現した、日本でも数少ない例です。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が円応寺と記されています。名称に作者名として幸有・弘円の名が記されています。
初江王・閻魔王のほか、倶生神・奪衣婆・鬼卒・檀拏幢がそろいます。檀拏幢は人の頭を先に付けた竿で、死者の行いを映すとされます。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)
重要文化財
十王のうち閻魔王の像が重要文化財に指定されています。
文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が六波羅蜜寺と記されています。
十王のうち閻魔王だけが単独で像に造られる例は多く、この寺もそのひとつです。
同じ寺には空也上人立像、平清盛坐像もある。
十王をめぐる仏のつながり
十王の位階と、似た仏との違い
十王は天部の枠に置かれます。死後の裁きを受け持つ組み合わせです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。十王は天部の枠で扱われます。
ただしインドの経典に根拠を持ちません。中国で生まれた枠組みで、官僚制度を死後の世界に持ちこんだものです。
位階の分類に収まりにくい組み合わせで、天部と呼ぶのは便宜のものだと考えるのが正確です。 同じ事情の尊格に、牛頭天王や妙見菩薩があります。
閻魔 ─ その第五
閻魔王は十王のうちの一人です。全体と、その一部の関係にあたります。
三十五日目という、もっとも重い裁きを受け持ちます。そのため十人のなかで唯一、広く名を知られました。
見分けは表情です。閻魔王だけが口を大きく開けて怒鳴る形に造られることが多く、ほかの九体は口を結びます。
地蔵菩薩 ─ 裁きと救い
十王が裁く側、地蔵菩薩が救う側です。役目が正反対にあたります。
ただし日本では、閻魔王と地蔵菩薩を同体とみる説が広まりました。裁く者と救う者が同じだという考え方です。
見分けは装いです。地蔵菩薩は僧の姿、十王は中国の官服をまといます。
十二神将 ─ 数の組み合わせどうし
十王についてよくある質問
十王とは何ですか。
死者が受ける裁きを順に受け持つ十人の王です。秦広王・初江王・宋帝王・五官王・閻魔王・変成王・泰山王・平等王・都市王・五道転輪王からなります。
なぜ七日ごとに法要をするのですか。
十王の裁きが七日ごとに行われるためです。遺族が法要を営むのは、その日の裁きが軽くなるよう願うためだと説かれます。
十王はどこで生まれた考え方ですか。
中国です。インドの経典には十王という枠組みがありません。中国の官僚制度を死後の世界に持ちこんだものです。
十王と十三仏はどう違いますか。
十王が中国生まれ、十三仏が日本生まれです。日本では十王に三体を加えて十三とし、七回忌・十三回忌・三十三回忌までを受け持たせました。
十王の像はどこで見られますか。
神奈川の円応寺に、初江王・閻魔王・倶生神・奪衣婆などがそろった重要文化財があります。十体そろって残る例は多くありません。
十王と併せて覚えたい言葉・用語
初江王(しょこうおう)
十王の第二。二七日の裁きを受け持つ。
倶生神(くしょうじん)
生前の行いを記録する神。人と共に生まれるとされる。
檀拏幢(だんだとう)
人の頭を先に付けた竿。死者の行いを映すとされる。
十三仏(じゅうさんぶつ)
十王に三体を加えた日本の枠組み。三十三回忌まで受け持つ。