世界を創ったとされるインドの神。釈迦に説法を勧めた。
梵天とはどんな仏か
梵天はひとことで言えば釈迦に教えを説かせた神です。
インドでは世界を創った最高神とされていました。仏教に取りこまれ、仏法を守る天部になります。
この仏の役どころで最も重要なのが梵天勧請です。悟りを開いた釈迦は、この教えは深すぎて誰にも理解できまいと考え、説くことをためらいました。そこへ梵天が現れ、教えを説くよう願います。釈迦はこれを受け入れ、最初の説法へ向かいました。
仏教が世に出るきっかけを作った神ということになります。世界を創った神が、仏の前では願う側に回るという構図が、仏教が古い神々をどう位置づけたかをよく示しています。
日本では帝釈天と一対で置かれるのが普通です。二体は姿がよく似ており、古くから名が入れ替わって伝わった例があります。
梵天の読み方と梵名
読みは「ぼんてん」です。梵名のブラフマーは、インドで世界の根本原理を指す語を神格化したものです。「梵」の字はこの語を訳したもので、「梵語」「梵字」「梵鐘」の「梵」も同じ語に由来します。
梵天(ぼんてん)
もっとも広く使われる形。
大梵天王(だいぼんてんのう)
尊称を加えた形。
梵天王(ぼんてんのう)
同じ意味の呼び方。
ブラフマー(Brahma)
意味は「世界の根本原理を神格化したもの」。読みは「ぶらふまー」。「梵」はこの語を訳したもの。
梵天の見分け方(印相・持ち物・姿)
梵天の見分けは、帝釈天と分けられるかにかかっています。日本の古い像では、この見分けが確定していない例があります。
顔の数 ─ 四面が本来の形
経典に説かれる梵天は、四つの顔を持ちます。四方に顔を向け、世界のすべてを見わたす姿です。
東寺講堂の像がこの形で、四面四臂の坐像として国宝に指定されています。
顔が四つあれば梵天と判じられますが、日本の古い像には顔が一つのものが多く、この見分けが効かない場合があります。
乗り物 ─ 鵞鳥
四羽の鵞鳥が引く車、あるいは鵞鳥の背に置いた蓮華座に座ります。
鵞鳥に乗る仏はほかにありません。帝釈天が白象に乗るのと対をなします。
乗り物が見えれば、梵天と帝釈天の見分けは確実です。鵞鳥なら梵天、白象なら帝釈天になります。
持ち物 ─ 蓮華や払子
手に蓮華、払子、水瓶などを持ちます。武器は持ちません。
帝釈天が金剛杵という武器を持つのに対し、梵天は持たないのが目安です。ただし像によって持ち物が変わるため、決め手にはなりません。
装い ─ 二通りある
帝釈天と同じく、梵天にも二通りの装いがあります。
一つは唐の官人のような衣をまとって立つ姿。東大寺法華堂と唐招提寺金堂の像がこれにあたります。
もう一つは四面四臂で坐す姿。東寺講堂の像がこれです。
前者はどちらも顔が一つで腕が二本のため、どちらが梵天でどちらが帝釈天か、いまも確定していません。わからないことは、わからないままに伝わっています。
梵天のご利益
仏法守護
釈迦に説法を勧めた故事による。
厄除け
護法神としての性格による。
所願成就
もとが世界を創った最高神であることによる。
梵天に会える寺
梵天は、ほとんどの場合帝釈天と一対で堂に置かれます。単独で本尊とされる例はきわめて少なく、梵天だけを祀る堂を探すのは難しいと考えてよいでしょう。
ここに挙げたのは、その寺が所有していることを文化庁の国指定文化財等データベース、または寺の公式サイトで確かめられた像だけです。
東寺(教王護国寺)講堂(とうじ こうどう)
国宝/世界遺産
立体曼荼羅の端に、帝釈天と一対で置かれます。二躯まとめて国宝です。
梵天は四つの顔と四本の腕を持ち、鵞鳥の上の蓮華座に座ります。経典どおりの形をとる、日本では数少ない例です。
四面の梵天と、白象の帝釈天。両方の定型を一度に見られる場所にあたります。
所有者は宗教法人教王護国寺。
東大寺 法華堂(三月堂)(とうだいじ ほっけどう)
国宝/世界遺産
本尊の不空羂索観音の左右に立つ二躯です。乾漆で造られ、二躯まとめて国宝に指定されています。
どちらも顔が一つ、腕が二本で、唐の官人のような衣をまといます。どちらが梵天でどちらが帝釈天かは確定していません。
東大寺の公式の説明でも、堂内に現存する仏像として梵天・帝釈天像が挙げられています。
同じ堂の仏像は合計十躯がすべて国宝。
唐招提寺 金堂(とうしょうだいじ こんどう)
国宝/世界遺産
本尊の盧舎那仏の左右に立つ二躯です。国宝に指定されています。
こちらも顔が一つ、腕が二本の立像で、東大寺法華堂の像と同じ問題を抱えます。古い像ほど、名の割り当てが確かではありません。
同じ金堂には国宝の盧舎那仏坐像、薬師如来立像、千手観音立像、四天王立像が並ぶ。
梵天をめぐる仏のつながり
梵天の位階と、似た仏との違い
梵天は天部に置かれます。天部のなかでは帝釈天と並んで最上位にあたります。
インドでは最高神でしたが、仏教のなかでは如来の下、菩薩の下、明王の下に置かれます。まだ悟りを開いていない存在だからです。
世界を創った神が、仏の前では願う側に回る。この構図が、仏教が古い神々をどう扱ったかを端的に示しています。
帝釈天 ─ 鵞鳥か、白象か
一対で置かれる相手です。
乗り物がいちばん確実です。鵞鳥なら梵天、白象なら帝釈天。顔の数も目安になり、四つなら梵天です。
ただし日本の古い像は両方とも顔が一つ、腕が二本、乗り物も無いことがあり、その場合は確定できません。
大自在天 ─ インドの三大神のうちの別の一体
梵天についてよくある質問
梵天はどんな仏ですか。
インドで世界を創ったとされる神が、仏教に取りこまれて護法の天部になったものです。悟りを開いた釈迦に、教えを説くよう願ったと伝えられます。
梵天と帝釈天はどう見分けますか。
乗り物がいちばん確実です。鵞鳥なら梵天、白象なら帝釈天です。顔が四つあれば梵天という目安もあります。
なぜ東大寺の梵天・帝釈天はどちらがどちらかわからないのですか。
二躯とも顔が一つ、腕が二本で、乗り物も持たないためです。唐招提寺の像も同じ状態で、名の割り当ては確定していません。
梵天勧請とは何ですか。
悟りを開いた釈迦が説法をためらっていたとき、梵天が現れて教えを説くよう願った出来事です。仏教が世に出るきっかけとされます。
「梵」という字は何を意味しますか。
梵名ブラフマーを訳した字で、インドの根本原理を指します。梵語、梵字、梵鐘の「梵」も同じ語に由来します。
梵天と併せて覚えたい言葉・用語
梵天勧請(ぼんてんかんじょう)
梵天が釈迦に説法を勧めた出来事。
鵞鳥(がちょう)
梵天の乗り物とされる鳥。
四面四臂(しめんしひ)
顔が四つ、腕が四本ある姿。
払子(ほっす)
獣毛を束ねた法具。梵天が持つことがある。
護法神(ごほうしん)
仏法を守る神々。天部の別の呼び方。