八大竜王の筆頭。弟の跋難陀と兄弟で、二躯そろって伝わる。
難陀竜王とはどんな仏か
難陀竜王をひとことで言えば竜王の筆頭です。水をつかさどる八大竜王のうち、最初に名を挙げられます。
大きな特徴は兄弟であることです。弟の跋難陀竜王と必ず対で語られ、二体そろって釈迦の誕生に立ち会い、水を注いだと伝えられます。難陀・跋難陀と一続きに呼ばれることも多くあります。
大阪の孝恩寺には、木造難陀竜王立像と木造跋難陀竜王立像が、それぞれ一躯ずつ重要文化財に指定されて伝わります。 兄弟の竜王が二躯そろって残る、数少ない例です。
姿は唐風の衣をまとった人の形で、頭の上に竜の頭をいただきます。手は合掌するか、宝珠や剣を持ちます。
難陀竜王の読み方と梵名
読みは「なんだりゅうおう」です。
「難陀」は梵語で喜びを意味する語を音で写したものです。弟の「跋難陀」は、その頭に「大いなる」を付けた形にあたります。
兄弟の名が「喜び」と「大いなる喜び」で対になっている点が、この二体の関係を表しています。 竜王を数えるときも、この二体はいつも並べて挙げられます。
難陀竜王(なんだりゅうおう)
もっとも広く使われる形。
難陀龍王(なんだりゅうおう)
旧字を用いた形。
難陀跋難陀(なんだばつなんだ)
兄弟をひと続きに呼ぶ形。
歓喜竜王(かんぎりゅうおう)
名を意味で訳した形。
ナンダ(Nanda)
意味は「歓喜」。弟の跋難陀は「大いなる歓喜」にあたる。読みは「なんだ」。
難陀竜王の見分け方(印相・持ち物・姿)
頭の上にいただいた竜の頭が決め手です。体は人の形で、竜そのものの姿にはなりません。
頭 ─ 竜をいただく
頭上に一頭から数頭の竜の頭を戴きます。この竜が本体で、人の姿は仮の形という考え方によります。
竜の数は像によって違い、一頭のものから五頭・七頭のものまであります。
頭上の竜を確かめれば、竜王の像であることはすぐに判じられます。
身なり ─ 唐風の衣
兄弟 ─ 二躯で一組
難陀と跋難陀は対で作られます。一方だけが残ることが多く、二躯そろう例は限られます。
大阪の孝恩寺には、二躯がそれぞれ別件で重要文化財に指定されて伝わります。
見分けは像に添えられた名によります。姿だけで兄と弟を分ける決まった目印はありません。
水との結びつき
竜王は雨をつかさどるとされ、日照りのときに雨を願う法の本尊とされました。
釈迦が生まれたとき、難陀と跋難陀が水を注いだという伝えは、灌仏会に誕生仏へ甘茶を注ぐ習わしと結びつけて語られます。
春の花まつりで小さな釈迦に水を注ぐとき、その水を注いだのがこの兄弟だとされています。
難陀竜王のご利益
雨を願う
竜王が雨をつかさどるとされることによる。
水の災いを防ぐ
水をつかさどる尊格であることによる。
兄弟の和
難陀と跋難陀が対で語られることによる。
難陀竜王に会える寺
難陀竜王の像は、大阪の孝恩寺で確かめられました。弟の跋難陀竜王とそろって重要文化財に指定されています。
ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。
兄弟の竜王が二躯そろって残る例は多くありません。 八大竜王をまとめて祀る堂は各地にありますが、難陀だけを本尊とする堂は確かめられませんでした。
孝恩寺(こうおんじ)
重要文化財
難陀竜王の名を持つ、数少ない国指定の彫刻です。
文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が孝恩寺、所在都道府県が大阪府であることを確かめました。
同じ寺に木造跋難陀竜王立像も伝わり、兄弟が二躯そろっています。 拝観の可否は寺の案内で確かめてください。
兄弟の像が同じ寺に伝わる。
孝恩寺(こうおんじ)
重要文化財
孝恩寺の住所:大阪府(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造跋難陀竜王立像 一躯/重要文化財
この像に結び付く願い:兄弟の和
弟の跋難陀竜王です。兄の難陀竜王とは別件で指定されています。
文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が孝恩寺、所在都道府県が大阪府であることを確かめました。
二躯が同じ寺に伝わることで、兄弟として作られたことが確かめられます。
兄の像と別件で指定されている。
難陀竜王をめぐる仏のつながり
難陀竜王の位階と、似た仏との違い
難陀竜王は天部の位に置かれます。八大竜王の筆頭です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。難陀竜王は天部にあたります。
天部のなかでは水をつかさどる組に入ります。八大竜王・善女竜王・水天などと同じ列です。
八大竜王を数えるとき、難陀・跋難陀の兄弟が必ず最初に挙げられます。
八大竜王 ─ 難陀を筆頭とする群れ
八大竜王は難陀・跋難陀を含む八体の竜王をまとめた呼び方です。
難陀竜王は、その八体の筆頭にあたる一体です。八体そろった像として作られる場合と、難陀だけが単独で作られる場合があります。
善女竜王 ─ 同じ竜王
どちらも竜王です。善女竜王は雨を願う法の本尊として知られ、奈良の法隆寺に重要文化財の像が伝わります。
見分けは姿です。善女竜王は女性の姿に作られることが多く、難陀竜王は男性の姿です。
難陀竜王についてよくある質問
難陀竜王とはどんな仏ですか。
水と雨をつかさどるとされる竜王で、八大竜王の筆頭に置かれます。弟の跋難陀竜王と兄弟で、いつも対で語られます。
難陀と跋難陀はどう違いますか。
兄弟です。名は「喜び」と「大いなる喜び」で対になっています。姿だけで見分ける決まった目印はなく、像に添えられた名で判じます。
難陀竜王はどう見分けますか。
頭の上に竜の頭をいただきます。体は人の形で、唐風の衣をまとうか甲を着け、穏やかな顔に彫られることが多くあります。
難陀竜王の像はどこで見られますか。
大阪の孝恩寺に木造難陀竜王立像が重要文化財として伝わります。同じ寺に弟の木造跋難陀竜王立像もあります。
なぜ釈迦の誕生と結びつくのですか。
釈迦が生まれたとき、難陀と跋難陀が水を注いだと伝えられるためです。灌仏会に誕生仏へ甘茶を注ぐ習わしと結びつけて語られます。
難陀竜王と併せて覚えたい言葉・用語
八大竜王(はちだいりゅうおう)
経典に説かれる八体の竜王。難陀が筆頭。
跋難陀(ばつなんだ)
難陀の弟にあたる竜王。
灌仏会(かんぶつえ)
釈迦の誕生を祝い、誕生仏に甘茶を注ぐ行事。
請雨法(しょうういほう)
雨を願って行う修法。竜王を本尊とする。