八本の刀を構える毘沙門天。名は兜跋の音が転じたものとされる。
刀八毘沙門天とはどんな仏か
刀八毘沙門天の読み方と梵名
読みは「とうはちびしゃもんてん」です。「かたなはち」ではありません。
「刀八」は八本の刀を意味する字面ですが、もとは「兜跋」という音を写した字が書き替えられたもの、という説が有力です。 音が先で、意味は後から付いたことになります。
「毘沙門」は梵語ヴァイシュラヴァナを音で写したものです。四天王のうち北を守る多聞天と同じ尊格を指します。
刀八毘沙門天(とうはちびしゃもんてん)
もっとも広く使われる形。
刀八毘沙門(とうはちびしゃもん)
「天」を外した形。
兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)
名のもとになったとされる形。別の記事を参照。
刀八毘沙門天王(とうはちびしゃもんてんのう)
「王」を添えた形。
刀八毘沙門天の見分け方(印相・持ち物・姿)
八本の刀。腕の数と刀の数を数えれば、ふつうの毘沙門天と一目で分かります。
腕 ─ 八本の刀を握る
多くの腕を左右に開き、そのすべてに刀を構えます。
腕の数は図によって違いますが、刀が八本であることは共通します。
毘沙門天が刀を一本も持たないのがふつうであることを思えば、この八本は大きな違いです。 通常の毘沙門天は鉾と宝塔を持ちます。
顔 ─ 三面のものがある
顔が三つある姿で描かれることがあります。正面と左右で表情を変えます。
一面のものもあり、面の数は定まっていません。
いずれも眉を吊り上げ、口を開いた忿怒の顔に作られます。
乗り物 ─ 獅子か白馬
獅子に乗る形と、白馬に乗る形が伝わります。
毘沙門天が乗り物を持つのは珍しく、これも見分けの手がかりになります。 ふつうの毘沙門天は邪鬼を踏んで立ちます。
乗り物の違いは、よりどころとする図像集の違いによると考えられます。
なぜ像が少ないのか
刀八毘沙門天は、経典に古くから説かれた尊格ではありません。書き替えられた字から後に生まれた姿とされます。
そのため姿を定めた古い図像が乏しく、彫るための決まりが定まりませんでした。
多くの腕に刀を八本持たせるという形は、木で彫るには折れやすく、絵に向いた姿でもあります。
刀八毘沙門天のご利益
戦いに勝つ
武を求める人々に信仰されたと伝えられることによる。
災いを払う
八本の刀で敵を退けるとされることによる。
財を守る
毘沙門天が財をつかさどるとされることによる。
刀八毘沙門天に会える寺
刀八毘沙門天を安置する堂は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで「刀八毘沙門天」を引いても、国指定の彫刻は見あたりません。絵として伝わるものが中心で、彫刻が作られにくい姿であったためと考えられます。
名のもとになったとされる兜跋毘沙門天であれば、京都の教王護国寺(東寺)に国宝の木造兜跋毘沙門天立像が伝わります。 ただしこれは別の像です。取り違えないでください。
刀八毘沙門天をめぐる仏のつながり
刀八毘沙門天の位階と、似た仏との違い
刀八毘沙門天は天部の位に置かれます。毘沙門天の変わった姿の一つです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。刀八毘沙門天は毘沙門天の一つの形なので、天部にあたります。
毘沙門天には、四天王の一体としての姿、単独で立つ姿、兜跋・刀八・双身・泥足といった変わった姿があります。刀八はそのうち、腕と持ち物を増やした形です。
同じ尊格が、伝えられ方によってこれほど姿を変える例はほかにありません。
兜跋毘沙門天 ─ 名のもとになったとされる
「兜跋」の音が「刀八」に書き替えられたとする説があります。
見分けは容易です。兜跋毘沙門天は一面二臂で、地天の両手に支えられて立ちます。刀八毘沙門天は腕が多く、八本の刀を握ります。
毘沙門天 ─ もとになる姿
ふつうの毘沙門天は甲を着け、右手に鉾、左手に宝塔を捧げ、邪鬼を踏んで立ちます。
刀を持たず、乗り物にも乗りません。 八本の刀と乗り物があれば刀八、なければふつうの毘沙門天です。
双身毘沙門天 ─ 同じく変わった姿
どちらも毘沙門天の変わった形です。
見分けは身体の数です。双身毘沙門天は二体が背中合わせに合わさった一体、刀八毘沙門天は一体で腕と刀が多い形です。
刀八毘沙門天についてよくある質問
刀八毘沙門天とは何ですか。
八本の刀を握る毘沙門天です。多くの腕を左右に開き、獅子や白馬に乗る形、顔が三つある形も伝わります。
なぜ「刀八」と呼ぶのですか。
「兜跋(とばつ)」という音が「刀八」と書き替えられ、その字面から八本の刀を持つ姿が生まれた、という説が有力です。
兜跋毘沙門天とは違うのですか。
別の像です。兜跋毘沙門天は一面二臂で地天の両手に支えられて立ち、刀を八本は持ちません。
刀八毘沙門天の像はありますか。
確かめられませんでした。文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は見あたりません。
ふつうの毘沙門天とどう見分けますか。
刀の数と乗り物です。ふつうの毘沙門天は鉾と宝塔を持ち邪鬼を踏みます。刀八毘沙門天は八本の刀を握り、獅子か白馬に乗ります。
刀八毘沙門天と併せて覚えたい言葉・用語
兜跋(とばつ)
毘沙門天の一つの形を指す語。刀八の名のもととされる。
三面(さんめん)
顔が三つあること。
邪鬼(じゃき)
毘沙門天が足の下に踏む小さな鬼。
宝塔(ほうとう)
毘沙門天が左手に捧げる小さな塔。