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明王

降三世明王(ごうざんぜみょうおう)とはどんな仏か|見分け方とご利益

降三世明王  / ゴウザンゼミョウオウ

守護忿怒 密教

インドの最高神を踏みつける、五大明王の東方。

降三世明王とはどんな仏か

降三世明王をひとことで言えばインドの最高神を踏む明王です。五大明王のうち東方を受け持ちます。

名の「降三世」には二通りの読み解きがあります。ひとつは過去・現在・未来の三つの世を従えるという意味。もうひとつは貪り・怒り・愚かさという三つの毒を打ち破るという意味です。

この明王を有名にしているのは、足もとです。大自在天とその妃の烏摩を踏みつけています。

大自在天は、インドで宇宙の最高神とされた神です。その神が仏教に従わなかったため、降三世明王が力ずくで屈服させた。仏教が先行する神々の上に立つことを、足で踏むという形で示した像です。

踏まれた大自在天は、のちに仏法を守る天部の一員になったとされます。日本では大黒天の由来にもつながります。

京都の東寺講堂と大阪の天野山金剛寺に、国宝の像が伝わります。

降三世明王の読み方と梵名

読みは「ごうざんぜみょうおう」です。「ごうさんぜ」と読む例もあります。

「降」は従わせること、「三世」は三つの世を指します。三つの世を過去・現在・未来と解くか、貪り・怒り・愚かさの三毒と解くかで、意味が変わります。 どちらの読み解きも古くから行われてきました。

梵名トライローキヤヴィジャヤは「三つの世界に勝つもの」という意味で、こちらは勝つことを強調しています。

降三世明王(ごうざんぜみょうおう)

もっとも広く使われる形。

勝三世明王(しょうざんぜみょうおう)

意味を強めた訳。

三世勝明王(さんぜしょうみょうおう)

古い訳に見える形。

ごうさんぜみょうおう(ごうさんぜみょうおう)

「ごうさんぜ」と読む例もある。

トライローキヤヴィジャヤ(Trailokyavijaya)

意味は「三つの世界に勝つもの」。「トライローキヤ」が三界、「ヴィジャヤ」が勝利を指す。読みは「とらいろーきやう゛ぃじゃや」。

降三世明王の見分け方(印相・持ち物・姿)

降三世明王の見分けは、足もとに踏まれている二体と、胸の前で結ぶ独特の印にあります。

足もと ─ 大自在天と烏摩を踏む

左足で大自在天、右足で妃の烏摩を踏みつけます。

二体は仰向けに倒れ、苦しげな表情で描かれます。大自在天は三つの目を持つ姿、烏摩は女性の姿です。

男女二体を踏む仏は、降三世明王だけです。四天王や十二神将が踏むのは邪鬼という小さな鬼で、姿がまったく違います。

印相 ─ 小指を絡める降三世印

胸の前で両手の小指を絡め、手の甲を合わせて交差させる印を結びます。降三世印といいます。

人差し指を立て、残りの指は握ります。手の甲を外に向けるのが特徴です。

この印を結ぶ仏はほかにありません。足もとが見えない像でも、この手の形だけで降三世明王とわかります。

顔と腕 ─ 三面八臂

顔は三つ、腕は八本が標準です。四面の作例もあります。

三つの顔はいずれも忿怒の相で、目を見開き牙をむきます。頭上に牙を上向きに出す顔を加える形もあります。

八本の手には五鈷杵・剣・弓・矢・鈴・羂索などを握ります。中央の二手で降三世印を結びます。

位置 ─ 五大明王の東

五大明王では、中央の不動明王から見て東に置かれます。

五大明王は、中央が不動明王、東が降三世、南が軍荼利、西が大威徳、北が金剛夜叉です。それぞれ大日・阿閦・宝生・阿弥陀・不空成就の五智如来が怒りの姿をとったものだとされます。

つまり降三世明王は、阿閦如来の怒った姿にあたります。 阿閦如来が「怒らない仏」であることを思うと、対比が際立ちます。

降三世明王のご利益

悪縁を断つ

三つの毒を打ち破ることにちなむ。

厄除け

五大明王として災いを払う。

煩悩を除く

貪り・怒り・愚かさを従える働きによる。

戦の守り

力ずくで屈服させる姿から、武の守りとされた。

降三世明王に会える寺

降三世明王は、五大明王の一員として会うのがふつうです。単独で祀られる例は多くありません。

ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。

そのほか滋賀の延暦寺、大阪の尊延寺にも重要文化財の像があります。大阪の尊延寺の像は「木造降三世軍荼利明王立像」として、軍荼利明王と二躯まとめて登録されています。

東寺 講堂(とうじ こうどう)

国宝

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東寺 講堂の住所:京都市南区九条町1番地

像:木造五大明王像(講堂安置)五躯/国宝

この像に結び付く願い:煩悩を除く

空海が構想した立体曼荼羅の一部です。降三世明王はその五躯のうちの一躯にあたります。

文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が宗教法人教王護国寺と記されています。教王護国寺は東寺の正式な寺号です。

講堂には二十一体の像が並び、如来・菩薩・明王・天部がひとつの空間に配されます。密教の教えを堂の中に立体で組み上げた、日本で唯一の場所です。

同じ寺には国宝の木造兜跋毘沙門天立像、重要文化財の木造夜叉神立像もある。

天野山金剛寺 金堂(あまのさんこんごうじ こんどう)

国宝

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天野山金剛寺 金堂の住所:大阪府河内長野市天野996

像:木造大日如来坐像・木造不動明王坐像・木造降三世明王坐像(金堂安置)/国宝

この像に結び付く願い:悪縁を断つ

大日如来を中心に、向かって右に不動明王、左に降三世明王が座る三体です。

降三世明王が坐像として国宝に指定された、めずらしい例です。五大明王の一員としてではなく、三体だけの組み合わせで置かれます。

文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が天野山金剛寺と記されています。

同じ寺には重要文化財の木造五智如来坐像もある。所在地は公式サイトで確かめた。

明通寺(みょうつうじ)

重要文化財

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明通寺の住所:福井県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)

像:木造降三世明王立像 一躯/重要文化財

この像に結び付く願い:厄除け

降三世明王が単独で重要文化財に指定された例です。

文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が明通寺と記されています。

同じ寺には深沙大将の重要文化財の立像もあります。本堂と三重塔はいずれも国宝に指定されています。

所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。

降三世明王をめぐる仏のつながり

降三世明王の位階と、似た仏との違い

降三世明王は明王の位に置かれます。五大明王のうち東方を受け持ちます。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。降三世明王は明王です。

明王は、大日如来が言葉で導けない相手のためにとった怒りの姿だとされます。五体そろえたものが五大明王で、中央の不動明王を囲んで四体が配されます。

降三世明王は東方で、阿閦如来が怒りの姿をとったものとされます。

不動明王 ─ 五大明王の中心と東

どちらも五大明王です。中央が不動明王、東が降三世明王です。

見分けは腕の数と足もとです。不動明王は腕が二本で岩の座に座り、降三世明王は腕が八本で二体を踏みます。

不動明王は剣と羂索を持ちます。降三世明王は小指を絡める降三世印を結びます。

大自在天 ─ 踏む側と踏まれる側

降三世明王が足もとに踏みつけているのが大自在天です。征服する側とされる側の関係にあたります。

大自在天はインドで宇宙の最高神とされました。それを仏教の明王が踏むという構図が、この像の意味です。

踏まれた大自在天は、のちに仏法を守る天部の一員になったとされます。

軍荼利明王 ─ 五大明王の東と南

どちらも五大明王です。東が降三世、南が軍荼利です。

見分けは足もとと体です。軍荼利明王は蛇を全身に巻きつけます。 降三世明王は蛇を巻かず、二体を踏みます。

腕の数はどちらも八本で、腕だけでは分かれません。

降三世明王についてよくある質問

降三世明王とはどんな仏ですか。

五大明王のうち東方を受け持つ明王です。インドで最高神とされた大自在天とその妃を足もとに踏みつける姿で表されます。

降三世の読み方は。

「ごうざんぜ」です。「ごうさんぜ」と読む例もあります。三世を過去・現在・未来と解く説と、貪り・怒り・愚かさの三毒と解く説があります。

降三世明王はどう見分けますか。

足もとに男女二体を踏みつけ、胸の前で小指を絡めて手の甲を合わせる降三世印を結びます。この印を結ぶ仏はほかにありません。

なぜ大自在天を踏んでいるのですか。

大自在天が仏教に従わなかったため、降三世明王が力ずくで屈服させたという話によります。仏教が先行する神々の上に立つことを示す構図です。

降三世明王の像はどこで見られますか。

京都の東寺講堂と大阪の天野山金剛寺金堂に国宝の像があります。福井の明通寺、滋賀の延暦寺には重要文化財の像があります。

降三世明王と併せて覚えたい言葉・用語

降三世印(ごうざんぜいん)

小指を絡め手の甲を合わせて交差させる印。この明王だけが結ぶ。

大自在天(だいじざいてん)

インドで宇宙の最高神とされた神。降三世明王に踏まれる。

三毒(さんどく)

貪り・怒り・愚かさの三つ。仏教でもっとも根深い煩悩とされる。

立体曼荼羅(りったいまんだら)

曼荼羅を立体の像で表したもの。東寺講堂のものが知られる。