十二天の一員として太陽をつかさどる尊格。日輪を捧げ、馬に乗る。
日天とはどんな仏か
日天の読み方と梵名
読みは「にってん」です。経典では「日天子」の形がよく使われます。
「子」は御子の意味で、天に属する者であることを示します。月天も同じように「月天子」と呼ばれます。
「日天」と「日天子」は同じものを指します。 文化財や図像の名称では、どちらの形も使われます。
日天(にってん)
もっとも広く使われる形。
日天子(にってんし)
経典に見える形。
日天王(にってんのう)
敬って呼ぶ形。
蘇利耶(すりや)
梵名の音を漢字に写した形。
スーリヤ(Surya)
意味は「太陽」。インドで太陽そのものとされた古い尊格。読みは「すーりや」。
日天の見分け方(印相・持ち物・姿)
日輪を捧げ、馬に乗る姿が決め手です。月天と左右一対で置かれます。
持ち物 ─ 日輪
手に丸い輪を捧げます。 これが日輪で、太陽そのものを表します。
輪の中に三本足の烏を描く作例があります。中国で太陽に住むとされた鳥です。
月天が捧げる月輪と対になり、輪の中身を見れば、日天か月天かがすぐに分かります。
乗り物 ─ 馬
並び ─ 月天と一対
日天と月天は必ず対にして置かれます。 一体だけ描かれることはほとんどありません。
本尊の左右、あるいは十二天の絵のなかで、向かい合う位置に配されます。
装いはよく似ており、唐風の衣に天冠をいただきます。持つ輪の中身だけが違います。
なぜ丸彫りが少ないのか
日天の彫刻はきわめて少ないものです。理由は十二天の使われ方にあります。
灌頂という儀式のたびに道場の周囲へ掛け、終われば片づける。持ち運べることが必要でした。
用途が形を決めた例です。 十二体分の丸彫りを用意し、そのつど並べ替えるのは現実的ではありませんでした。
日天のご利益
除災
日の光が闇を払うとされることによる。
眼病平癒
光をつかさどるとされることによる。
五穀豊穣
日の恵みが作物を実らせることによる。
道場の清め
灌頂の儀式で場を囲むことによる。
日天に会える寺
日天をめぐる仏のつながり
日天の位階と、似た仏との違い
日天は天部の位に置かれます。十二天の一員として太陽を受け持ちます。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。日天は天部です。
十二天のうち十体は方角を受け持ちますが、日天と月天だけは時を受け持ちます。 空間の守りに時の守りを足すことで、世界のすべてを覆うという組み立てになっています。
月天 ─ 必ず対になる相手
日天と月天は一対です。 どちらも唐風の衣をまとい、天冠をいただき、輪を捧げます。
見分けは輪の中身と乗り物です。日天の輪には烏、月天の輪には兎が描かれることがあります。日天は馬、月天は鵞鳥に乗ります。
一体だけを見て判じるより、二体そろった並びで見るほうが確実です。
日光菩薩 ─ 日をつかさどる者どうし
十二天 ─ 組と、その一員
日天は十二天の一員です。四方・四隅・上下の十体に、日天と月天を足して十二になります。
十二天として掛けるときは十二体そろって意味を持ちます。日天と月天は、そのなかでも役割の性質が違う二体です。
日天についてよくある質問
日天と日天子は違うものですか。
同じものです。「子」は天に属する者であることを示す語で、経典では日天子の形がよく使われます。
日天はどう見分けますか。
手に日輪を捧げ、馬に乗ります。輪の中に三本足の烏が描かれることもあります。月天と対にして置かれます。
日天の像はどこで見られますか。
寺が持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。重要文化財の木造十二天面に日天の面がありますが、これは面で、所有者は国立文化財機構です。
日光菩薩とは違うのですか。
違います。日光菩薩は菩薩で、薬師如来の脇に立ちます。日天は天部で、十二天の一員です。
なぜ日天と月天だけ方角がないのですか。
空間を守る十体に、時を受け持つ二体を足して十二にするという組み立てだからです。空間と時の両方を覆う形になります。
日天と併せて覚えたい言葉・用語
日輪(にちりん)
太陽を表す丸い輪。日天が手に捧げる。
天冠(てんかん)
天部や菩薩が頭にいただく冠。
灌頂(かんじょう)
密教で頭に水を注ぐ儀式。十二天の絵を掛けて場を囲む。