弥勒菩薩がいまも説法しているとされる天。仏がこの世に出る前に住む場所。
兜率天とはどんな仏か
兜率天をひとことで言えば次の仏が待つ天です。欲の世界に属する六つの天のうち、下から四番目にあたります。
弥勒菩薩がいまここにいて、説法を続けていると説かれます。釈迦もこの世に生まれる前はここにいたとされ、仏となる者が最後に住む場所という位置づけを持ちます。
内院と外院に分かれ、弥勒がいるのは内院です。外院は天の者たちが楽しみに耽る場所とされ、同じ天のなかで役割が分かれています。
『観弥勒菩薩上生兜率天経』は、ここへ生まれ変わることを願う道を説きます。奈良時代の日本では、この願いが広く持たれました。
兜率天の読み方と梵名
読みは「とそつてん」です。「とうりてん」ではありません。それは忉利天という別の天です。
梵名トゥシタを音で写して「兜率」としました。意味で訳すと「知足天」となり、足るを知る天という意味になります。
外院は楽しみに耽る場所とされるのに、名は「足るを知る」です。 この食い違いは、内院の弥勒の側から名が付けられたためと説かれます。
兜率天(とそつてん)
もっとも広く使われる形。
都率天(とそつてん)
字を変えた書き方。
知足天(ちそくてん)
意味で訳した形。足るを知る天。
トゥシタ(Tusita)
意味は「満ち足りたもの」。読みは「とぅした」。
兜率天の見分け方(印相・持ち物・姿)
これを彫った像はありません。 場所であって尊格ではないからです。
なぜ像が無いのか
弥勒菩薩の姿で知る
兜率天を目で知るには、弥勒菩薩の像を見ることになります。
とくに半跏思惟の姿は、兜率天で考えつづける弥勒を表したものと説かれます。片足を膝に組み、指を頬に添える形です。
京都の広隆寺には、国宝の木造弥勒菩薩半跏像が二躯伝わります。
絵に描かれる兜率天
立体の像はありませんが、絵には描かれます。
弥勒が兜率天から降りてくる場面を描いた図や、天の宮殿を描いた図がそれにあたります。
ただし、こうした絵の多くは掛軸として伝わるもので、寺の堂に常に掛かっているとはかぎりません。
兜率天のご利益
来世の安らぎ
ここへ生まれ変わることを願う道が説かれることによる。
足るを知る
「知足天」という訳語による。
弥勒に会う
弥勒菩薩がここにいると説かれることによる。
兜率天に会える寺
兜率天を祀る堂はありません。 尊格ではなく場所だからです。
文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。
会いに行けるのは、兜率天にいるとされる弥勒菩薩の像のほうです。京都の広隆寺には国宝の木造弥勒菩薩半跏像が二躯伝わります。
兜率天をめぐる仏のつながり
兜率天の位階と、似た仏との違い
兜率天は天部の組に入れています。ただし尊格ではなく、天そのものを指す言葉です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。天部は本来「天に住む者」を指しますが、その住まいである「天」も同じ字で呼ばれます。
兜率天は住まいのほうです。六欲天のうち下から四番目にあたり、上に化楽天と他化自在天があります。
この図鑑では、仏の世界の成り立ちを知るための項目として天部に置いています。
天魔 ─ 天の住人と天そのもの
天魔は六欲天のいちばん上、他化自在天に住むとされる者です。
天魔は尊格、兜率天は場所です。同じ「天」の字が付きますが、指しているものが違います。
弥勒菩薩半跏思惟像 ─ 場所とそこにいる仏
半跏思惟の姿は、兜率天で考えつづける弥勒を表したものと説かれます。
兜率天には像がなく、弥勒菩薩には像があります。 兜率天を知りたければ、弥勒の像を見るのが早道です。
過去七仏 ─ 仏がこの世に出る順序
過去七仏は、釈迦より前にこの世に出たとされる仏です。
釈迦もその前は兜率天にいたと説かれ、次に出る弥勒もいまそこにいます。仏が世に出る順序のなかで、兜率天は待つ場にあたります。
兜率天についてよくある質問
兜率天とは何ですか。
欲の世界に属する六つの天のうち、下から四番目にあたる天です。弥勒菩薩がいまここにいて説法を続けていると説かれます。
兜率天の読み方は。
「とそつてん」です。梵名トゥシタを音で写したもので、意味で訳すと「知足天」となります。
兜率天の像はありますか。
ありません。尊格ではなく場所だからです。文化庁の国指定文化財等データベースにも、この名を持つ彫刻はありません。
内院と外院の違いは何ですか。
弥勒菩薩がいるのが内院、天の者たちが楽しみに耽るのが外院とされます。同じ天のなかで役割が分かれています。
兜率天を知るには何を見ればよいですか。
弥勒菩薩の像、とくに半跏思惟の姿です。京都の広隆寺には国宝の木造弥勒菩薩半跏像が二躯伝わります。
兜率天と併せて覚えたい言葉・用語
六欲天(ろくよくてん)
欲の世界に属する六つの天。兜率天は四番目。
内院(ないいん)
兜率天のうち弥勒菩薩がいるとされる区画。
半跏思惟(はんかしゆい)
片足を膝に組み指を頬に添える姿。