本文へ移動

天部

東岳大帝(とうがくたいてい)とはどんな仏か|見分け方・ご利益

東岳大帝  / トウガクタイテイ

守護 民間信仰

中国で泰山をつかさどるとされた帝。死者の行き先を握るとされた。

東岳大帝とはどんな仏か

東岳大帝をひとことで言えば泰山の主です。泰山は東の岳にあたるため、東岳大帝と呼ばれます。

中国では古くから、人は死ぬと泰山の下へ行くと考えられてきました。そこを治める者として、この帝は死者の名簿を握るとされます。

仏教の地獄と裁きの考えが中国に入ったとき、この筋書きと結びつきました。 十王のうち泰山王は、その流れのうえにあります。死後の行き先を決めるという役目が、二つの伝えの間で重なったのです。

日本では、寿命を延ばす祈りのなかで泰山府君の名がよく知られました。東岳大帝と泰山府君を同じものとみる説がありますが、別に扱う説もあり、決着していません。

東岳大帝の読み方と梵名

読みは「とうがくたいてい」です。

「東岳」は東の岳、すなわち泰山を指します。中国では五つの霊山を五岳と呼び、泰山はその東にあたります。

「泰山府君」と同じものとみる説がありますが、決着していません。 日本の書き物では泰山府君の名のほうがはるかによく出てきます。

東岳大帝(とうがくたいてい)

もっとも広く使われる形。

東岳帝君(とうがくていくん)

中国での呼び方。

泰山府君(たいざんふくん)

日本でよく知られた形。同じとみる説と別とみる説がある。

泰山王(たいざんおう)

十王の一員としての形。

東岳大帝の見分け方(印相・持ち物・姿)

冠をかぶった中国の帝の姿とされます。ただし日本での作例はきわめてまれです。

姿 ─ 中国の帝

冠をかぶり、袍という衣をまとった中国の帝の姿とされます。笏を持つ形もあります。

閻魔王や十王と同じ系統の装いです。中国で育った尊格に共通する形といえます。

日本では作例がきわめてまれで、姿の決まりも定着しませんでした。

役目 ─ 死者の名簿

死者の名簿を握るとされます。誰がいつ死に、どこへ行くかを決める立場です。

寿命を延ばす祈りの相手とされたのは、この役目によります。名簿に手を入れてもらう、という発想です。

日本では泰山府君の名で、寿命を延ばす修法が行われました。

十王との関わり

仏教の地獄と裁きの考えが中国に入ったとき、泰山の伝えと結びつきました。

十王のうち泰山王は、その流れのうえにあります。七七日、すなわち四十九日目の審判を受け持つとされます。

中国で育った死後の考え方が、仏教の十王という枠に収められた例です。

日本での扱い

日本では、東岳大帝の名よりも泰山府君の名のほうがはるかによく知られました。

寿命を延ばす修法の相手として、書き物にたびたび名が出ます。

ただし両者を同じとみるか別とみるかは決着していません。 名が違う以上、この記事では別に扱います。

東岳大帝のご利益

延命

死者の名簿を握るとされることによる。

除災

寿命を延ばす修法の相手とされたことによる。

死後の道案内

死者の行き先を決めるとされることによる。

東岳大帝に会える寺

東岳大帝の像を安置する寺は確かめられませんでした。

文化庁の国指定文化財等データベースを調べても、東岳大帝の名を持つ国指定の彫刻は見つかりません。日本ではこの名で像が作られることがほとんどなかったと考えられます。

なお、同じデータベースには奈良の東大寺が所有する木造閻魔王坐像・木造泰山府君坐像二躯が重要文化財として登録されています。ただしこれは「泰山府君」の名で指定された像であって、「東岳大帝」ではありません。両者を同じものとみる説と別とみる説があるため、この欄には入れていません。

十王のうち泰山王の像であれば、十王をそろえた堂で会える場合があります。神奈川の円応寺には初江王・閻魔王などが重要文化財として伝わります。

東岳大帝をめぐる仏のつながり

化身・同じ経典 三尊・脇侍・眷属 対になる仏 混同・見分け

東岳大帝の位階と、似た仏との違い

東岳大帝は天部の位に置かれます。中国で育ち、仏教の枠に取り込まれた尊格です。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。東岳大帝は天部に数えられます。

ただし出どころはインドの経典ではなく、中国の在来の考え方です。仏教が新しい土地へ入るとき、そこにあった死後の考えを取り込んだ跡が、この尊格に残っています。

十王も同じ経路で生まれました。中国で育ち、日本へ渡ってきた組です。

十王 ─ 同じ経路で生まれた

どちらも中国で育ち、日本へ渡りました。十王のうち泰山王は、東岳大帝と同じ泰山の伝えの上にあります。

見分けは数と位置です。十王は十体そろって死後の審判を分担します。東岳大帝は単独で泰山を治めます。

十王の像は各地に伝わりますが、東岳大帝の国指定の彫刻は確かめられませんでした。

閻魔 ─ どちらも死後を握る

どちらも死後の行き先に関わります。閻魔王はインドの尊格が中国で官人の姿を得たもの、東岳大帝は中国で育った帝です。

見分けは出どころです。閻魔王の梵名はヤマで、インドにさかのぼります。東岳大帝にはそれがありません。

閻魔王の像は各地に伝わります。奈良の東大寺には重要文化財の木造閻魔王坐像があります。

倶生神 ─ どちらも記録に関わる

どちらも人の一生の記録に関わります。倶生神は行いを書き留め、東岳大帝は死者の名簿を握ります。

見分けは装いと位置です。倶生神は官人の姿で王の脇に控えます。東岳大帝は帝の姿で、単独で扱われます。

倶生神には円応寺・浄信寺・宝積寺に重要文化財の像がありますが、東岳大帝の像は確かめられませんでした。

東岳大帝についてよくある質問

東岳大帝とはどういう尊格ですか。

中国で泰山をつかさどるとされた帝です。人は死ぬと泰山の下へ行くと考えられ、その主として死者の名簿を握るとされました。

泰山府君と同じものですか。

同じとみる説がありますが、別に扱う説もあり、決着していません。日本では泰山府君の名のほうがよく知られています。

東岳大帝の像はどこで見られますか。

文化庁の国指定文化財等データベースでは、東岳大帝の名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。

東大寺の泰山府君像は東岳大帝ですか。

「泰山府君」の名で指定された像であって、「東岳大帝」ではありません。両者を同じとみるかは決着していないため、この記事では別に扱っています。

十王とはどう関わりますか。

仏教の地獄と裁きの考えが中国に入ったとき、泰山の伝えと結びつきました。十王のうち泰山王は、その流れのうえにあります。

東岳大帝と併せて覚えたい言葉・用語

五岳(ごがく)

中国で霊山とされた五つの山。泰山は東にあたる。

泰山府君(たいざんふくん)

寿命を延ばす修法の相手とされた尊格。東岳大帝と同じとみる説がある。

十王(じゅうおう)

死後の裁きを分担する十体の王。泰山王は第七。