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天部

十羅刹女(じゅうらせつにょ)とはどんな仏か|見分け方とご利益

十羅刹女  / ジュウラセツニョ

守護 インド由来

法華経を守ると誓った、十人の女性の鬼神。

十羅刹女とはどんな仏か

十羅刹女をひとことで言えば法華経の女性の守り手です。

法華経の陀羅尼品という章に、その場面が語られます。鬼子母神とともに釈迦の前に現れ、「法華経を持つ者を守ります」と誓いを立てました。

顔ぶれは十人です。藍婆・毘藍婆・曲歯・華歯・黒歯・多髪・無厭足・持瓔珞・皋帝・奪一切衆生精気。

名を見ると、その出自がわかります。 「曲歯」「黒歯」は歯の異様さを、「無厭足」は飽くことのない食欲を、「奪一切衆生精気」はあらゆる生き物の精気を奪うことを指します。もとは人を害する羅刹の一族でした。

しかし像の姿には、鬼らしいところがほとんど残りません。唐の貴婦人の衣をまとった女性として表されます。名だけが、かつての一族を伝えています。

日蓮宗では鬼子母神とともに祀られます。彫刻より絵として伝わることが多く、富山には鬼子母神とともに描いた重要文化財の絵があります。

十羅刹女の読み方と梵名

読みは「じゅうらせつにょ」です。「じゅうらせつじょ」と読む例もあります。

「羅刹」は梵語ラークシャサの音を漢字に写したもので、人を襲う鬼神の一族を指します。その女性形が羅刹女です。

十人の名は、藍婆・毘藍婆・曲歯・華歯・黒歯・多髪・無厭足・持瓔珞・皋帝・奪一切衆生精気です。名の意味を追うと、この一族がもと何であったかがわかります。

十羅刹女(じゅうらせつにょ)

もっとも広く使われる形。

十羅刹(じゅうらせつ)

略した形。

じゅうらせつじょ(じゅうらせつじょ)

「じょ」と読む例もある。

鬼子母神十羅刹女(きしもじんじゅうらせつにょ)

鬼子母神と並べた呼び方。

ラークシャシー(Raksasi)

意味は「女の羅刹」。「ラークシャサ」の女性形。読みは「らーくしゃしー」。

十羅刹女の見分け方(印相・持ち物・姿)

十羅刹女の見分けは、十体そろっているかと、鬼子母神が中央にいるかにあります。個々の見分けはきわめて難しいものです。

数 ─ 十体そろう

十体で一組をなします。

鬼子母神を中央に置き、その左右に五体ずつ並ぶ形が基本です。

十人の女性が並んでいれば、まず十羅刹女です。 女性の姿の尊格が十体そろう組み合わせは、ほかにありません。

姿 ─ 唐の貴婦人

唐の貴婦人の衣をまとった女性の姿で表されます。

髪を高く結い上げ、ゆったりとした衣を重ね、笏や花を手にします。

もとは人を害する羅刹だったにもかかわらず、鬼らしいところがほとんど残りません。 中国を経て日本へ伝わる過程で、姿が貴婦人に置き換えられました。

名に残る鬼の面影

姿に鬼の面影は残りませんが、名には残ります。

「曲歯」は歯が曲がっていること、「黒歯」は歯が黒いこと、「多髪」は髪が多いことを指します。

「無厭足」は飽くことのない食欲、「奪一切衆生精気」はあらゆる生き物の精気を奪うことを指します。これらの名が、この十人がかつて何であったかを伝えています。

鬼子母神との組み合わせ

鬼子母神とともに祀られるのが決まりです。

法華経の陀羅尼品で、二つがともに守りを誓う場面が説かれるためです。

日蓮宗の寺では、鬼子母神を中央に、十羅刹女をその左右に配します。一体と十体という数の違いが、そのまま中央と両脇の配置になります。

十羅刹女のご利益

法華経の守り

陀羅尼品での誓いによる。

厄除け

もと鬼神であった力にちなむ。

子どもの守り

鬼子母神とともに祀られることによる。

女性の守り

十体すべてが女性であることによる。

十羅刹女に会える寺

十羅刹女の名で登録された国指定の彫刻は確かめられませんでした。

文化庁の国指定文化財等データベースで「十羅刹女」を検索すると、絵画が見つかります。東京には「絹本著色普賢十羅刹女像」、富山には「紙本著色鬼子母神十羅刹女像」の重要文化財があります。いずれも彫刻ではありません。

十羅刹女は、彫刻より絵として伝わった尊格です。日蓮宗の寺では、鬼子母神とともに掛け軸に描かれた形で祀られることが多くあります。

ここに挙げたのは、所有者が寺であることを確かめられたもののうち、十羅刹女を含む可能性のある一件です。内訳を確かめられなかったことも書き添えておきます。

本山慈恩寺(ほんざんじおんじ)

重要文化財

地図で開く

本山慈恩寺の住所:山形県(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)

像:木造釈迦如来及諸尊像 十躯/重要文化財

この像に結び付く願い:法華経の守り

文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が本山慈恩寺と記されています。

「羅刹」の語で検索したときに現れる一件です。ただし十躯のうちに十羅刹女が含まれるかどうかは、名称からは確かめられませんでした。

そのつもりで訪ねる場合は、あらかじめ寺に確かめるのが確実です。

所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。像の内訳は確かめられなかった。

十羅刹女をめぐる仏のつながり

十羅刹女の位階と、似た仏との違い

十羅刹女は天部の組み合わせです。十体すべてが女性の鬼神にあたります。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。十羅刹女は天部です。

天部のなかでは、もと悪しき者が転じた組に入ります。夜叉・阿修羅・鬼子母神と同じ来歴です。

十体すべてが女性という組み合わせは、日本の仏像でほかにありません。 四天王・十二神将・八部衆はいずれも男性が主です。

鬼子母神 ─ ともに法華経を守る

法華経の陀羅尼品で、鬼子母神と十羅刹女はともに行者を守ると誓います。組で祀られる関係です。

見分けは数です。鬼子母神は一体、十羅刹女は十体です。

配置も決まっています。鬼子母神を中央に、十羅刹女がその左右に並びます。

羅刹天 ─ 同じ一族から出た

どちらも羅刹の一族です。羅刹天が男性、十羅刹女が女性にあたります。

役目が違います。羅刹天は十二天として南西を守り、十羅刹女は法華経の行者を守ります。

羅刹天は甲冑を着けた武将の姿、十羅刹女は唐の貴婦人の姿です。

吉祥天 ─ 女性の姿の天部どうし

どちらも唐の貴婦人の衣をまとった女性の姿です。

見分けは数と持ち物です。吉祥天は一体で、如意宝珠を捧げます。 十羅刹女は十体そろい、笏や花を手にします。

吉祥天はもとインドの富の女神、十羅刹女はもと人を害する鬼神という違いがあります。

十羅刹女についてよくある質問

十羅刹女とは何ですか。

法華経の陀羅尼品で、法華経を持つ者を守ると誓った十人の女性の鬼神です。鬼子母神とともに現れます。

十羅刹女の名前は。

藍婆・毘藍婆・曲歯・華歯・黒歯・多髪・無厭足・持瓔珞・皋帝・奪一切衆生精気の十人です。

十羅刹女はどう見分けますか。

唐の貴婦人の衣をまとった女性が十体そろいます。中央に鬼子母神が置かれるのが決まりです。

なぜ鬼らしくないのですか。

もとは人を害する羅刹でしたが、中国を経て日本へ伝わる過程で姿が貴婦人に置き換えられました。名にだけ、かつての一族の面影が残ります。

十羅刹女の像はどこで見られますか。

この名で登録された国指定の彫刻は確かめられませんでした。東京と富山に重要文化財の絵があります。日蓮宗の寺では掛け軸として祀られることが多くあります。

十羅刹女と併せて覚えたい言葉・用語

陀羅尼品(だらにほん)

法華経の章のひとつ。鬼子母神と十羅刹女が守りを誓う。

羅刹女(らせつにょ)

女性の羅刹。人を害する鬼神の一族。

無厭足(むえんぞく)

十羅刹女のひとり。飽くことのない食欲を名とする。

奪一切衆生精気(だついっさいしゅじょうしょうけ)

十羅刹女のひとり。あらゆる生き物の精気を奪う名を持つ。