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天部

水天(すいてん)|十二天の西方とはどんな仏か|見分け方・ご利益

水天  / スイテン

守護 密教

十二天の一員として西を守る尊格。亀に乗り、水をつかさどる。

水天とはどんな仏か

水天をひとことで言えば十二天の西方担当です。水そのものを受け持ちます。

梵名をヴァルナといいます。インドではきわめて古い尊格で、水だけでなく、誓いを守らせ、偽りを裁く役も負っていました。仏教に取り入れられるとき、水の性格が前に出ます。

姿は水にちなむものでそろいます。亀の上に立つか座り、手に剣と羂索、あるいは蛇を持ちます。 頭の上や背に竜の頭を並べる作例もあります。

水難を除き、雨を求める祈りの相手とされてきました。田に水を引くことが暮らしの根だった時代、雨乞いの修法で名の呼ばれる回数がもっとも多い尊格のひとつでした。

水天の読み方と梵名

読みは「すいてん」です。

「水天」は梵名ヴァルナを意味で訳した形で、音で写した形が「婆楼那」です。同じ尊格に、意味の訳と音の訳が両方あります。

「水神」という呼び方もされますが、この語は水にまつわるさまざまな対象を広く指すため、十二天の水天だけを指す言葉ではありません。

水天(すいてん)

もっとも広く使われる形。

水天尊(すいてんそん)

敬って呼ぶ形。

婆楼那(ばるな)

梵名の音を漢字に写した形。

水神(すいじん)

性格で呼んだ形。厳密には同じではない。

ヴァルナ(Varuna)

意味は「覆うもの」。インドできわめて古い尊格。水と誓いをつかさどった。読みは「う゛ぁるな」。

水天の見分け方(印相・持ち物・姿)

亀に乗るのが決め手です。十二天で亀に乗るのはこの一体だけです。

乗り物 ─ 亀

亀の上に立つか、亀の背に座ります。 水にすむ生き物を踏まえる形です。

十二天は乗り物で見分けられます。焔摩天は水牛、帝釈天は白象、日天は馬。亀を探せば西方の水天だと分かります。

作例によっては亀を省き、水波の上に立つ形で描かれることもあります。

持ち物 ─ 剣と羂索、あるいは蛇

右手に剣、左手に羂索という縄を持つ形が多く見られます。羂索は罪ある者を縛る道具です。

蛇をそのまま手に持つ形もあります。蛇は水にすむものとされ、竜と重ねて考えられてきました。

誓いを破った者を縛るという古い性格が、この持ち物に残っています。

頭 ─ 竜の頭を並べる

頭の上や背に、小さな竜の頭を並べる作例があります。数は五つ、七つ、九つとまちまちです。

竜は水をつかさどるものとされ、水天と結びつけられました。

竜の頭が並んでいれば、竜王か水天のどちらかです。 亀に乗っていれば水天、竜の体そのものなら竜王です。

水天のご利益

水難除け

水をつかさどるとされることによる。

雨乞い

雨を求める修法の相手とされたことによる。

西方の守り

十二天のうち西を受け持つことによる。

偽りを断つ

誓いを守らせる古い性格による。

水天に会える寺

水天の像を安置する寺は確かめられませんでした。

文化庁の国指定文化財等データベースには、重要文化財の絹本著色水天像が滋賀県の一件として登録されています。ただしこれは絵であって、彫刻ではありません。 所有者も確かめられませんでした。

十二天そのものも、絵として伝わるのが常です。国宝の絹本著色十二天像が奈良の西大寺と京都の東寺(教王護国寺)に伝わり、その一幅として水天が描かれます。国立文化財機構が持つ十二天像もありますが、そちらは博物館の所蔵で、会えるのは展示に出ているときだけです。

なお、国立文化財機構が持つ木造十二天面七面には、水天の面は含まれていません。

水天をめぐる仏のつながり

水天の位階と、似た仏との違い

水天は天部の位に置かれます。十二天の一員として西方を受け持ちます。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。水天は天部です。

天部のなかでは、インドの古い尊格がそのまま仏を守る役に移された典型にあたります。ヴァルナはインドでかつて最高の位にあったとされますが、仏教に入ってからは十二天の一員という持ち場に落ち着きました。

八大竜王 ─ どちらも水をつかさどる

どちらも水と雨に関わります。竜王は竜そのもの、水天は人の姿です。

見分けは体と乗り物です。竜王は頭上に竜を戴くか蛇身で表され、水天は亀に乗ります。

雨乞いの修法では、どちらも本尊になります。

弁才天 ─ 水にまつわる尊格どうし

どちらも水と関わります。弁才天はもと川そのものを指す名で、日本では琵琶を抱く姿が広まりました。

見分けは持ち物です。弁才天は琵琶を抱くか八本の腕に武具を持ち、水天は剣と羂索を持って亀に乗ります。

弁才天の像は全国にありますが、水天の彫刻はきわめてまれです。

十二天 ─ 組と、その一員

水天は十二天の一員です。東の帝釈天、南の焔摩天、北の毘沙門天と並んで、西を受け持ちます。

十二天として掛けるときは十二体そろって意味を持ちます。水天だけを本尊とする修法もあり、そのときは一体で扱われます。

水天についてよくある質問

水天はどう見分けますか。

亀に乗るのが決め手です。手に剣と羂索、あるいは蛇を持ち、頭上に竜の頭を並べる作例もあります。

水天の像はどこで見られますか。

文化庁の国指定文化財等データベースで、水天の彫刻は確かめられませんでした。滋賀県に重要文化財の絹本著色水天像がありますが、これは絵です。

水天と竜王はどう違いますか。

どちらも水をつかさどりますが、竜王は竜そのもの、水天は亀に乗る人の姿です。

水天に祈ると何を願うのですか。

水難を除くこと、雨を得ることです。誓いを守らせる古い性格から、偽りを断つ願いにも結びつけられます。

「水神」と呼んでよいですか。

性格を言い表す語としては使われますが、水にまつわる対象を広く指す言葉なので、十二天の水天だけを指すわけではありません。

水天と併せて覚えたい言葉・用語

羂索(けんさく)

五色の糸をより合わせた縄。捕らえ、救い取る道具。

絹本著色(けんぽんちゃくしょく)

絹に描いて彩色した絵。文化財の名称に使われる語。

請雨経法(しょううきょうほう)

雨を求めて行う密教の修法。