四天王に従う八種の鬼神。名の似た八部衆とは別のもの。
八部鬼衆とはどんな仏か
八部鬼衆の読み方と梵名
読みは「はちぶきしゅう」です。「衆」は群れを指します。
「鬼」は日本語の角の生えた鬼ではなく、人の目に見えない者を広く指す語です。
混同を避ける決め手は「鬼」の一字です。「八部衆」に鬼の字は入りません。 名に鬼があれば四天王の部下、なければ釈迦の教えを聞く者の列と覚えると取り違えません。
八部鬼衆(はちぶきしゅう)
もっとも広く使われる形。
八部鬼神(はちぶきじん)
鬼神の語を用いた形。
四天王眷属(してんのうけんぞく)
従う相手から呼んだ形。
八部鬼衆の見分け方(印相・持ち物・姿)
まとまった像がありません。四天王の足もとと脇を見るのが、姿に出会う唯一の道です。
顔ぶれ ─ 四天王が二種ずつ
持国天が乾闥婆と毘舎闍、増長天が鳩槃荼と薜茘多、広目天が竜と富単那、多聞天が夜叉と羅刹を率いるとされます。
毘舎闍は人の精気を食う者、薜茘多は餓鬼、富単那は熱病をもたらす者と説かれます。
八種のうち五種までが、日本では単独の像を持ちません。
姿 ─ 邪鬼として残る
四天王像の台座で踏まれている小さな鬼を邪鬼といいます。
この邪鬼を八部鬼衆の一つと見る解き方があります。踏まれているのは敵ではなく、従えられた部下だという読み方です。
ただし、邪鬼の名を記した像はほとんどなく、どの鬼神かを特定することはできません。
八部鬼衆のご利益
住まいを守る
四天王とともに四方を守るとされることによる。
災いを払う
仏の教えに従って害をなさなくなったという筋立てによる。
病を退ける
富単那が熱病をもたらす者とされることによる。
八部鬼衆に会える寺
八部鬼衆をまとめて安置する堂は、確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースで「八部鬼衆」を引いても、国指定の彫刻は見あたりません。名を挙げた経典はあっても、像として作られなかったためです。
会いたい場合は、四天王像の足もとに踏まれた邪鬼と、四天王の脇に小さく添えられた眷属を見るほかありません。 ただし、どの鬼神にあたるかを像から判じることはできません。
八部鬼衆をめぐる仏のつながり
八部鬼衆の位階と、似た仏との違い
八部鬼衆は天部の位に置かれます。四天王に従う下位の群れです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。八部鬼衆は天部にあたります。
ただし天部のなかでも下の側です。帝釈天や四天王のような主ではなく、その命を受けて働く者たちです。
四天王の像を見るとき、そのまわりに従う者がいると知っておくと、堂の見え方が変わります。
八部衆 ─ 名が似ているが別のもの
四天王 ─ 率いる側と従う側
四天王は八部鬼衆を率いる主です。
見分けは容易です。四天王は甲を着け、武器を持ち、邪鬼を踏んで堂の四隅に立ちます。 八部鬼衆は像として立つことがありません。
二十八部衆 ─ どちらも群れの名
どちらも数をまとめた呼び方です。
見分けは主と数です。二十八部衆は千手観音に従う二十八体で、像がそろって伝わります。八部鬼衆は四天王に従う八種で、像がありません。
八部鬼衆についてよくある質問
八部鬼衆とは何ですか。
四天王がそれぞれ二種ずつ率いるとされる、八種の鬼神をまとめた呼び方です。四天王の部下にあたります。
八部衆とは違うのですか。
別のものです。八部衆は釈迦の教えを聞く者の列で、阿修羅や迦楼羅を含みます。八部鬼衆は四天王に属し、毘舎闍・薜茘多・富単那などを含みます。重なるのは乾闥婆・夜叉・竜の三つだけです。
八部鬼衆の像はありますか。
まとまった像は確かめられませんでした。文化庁の国指定文化財等データベースでも、この名を持つ国指定の彫刻は見あたりません。
なぜ像が作られなかったのですか。
経典に名が挙げられるだけで、姿が細かく説かれなかったためと考えられます。姿の決まりが無ければ像を彫ることができません。
四天王が踏む鬼が八部鬼衆ですか。
そう読む説がありますが、名を記した像はほとんどなく、どの鬼神にあたるかを特定することはできません。
八部鬼衆と併せて覚えたい言葉・用語
邪鬼(じゃき)
四天王が足の下に踏む小さな鬼。
毘舎闍(びしゃじゃ)
人の精気を食うとされる鬼神。
薜茘多(へいれいた)
餓鬼を指す語を音で写したもの。
富単那(ふたんな)
熱病をもたらすとされる鬼神。