増長天に従う鬼神。人の精気を吸うとされ、馬の頭で描かれることがある。
鳩槃荼とはどんな仏か
鳩槃荼の読み方と梵名
読みは「くはんだ」です。「きゅうはんだ」ではありません。
梵語クンバーンダを音で写した字です。字そのものに意味はありません。
「甕形鬼」という訳し方が伝わり、これが壺のような形という解き方のもとになっています。ただし何が壺に似ているのかについては説が分かれ、決着していません。
鳩槃荼(くはんだ)
もっとも広く使われる形。
鳩槃茶(くはんだ)
末字を「茶」と書く形。
弓槃荼(くはんだ)
古い訳に見える形。
甕形鬼(おうぎょうき)
名を意味で訳したとされる形。
クンバーンダ(Kumbhanda)
意味は「壺のようなもの」。「クンバ」は壺を指す。解き方には諸説がある。読みは「くんばーんだ」。
鳩槃荼の見分け方(印相・持ち物・姿)
姿の決まりがありません。 増長天の脇や足もとに従う鬼として、まとめて表されるにとどまります。
姿 ─ 伝えが分かれる
馬の頭を持つとする伝えと、人の形で腹が大きく張るとする伝えがあります。
どちらも経典や注釈のなかの記述で、日本の像として定着したものはありません。
姿が定まらなかったことが、そのまま像が作られなかった理由になっています。
役目 ─ 増長天に従う
四天王のうち増長天が率いる二種のうちの一つとされます。もう一つは薜茘多、すなわち餓鬼です。
増長天は堂の南を守ります。その配下として、南の方角を固める役を負うことになります。
四天王像の脇に小さく添えられる眷属のなかに含まれると考えられますが、名を記した例はほとんどありません。
恐ろしさと守りの両面
経典では、人の精気を吸う害をなす者として説かれます。
いっぽうで四天王に従い、仏の教えを守る側にも置かれます。害をなす者が帰依して守り手に変わるという筋立ては、夜叉・羅刹にも共通します。
恐ろしいものを追い出すのではなく、味方に付けるという考え方が、この列の底にあります。
鳩槃荼のご利益
眠りを守る
眠る人の精気を吸うとされたことの裏返しによる。
南を守る
増長天に従うとされることによる。
災いを払う
帰依して守る側に回ったという筋立てによる。
鳩槃荼に会える寺
鳩槃荼を安置する堂は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで「鳩槃荼」を引いても、国指定の彫刻は見あたりません。姿の伝えが一定せず、像として彫り起こされなかったためと考えられます。
四天王像のうち増長天のまわりに従う鬼のなかに含まれるとされますが、どれがそれかを判じることはできません。 名だけが経典と図像集に残る尊格です。
鳩槃荼をめぐる仏のつながり
鳩槃荼の位階と、似た仏との違い
鳩槃荼は天部の位に置かれます。増長天に従う下位の鬼神です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。鳩槃荼は天部にあたります。
ただし天部のなかでも下の側で、主ではなく部下です。八部鬼衆の一つとして、増長天の命を受けて働くとされます。
天部は帝釈天のような主から、名だけが残る鬼神まで、幅の広い層でできています。
夜叉 ─ 同じく害と守りの両面を持つ
どちらも害をなす者から守る側に回ったとされます。夜叉は多聞天に従います。
見分けは主です。鳩槃荼は増長天、夜叉は多聞天に属します。 夜叉は像として多く残り、鳩槃荼は残りません。
羅刹天 ─ どちらも鬼神の列
馬頭観音 ─ 馬の頭という点が重なる
鳩槃荼を馬の頭を持つ姿とする伝えがあり、馬頭観音と重ねて語られることがあります。
見分けは容易です。馬頭観音は頭上に馬の頭を戴く菩薩で、忿怒の顔と多くの腕を持ちます。 鳩槃荼は菩薩ではなく、四天王に従う鬼神です。
鳩槃荼についてよくある質問
鳩槃荼とは何ですか。
四天王のうち増長天に従うとされる鬼神です。八部鬼衆の一つに数えられ、眠る人の精気を吸う者として経典に説かれます。
鳩槃荼の読み方は。
「くはんだ」です。梵語クンバーンダを音で写した字で、字そのものに意味はありません。
鳩槃荼はどんな姿ですか。
伝えが分かれています。馬の頭を持つとするもの、人の形で腹が大きく張るとするものがあり、日本で定着した姿はありません。
鳩槃荼の像はありますか。
確かめられませんでした。文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は見あたりません。
なぜ像が作られなかったのですか。
姿の伝えが一定しなかったためと考えられます。彫るための決まりが無い尊格は、日本では像になりませんでした。
鳩槃荼と併せて覚えたい言葉・用語
八部鬼衆(はちぶきしゅう)
四天王が率いるとされる八種の鬼神。
薜茘多(へいれいた)
餓鬼を指す語。鳩槃荼と組で増長天に従う。
増長天(ぞうじょうてん)
四天王の一体。堂の南を守る。
眷属(けんぞく)
主に従って働く者たち。