吉祥天の妹とされ、衰えと不幸をもたらすとされる尊格。
黒闇天とはどんな仏か
黒闇天の読み方と梵名
読みは「こくあんてん」です。「黒闇天女」と呼ぶ場合もあります。
「黒闇」は黒い闇のことで、梵名を意味で訳した語です。字を見ただけで、この尊格の性格が分かるようになっています。
経典では「黒闇女」の形で出てきます。姉の吉祥天が「功徳天」と呼ばれる場面と対になります。
黒闇天(こくあんてん)
もっとも広く使われる形。
黒闇天女(こくあんてんにょ)
女性であることを示す形。
黒闇女(こくあんにょ)
経典に見える形。
黒夜天(こくやてん)
梵名を意味で訳した形。
カーラーラートリー(Kalaratri)
意味は「黒い夜」。「カーラー」が黒、「ラートリー」が夜を指す。読みは「かーらーらーとりー」。
黒闇天の見分け方(印相・持ち物・姿)
黒い肌と乱れた髪が決め手です。ただし作例そのものがきわめてまれです。
姿 ─ 黒い肌
体を黒く塗って表されるとされます。 名の「黒闇」がそのまま姿になっています。
髪は乱れ、顔は険しく、衣も粗末に描かれます。
美しく整えられた姉の吉祥天と、隅々まで逆になるように作られています。
対 ─ 吉祥天と一組
単独で表されることはほとんどありません。 姉の吉祥天と対にして描かれます。
福と禍が離れないことを示すために、二人そろっている必要があるからです。
片方だけ描いたのでは、この尊格の意味が伝わりません。
なぜ作例が少ないのか
禍をもたらすとされる尊格を、堂に安置して拝む形にはなりにくいものです。
吉祥天の像が各地に伝わるのに対し、黒闇天の像はきわめてまれです。
説話のなかでは欠かせない役でありながら、像としては残らなかった。 教えの筋と、拝む対象は、必ずしも一致しません。
大黒天との関わり
梵名の「カーラー」は黒を意味します。大黒天の梵名マハーカーラも同じ語を含みます。
そのため、両者を結びつけて語られることがあります。
ただし大黒天は福をもたらす尊格として日本に定着しており、役目は正反対です。名の一部が重なるだけと考えるのが穏当でしょう。
黒闇天のご利益
戒めを守る
福と禍が離れないことを示すとされる。
悪を退ける
禍そのものを姿にしたことによる。
執着を離れる
福だけを求める心を戒める話による。
黒闇天に会える寺
黒闇天の像を安置する寺は確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースを調べても、黒闇天または黒闇天女の名を持つ国指定の彫刻は見つかりません。
禍をもたらすとされる尊格を、堂に安置して拝む形にはなりにくかったと考えられます。 姉の吉祥天の像が各地に伝わるのとは、対照的です。
会いたければ、経典の話のなかで探すことになります。長者の家を訪ねる二人の場面は、絵として描かれることがあります。
なお、吉祥天の像を訪ねたときには、その像の背後にもう一人がいることを思い出してください。二人は離れないと説かれています。
黒闇天をめぐる仏のつながり
黒闇天の位階と、似た仏との違い
黒闇天は天部の位に置かれます。吉祥天の妹とされる女性の天部です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。黒闇天は天部です。
天部のなかでは、女性の姿をとる少数派にあたります。吉祥天・弁才天・伎芸天・鬼子母神などと同じ組に入ります。
ただしそのなかで、禍をもたらす側に置かれた唯一といってよい尊格です。 天部の多くが救いや守りを担うなかで、際立った位置にあります。
吉祥天 ─ 姉と妹
姉妹とされます。 吉祥天は福と豊かさを、黒闇天は衰えと不幸をもたらすとされます。
見分けは肌の色と装いです。吉祥天は美しく整えられ、如意宝珠を捧げます。黒闇天は黒い肌に乱れた髪で表されます。
二人は離れないと説かれます。福を招けば禍も来る、という教えを姿にしたものです。
大黒天 ─ 梵名に「黒」が重なる
梵名にどちらも「カーラー」=黒の語を含みます。 そのため結びつけて語られることがあります。
ただし役目は正反対です。大黒天は日本で福をもたらす尊格として定着し、七福神にも数えられます。
名の一部が重なるだけと考えるのが穏当です。
荼枳尼天 ─ どちらも恐れられた天部
どちらも恐れの対象になった女性の天部です。
見分けは姿です。荼枳尼天は白い狐に乗り、剣と宝珠を持ちます。黒闇天は乗り物を持たず、黒い肌で表されます。
荼枳尼天は福を招く側へ移りましたが、黒闇天は禍の側に留まりました。
黒闇天についてよくある質問
黒闇天とはどういう尊格ですか。
福をもたらす吉祥天の妹とされ、逆に衰えと不幸をもたらすとされます。梵名カーラーラートリーは「黒い夜」を意味します。
吉祥天とどういう関係ですか。
姉妹とされます。経典には、二人が並んで長者の家を訪ねる話があり、姉が「私たちは離れない」と告げます。福と禍が一緒に来ることを説いた話です。
黒闇天の像はどこで見られますか。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、黒闇天の名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
なぜ像が少ないのですか。
禍をもたらすとされる尊格を、堂に安置して拝む形にはなりにくかったと考えられます。説話では欠かせない役でありながら、像としては残りませんでした。
大黒天と関係がありますか。
梵名にどちらも「黒」を意味する語を含むため、結びつけて語られることがあります。ただし大黒天は福をもたらす尊格で、役目は正反対です。
黒闇天と併せて覚えたい言葉・用語
功徳天(くどくてん)
吉祥天の別の呼び方。経典の話で黒闇女と対になる。
如意宝珠(にょいほうじゅ)
願いをかなえるとされる玉。吉祥天が捧げる。
天女(てんにょ)
天に住むとされる女性の姿の総称。