この世にとどまって法を守り続ける、十六人の弟子。
十六羅漢とはどんな仏か
十六羅漢をひとことで言えば居残った弟子たちです。
釈迦の弟子のうち、悟りを開きながらこの世を去らず、弥勒が現れるまで法を守り続けると誓った十六人を指します。賓頭盧・迦諾迦伐蹉ら十六人の名が経典に挙がります。
この組み合わせの決定的な点は、仏でも菩薩でもなく人間であることです。
そのため像も人として造られます。皺の寄った顔、痩せた体、垂れた眉、抜けた歯。理想の姿を彫る仏像のなかで、羅漢像だけが老いと個性をそのまま彫ります。
一体ずつ顔がまったく違うのが決まりです。眠っている者、笑っている者、経を読む者、獣を連れた者。同じ顔がひとつも無いことが、この組み合わせの見どころになります。
十六人のうち賓頭盧は、堂の外や縁に置かれます。撫でると病が治るとされ、「おびんずるさん」の名で親しまれました。
京都の知恩院の三門には、重要文化財の十六羅漢坐像が伝わります。
十六羅漢の読み方と梵名
読みは「じゅうろくらかん」です。
「羅漢」は阿羅漢の略で、梵名アルハットの音を漢字に写したものです。「供養を受けるにふさわしい者」という意味で、悟りに達した修行者を指します。
一人ずつを指すときも「羅漢」と呼びます。賓頭盧尊者を「おびんずるさん」と呼ぶように、名を親しみやすく呼ぶ習わしもあります。
五百人に増やしたものを五百羅漢といいます。
十六羅漢(じゅうろくらかん)
もっとも広く使われる形。
十六大阿羅漢(じゅうろくだいあらかん)
正式な形。
羅漢(らかん)
略した形。一人ずつを指すこともある。
阿羅漢(あらかん)
梵名の音を漢字に写した形。
五百羅漢(ごひゃくらかん)
五百人に増やした別の組み合わせ。
アルハット(Arhat)
意味は「供養を受けるにふさわしいもの」。「阿羅漢」はこの音を漢字に写したもの。読みは「あるはっと」。
十六羅漢の見分け方(印相・持ち物・姿)
十六羅漢の見分けは、人間として彫られていることにあります。仏像らしくないことが、そのまま目印になります。
顔 ─ 一体ずつまったく違う
十六人の顔が、一体ずつまったく違います。
皺の深い者、頬のこけた者、眉の垂れた者、歯の抜けた者。眠っている者もいれば、笑っている者もいます。
理想の姿を彫る仏像のなかで、羅漢像だけが老いと個性をそのまま彫ります。 同じ顔がひとつも無いことが、この組み合わせの見どころです。
装い ─ 僧の衣
僧の衣をまといます。宝冠も瓔珞も着けません。甲冑も着けません。
人間なので、当然といえば当然です。しかし堂に並ぶ像のなかで、これだけ地味な装いは目を引きます。
装身具の有無で位階を見分けるという原則からすると、羅漢はいちばん下に置かれることになります。
持ち物 ─ 経巻・払子・獣
持ち物は一人ずつ違います。経巻、払子、杖、鉢などです。
獣を連れる者もいます。虎、龍、鹿など、その羅漢にまつわる話にちなんだ動物です。
動物を連れた僧の像があれば、まず羅漢と考えてよいでしょう。
賓頭盧 ─ 堂の外に置かれる
十六人のうち賓頭盧は、堂の外や縁に置かれます。
神通力をみだりに使ったため釈迦に叱られ、堂の中に入れてもらえないという話によります。
撫でると病が治るとされ、「おびんずるさん」の名で親しまれました。撫でられ続けて顔かたちがすり減った像も各地にあります。 触れてよい仏像は、この賓頭盧くらいしかありません。
十六羅漢のご利益
病気平癒
賓頭盧を撫でると病が治るとされる。
長寿
この世にとどまり続ける誓いによる。
学業成就
悟りに達した修行者であることによる。
先祖供養
羅漢のなかに亡き人の顔があるという言い伝えによる。
十六羅漢に会える寺
十六羅漢は、禅宗と浄土宗の寺にまとまって残ります。三門の楼上や羅漢堂に安置されるのが決まりです。
ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。
なお「羅漢堂」「五百羅漢」の名を持つ寺は各地にあります。 国の指定を受けていなくても、羅漢像を数多く持つ寺は少なくありません。顔が一体ずつ違うことを確かめるには、数の多い場所を訪ねるのがよいでしょう。
知恩院 三門(ちおんいん さんもん)
重要文化財
三門の楼上に、釈迦如来と両脇侍、そして十六羅漢が安置されています。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、これらがひとまとまりで重要文化財に登録され、所有者は知恩院と記されています。
門の楼上に十六羅漢を置くという形は、禅宗の寺で広く行われました。 三門の楼上は普段公開されず、特別公開の折に拝観できます。
同じ寺には重要文化財の木造勢至菩薩坐像もある。所在地は公式サイトで確かめた。
羅漢寺(らかんじ)
重要文化財
羅漢寺の住所:大分県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:羅漢寺石仏(石造釈迦如来及両脇侍坐像・石造五百羅漢像ほか)/重要文化財
この像に結び付く願い:先祖供養
石で造られた五百羅漢が、岩窟に並びます。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が羅漢寺と記されています。名称に「石造五百羅漢像」と記されています。
十六羅漢ではなく五百羅漢ですが、羅漢像が一体ずつ違う顔で彫られることを、これほどの数で確かめられる場所はほかにありません。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
十六羅漢をめぐる仏のつながり
十六羅漢の位階と、似た仏との違い
十六羅漢は天部の枠に置かれます。ただし本来は人間で、位階の外にあります。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。十六羅漢はこのどれにも当てはまりません。
釈迦の弟子である人間であり、神でも仏でもありません。悟りには達していますが、如来にも菩薩にもなっていません。
布袋 ─ 人間を彫るという点で共通
どちらも人間を像にしたものです。仏でも菩薩でもありません。
そのため、どちらも老いや体つきをありのままに彫ります。皺、たるみ、痩せ。
十六羅漢は釈迦の弟子、布袋は唐の僧という違いがあります。どちらも理想ではなく実際の体を彫るという系統に属します。
善財童子 ─ 位階の外にいる者どうし
釈迦如来 ─ 師と弟子
十六羅漢は釈迦の弟子です。師と弟子の関係にあたります。
そのため、三門や羅漢堂では中央に釈迦如来を置き、その左右に十六羅漢を並べるのが決まりです。
見分けは容易です。釈迦如来は螺髪をいただき蓮華座に座ります。羅漢は普通の髪か剃髪で、椅子や岩に座ります。
十六羅漢についてよくある質問
十六羅漢とは何ですか。
釈迦の弟子のうち、悟りを開きながらこの世を去らず、弥勒が現れるまで法を守り続けると誓った十六人です。
羅漢はどう見分けますか。
僧の衣をまとった人間の姿で、宝冠も瓔珞も着けません。顔が一体ずつまったく違い、皺やたるみをそのまま彫るのが決まりです。
おびんずるさんとは何ですか。
十六羅漢のひとり、賓頭盧尊者のことです。堂の外や縁に置かれ、撫でると病が治るとされます。触れてよい仏像はこの賓頭盧くらいしかありません。
十六羅漢と五百羅漢はどう違いますか。
数が違います。十六羅漢は経典に名が挙がる十六人、五百羅漢は五百人に増やした別の組み合わせです。どちらも顔が一体ずつ違うのが決まりです。
十六羅漢の像はどこで見られますか。
京都の知恩院の三門に重要文化財の十六羅漢坐像があります。大分の羅漢寺には石造の五百羅漢が重要文化財として岩窟に並びます。
十六羅漢と併せて覚えたい言葉・用語
阿羅漢(あらかん)
悟りに達した修行者。羅漢はその略。
賓頭盧(びんずる)
十六羅漢のひとり。堂の外に置かれ、撫でると病が治るとされる。
五百羅漢(ごひゃくらかん)
五百人に増やした羅漢の組み合わせ。
三門(さんもん)
寺の正門。楼上に釈迦如来と十六羅漢を安置することがある。
払子(ほっす)
獣の毛を束ねた道具。僧が手に持つ。