四方・四隅・上下・日月を分担して守る、十二体の天部。
十二天とはどんな仏か
十二天をひとことで言えば方角の分担表です。世界のあらゆる方角と要素を、十二体で分けて守ります。
顔ぶれは決まっています。東の帝釈天、南の焔摩天、西の水天、北の毘沙門天。東南の火天、南西の羅刹天、西北の風天、東北の伊舎那天。上の梵天、下の地天。そして日天と月天です。
四方に四隅を加えて八方、そこに上下を足して十、さらに太陽と月を加えて十二になります。空間のすべてと、時の移り変わりまでを十二体で覆うという発想です。
密教の灌頂という儀式では、道場の周囲にこの十二天を掛けて場を清めます。
儀式のたびに掛け替えるものなので、日本では立体の像より絵として伝わりました。彫刻はきわめて少なく、国の指定を受けたものも数えるほどです。
十二体のうち帝釈天・梵天・毘沙門天は単独でも広く信仰され、それぞれ独立した像が数多く造られています。
十二天の読み方と梵名
読みは「じゅうにてん」です。
一体の名ではなく、十二体をまとめて呼ぶ名です。四天王・十王・二十八部衆と同じ、組み合わせの名にあたります。
上下と日月を除いた八体を八方天と呼ぶこともあります。四方と四隅だけを守る、より簡略な組み合わせです。
十二天(じゅうにてん)
もっとも広く使われる形。
十二天像(じゅうにてんぞう)
絵や像を指すときの言い方。
八方天(はっぽうてん)
上下と日月を除いた八体を指す。
ドヴァーダシャデーヴァ(Dvadasadeva)
意味は「十二の神」。「ドヴァーダシャ」が十二、「デーヴァ」が神を指す。読みは「どう゛ぁーだしゃでーう゛ぁ」。
十二天の見分け方(印相・持ち物・姿)
十二天の見分けは、どの方角に置かれているかでつきます。一体ずつの目印もありますが、方角がいちばん確かです。
四方 ─ 帝釈天・焔摩天・水天・毘沙門天
東は帝釈天。白い象に乗り、金剛杵を持ちます。
南は焔摩天。水牛に乗り、人の頭を先に付けた杖を持ちます。閻魔王と同じ梵名ですが、姿も役目も違います。
西は水天。亀に乗り、蛇を手に持ちます。北は毘沙門天。甲冑を着け、宝塔を捧げます。
四隅 ─ 火天・羅刹天・風天・伊舎那天
東南は火天。仙人の姿で、髭を長く垂らし、火焔を負います。
南西は羅刹天。甲冑を着け、白い獅子に乗ります。
西北は風天。風をはらんだ袋を持ちます。東北は伊舎那天。三叉戟を持ち、牛に乗ります。大自在天と同体とみる説があります。
上下と日月 ─ 梵天・地天・日天・月天
上は梵天。四つの顔を持ち、鵞鳥に乗ります。下は地天。両手に花を盛った盤を持ちます。
日天は日輪を持ち、馬に乗ります。月天は月輪を持ち、鵞鳥に乗ります。
日天・月天は方角ではなく時を受け持ちます。空間の十体に時の二体を足して十二にする、という組み立てです。
なぜ絵が多いのか
十二天は、日本では絵として伝わりました。彫刻はきわめて少ないものです。
理由は使われ方にあります。灌頂という儀式のたびに道場の周囲へ掛け、終われば片づける。持ち運べることが必要でした。
十二体分の立体の像を用意し、そのつど並べ替えるのは現実的ではありません。用途が形を決めた例です。
十二天のご利益
方角の守り
十二の方角と要素を分担することによる。
道場の清め
灌頂の儀式で場を清めることによる。
厄除け
あらゆる方角から災いを防ぐとされる。
国家安穏
国の大事の修法に用いられたことによる。
十二天に会える寺
十二天の彫刻で、寺が所有する国指定のものは確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで「十二天」を検索すると、重要文化財の木造十二天面が見つかります。梵天・帝釈天・多聞天・風天・日天・火天・自在天の七面です。しかしその所有者は独立行政法人国立文化財機構で、寺ではありません。 そのためこの欄には入れていません。
十二天に会いたければ、絵を訪ねることになります。真言宗と天台宗の寺には、灌頂に用いる十二天の図が伝わることがあります。
なお十二体のうち帝釈天・梵天・毘沙門天は単独でも広く信仰され、それぞれ独立した像が数多くあります。十二天としてではなく、一体ずつなら会える機会はずっと多いといえます。
十二天をめぐる仏のつながり
十二天の位階と、似た仏との違い
十二天は天部の組み合わせです。十二体すべてが天部にあたります。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。十二天は天部だけを十二体そろえた組み合わせです。
顔ぶれには、単独でも広く信仰される尊格が含まれます。帝釈天・梵天・毘沙門天がそれです。
大きな尊格と小さな尊格が同じ列に並ぶのが、この組み合わせの特徴です。方角を埋めるという目的が先にあり、そこへ既存の天部を当てはめた結果だと考えられます。
四天王 ─ 方角を守る組み合わせどうし
どちらも方角を守ります。四天王は四方、十二天は十二の方角と要素を受け持ちます。
顔ぶれも重なります。四天王の多聞天は、十二天では毘沙門天として北を守ります。
姿の統一感も違います。四天王は四体すべてが甲冑を着けた武神です。十二天は仙人あり、女神あり、乗り物もばらばらです。
閻魔 ─ 焔摩天と紛れる
十二天の南方は焔摩天です。閻魔王と梵名が同じヤマですが、別の尊格として扱われます。
見分けは装いと乗り物です。焔摩天は水牛に乗り、人の頭を先に付けた杖を持ちます。 閻魔王は中国の官服をまとい、笏を持ちます。
京都の醍醐寺の木造閻魔天像は、十二天の焔摩天にあたります。
五大明王 ─ 組み合わせの位階が違う
どちらも複数体で一組をなします。十二天は天部、五大明王は明王です。
数も違い、十二体と五体で分かれます。
姿も違います。五大明王は全員が忿怒の相をとります。十二天には穏やかな顔の者も、仙人の姿の者もいます。
十二天についてよくある質問
十二天とは何ですか。
世界のあらゆる方角と要素を分担して守る十二体の天部です。四方・四隅・上下に日天と月天を加えた組み合わせです。
十二天の顔ぶれは。
東の帝釈天、南の焔摩天、西の水天、北の毘沙門天、東南の火天、南西の羅刹天、西北の風天、東北の伊舎那天、上の梵天、下の地天、日天、月天です。
なぜ彫刻が少ないのですか。
灌頂という儀式のたびに掛け替えるものだったためです。持ち運べる絵のほうが用途に合っており、立体の像はほとんど造られませんでした。
十二天の像はどこで見られますか。
寺が所有する国指定の彫刻は確かめられませんでした。重要文化財の木造十二天面がありますが、所有者は博物館です。絵としては真言宗や天台宗の寺に伝わります。
四天王と十二天は違いますか。
数と範囲が違います。四天王は四方だけ、十二天は四方に四隅・上下・日月を加えた十二を守ります。四天王の多聞天は、十二天では毘沙門天として北を守ります。
十二天と併せて覚えたい言葉・用語
灌頂(かんじょう)
頭に水を注いで教えを授ける密教の儀式。十二天を道場に掛ける。
焔摩天(えんまてん)
十二天の南方。閻魔王と梵名が同じだが別の尊格。
伊舎那天(いしゃなてん)
十二天の東北。大自在天と同体とみる説がある。
八方天(はっぽうてん)
上下と日月を除いた八体の組み合わせ。