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明王

大元帥明王(たいげんみょうおう)とはどんな仏か|見分け方とご利益

大元帥明王  / タイゲンミョウオウ

守護忿怒 密教

国を守る修法の本尊。宮中でだけ修されてきた明王。

大元帥明王とはどんな仏か

大元帥明王をひとことで言えば国を守る明王です。外敵と災いから国を守る大元帥法の本尊とされます。

この修法には、ほかに例のない決まりがありました。宮中でのみ行うことが許され、民間で修することは禁じられていたのです。毎年正月八日から七日間、宮中で修されました。

なぜそこまで厳しく囲われたのか。この明王の力が、敵を呪い滅ぼす方向へ向かうものだったからだと考えられます。国を守るとは、敵を打ち破ることでもあります。その力が私的に使われることを、朝廷は恐れました。

姿もきわだっています。十八の顔と三十六本の腕を持ち、全身に蛇を巻きつけます。顔はいずれも牙をむき、目を見開きます。仏像のなかで群を抜いて異形の姿です。

読みは「たいげんみょうおう」で、「帥」の字を読みません。奈良の秋篠寺には重要文化財の立像が伝わり、一年に一度だけ扉が開かれます。

大元帥明王の読み方と梵名

読みは「たいげんみょうおう」です。

「帥」の字を読まないのが決まりです。「だいげんすいみょうおう」と字のとおり読む例もありますが、慣用では「たいげん」とします。

もとはアータヴァカという、森に住んで人を食らう夜叉でした。仏教に帰依したのち、その力を国を守る方向へ向けたという来歴を持ちます。

大元帥明王(たいげんみょうおう)

もっとも広く使われる形。「帥」を読まない。

大元明王(たいげんみょうおう)

「帥」を省いた形。

だいげんすいみょうおう(だいげんすいみょうおう)

字のとおり読む例もあるが、慣用では「たいげん」。

阿吒薄倶元帥大将(あたばくげんすいだいしょう)

梵名の音を漢字に写した形を含む呼び方。

アータヴァカ(Atavaka)

意味は「林に住むもの」。もとは森に住み人を食らう夜叉の名とされる。読みは「あーたう゛ぁか」。

大元帥明王の見分け方(印相・持ち物・姿)

大元帥明王の見分けは、顔と腕の多さにあります。ここまで数が多い像はほかにありません。

顔と腕 ─ 十八面三十六臂

経典に説かれる姿は、十八の顔と三十六本の腕です。

顔は頭の周囲と上に何段にも重なり、腕は左右に扇のように広がります。千手観音の四十二臂を超える数で、実際に彫るのはきわめて難しいものです。

そのため作例では顔と腕を減らすことが多く、経典どおりに造られた像はほとんどありません。 六面八臂、四面八臂などに簡略化されます。

蛇 ─ 全身に巻きつく

全身に蛇を巻きつけます。腕・首・胴・足のいたるところに蛇が絡みます。

軍荼利明王も蛇を巻きますが、大元帥明王のほうがはるかに数が多く、体そのものが蛇に覆われて見えます。

蛇は毒と、その毒を制する力を表します。もと夜叉であった来歴とも重なります。

顔つき ─ 牙と見開いた目

すべての顔が忿怒の相をとります。目を大きく見開き、上下の牙をむき出します。

髪は逆立ち、火焔のように広がります。背には火焔光背を負います。

明王のなかでも、これほど攻撃的な表情を与えられた像はほかにありません。 敵を呪い滅ぼすという修法の性格が、そのまま顔に出ています。

秘仏として囲われる

大元帥明王の像は、多くが秘仏です。

宮中でのみ修される法の本尊であったため、人目にさらすものではないと考えられました。

奈良の秋篠寺の像も秘仏で、一年に一度だけ扉が開かれます。この明王に会える機会は、日本でも数えるほどしかありません。 訪ねる前に寺へ確かめる必要があります。

大元帥明王のご利益

国家安穏

大元帥法が国を守る修法であることによる。

外敵を退ける

敵国の調伏を祈る修法とされた。

厄除け

災いを退ける力にちなむ。

悪縁を断つ

調伏の性格による。

大元帥明王に会える寺

大元帥明王の像は数がきわめて少なく、文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたのは奈良の秋篠寺の立像だけでした。

理由は、この修法が宮中でのみ修されていたことにあります。民間の寺で本尊とすることが許されなかったため、像を造る機会そのものが限られました。

多くが秘仏であることも、この明王に会いにくい理由です。国を守る力を人目にさらさないという考え方が、そのまま拝観の制限になっています。

秋篠寺(あきしのでら)

重要文化財

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秋篠寺の住所:奈良県奈良市秋篠町757

像:木造大元帥明王立像 一躯/重要文化財

この像に結び付く願い:国家安穏

大元帥明王の彫刻で、文化庁の国指定文化財等データベースに登録されている数少ない一件です。

所有者は秋篠寺と記されています。

一年に一度だけ扉が開かれる秘仏です。開扉の日は限られるため、訪ねる前に寺へ確かめる必要があります。 同じ寺には木造伝伎芸天立像の重要文化財もあります。

所在地は奈良市観光協会の公式サイトで確かめた。

大元帥明王をめぐる仏のつながり

大元帥明王の位階と、似た仏との違い

大元帥明王は明王の位に置かれます。ただし五大明王には数えられません。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。大元帥明王は明王です。

もとはアータヴァカという夜叉でした。天部の性格を持ちながら、力の強さから明王に位置づけられたと考えられます。

五大明王には数えられず、単独で修法の本尊とされる明王です。同じ性格の明王に孔雀明王があります。

軍荼利明王 ─ どちらも蛇を巻く

どちらも全身に蛇を巻きつけます。

見分けは顔と腕の数です。軍荼利明王は一面八臂、大元帥明王は十八面三十六臂が経典に説かれる姿です。作例では簡略化されますが、大元帥明王のほうが顔も腕も多くなります。

軍荼利明王は五大明王の一員、大元帥明王は単独の修法の本尊です。

孔雀明王 ─ 単独で修法の本尊となる明王どうし

どちらも五大明王に数えられず、単独で修法の本尊とされます。

修法の性格が正反対です。 孔雀経法は雨乞いと除災、大元帥法は敵を調伏する法です。

姿も正反対で、孔雀明王は穏やかな菩薩の顔をし、大元帥明王は十八の顔すべてが忿怒の相をとります。

千手観音 ─ 腕の多さで並ぶ

どちらも腕をきわめて多く持ちます。千手観音は四十二臂、大元帥明王は三十六臂が標準です。

見分けは顔つきです。千手観音は穏やかで、頭上に十一の小面を戴きます。大元帥明王は牙をむき、全身に蛇を巻きます。

腕が多い像を見たら、まず顔が怒っているかどうかを見るのが手順です。

大元帥明王についてよくある質問

大元帥明王とはどんな仏ですか。

外敵と災いから国を守る大元帥法の本尊です。この修法は宮中でのみ行うことが許され、民間で修することは禁じられていました。

大元帥明王の読み方は。

「たいげんみょうおう」です。「帥」の字を読まないのが決まりです。字のとおり「だいげんすいみょうおう」と読む例もあります。

大元帥明王はどう見分けますか。

経典では十八の顔と三十六本の腕を持ち、全身に蛇を巻きつけます。作例では顔と腕が減らされますが、それでも数の多さがきわだちます。

なぜ像が少ないのですか。

宮中でのみ修される法の本尊であったため、民間の寺で本尊とすることが許されず、像を造る機会が限られたためです。

大元帥明王の像はどこで見られますか。

奈良の秋篠寺に重要文化財の立像があります。一年に一度だけ扉が開かれる秘仏で、開扉の日は寺に確かめる必要があります。

大元帥明王と併せて覚えたい言葉・用語

大元帥法(たいげんほう)

国を守るための修法。宮中でのみ修すことが許された。

調伏(ちょうぶく)

敵や災いを呪力で退けること。

十八面三十六臂(じゅうはちめんさんじゅうろっぴ)

顔が十八、腕が三十六の形。大元帥明王の経典に説かれる姿。

秘仏(ひぶつ)

普段は扉を閉じ、決まった日にだけ開けて拝む仏像。