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明王

金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)とはどんな仏か|見分け方とご利益

金剛夜叉明王  / コンゴウヤシャミョウオウ

守護忿怒 密教

顔に五つの目を持つ、五大明王の北方。

金剛夜叉明王とはどんな仏か

金剛夜叉明王をひとことで言えば五つの目を持つ明王です。五大明王のうち北方を受け持ちます。

もとは人を食らう夜叉でした。大日如来に諭され、仏法を守る側に回ったとされます。食らう相手を人から煩悩に変えたというのが、この明王の転じ方です。

姿の決め手は正面の顔に並ぶ五つの目です。三つの顔を持ち、そのうち正面の顔だけが五眼となります。上下に二つずつ、中央に一つという配置です。

五つの目を持つ仏は、金剛夜叉明王だけです。 三つの目を持つ仏は数多くありますが、五つは例がありません。

五大明王の北方は、不空成就如来が怒りの姿をとったものとされます。

なお天台宗では、この位置に烏枢沙摩明王を置くことがあります。五大明王の北方は、宗派によって尊格が入れ替わるのです。

金剛夜叉明王の読み方と梵名

読みは「こんごうやしゃみょうおう」です。

「金剛」は梵語ヴァジュラの訳で、何よりも堅く何をも砕くものを指します。「夜叉」は梵語ヤクシャの音を写したもので、人を害する鬼神を指す語でした。

「金剛の夜叉」という名は、鬼神でありながら仏の側に立つという、この明王の来歴をそのまま表しています。

金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)

もっとも広く使われる形。

金剛夜叉(こんごうやしゃ)

略した形。

金剛尽(こんごうじん)

梵名を意味で訳した形。

大黒金剛(だいこくこんごう)

古い訳に見える形。

ヴァジュラヤクシャ(Vajrayaksa)

意味は「金剛の夜叉」。「ヴァジュラ」が金剛、「ヤクシャ」が夜叉を指す。読みは「う゛ぁじゅらやくしゃ」。

金剛夜叉明王の見分け方(印相・持ち物・姿)

金剛夜叉明王の見分けは、正面の顔に五つ並ぶ目にあります。これほど明快な目印はほかにありません。

目 ─ 正面の顔に五つ

三つの顔のうち、正面の顔だけが五つの目を持ちます。

上に二つ、中に一つ、下に二つという配置です。左右の顔は三つずつが基本です。

五つの目を持つ仏はほかにありません。 三つの目は不動明王・愛染明王・軍荼利明王など数多くありますが、五つは金剛夜叉明王だけです。

顔と腕 ─ 三面六臂

顔は三つ、腕は六本が標準です。

三つの顔はいずれも忿怒の相で、牙をむき、髪を逆立てます。

六本の手には五鈷杵・剣・輪・弓・矢・鈴などを握ります。武器の種類が多いのは、あらゆる方向から煩悩を攻めるためだと説かれます。

姿勢 ─ 片足を上げる

左足を蓮華座に置き、右足を軽く上げる姿勢をとる作例があります。

動きのある姿勢で、今にも飛びかかろうとする瞬間を表します。

蔵王権現が片足を高く蹴り上げるのに比べると控えめですが、明王の像で足を動かす形は多くありません。

位置 ─ 北方は入れ替わる

五大明王では、中央の不動明王から見て北に置かれます。

ただしこの位置は、宗派によって尊格が入れ替わります。真言宗では金剛夜叉明王、天台宗では烏枢沙摩明王を置くことがあります。

五大明王の五体のうち、四体は共通で北方だけが分かれる。五大明王を数えるときは、北に誰がいるかを確かめる必要があります。

金剛夜叉明王のご利益

厄除け

五大明王として災いを払う。

悪を食い尽くす

もと夜叉であったことにちなむ。

煩悩を除く

食らう相手を煩悩に変えたという由来による。

身を守る

北方を守る役目にちなむ。

金剛夜叉明王に会える寺

金剛夜叉明王は、五大明王の一員として会うのがふつうです。単独の像は数が限られます。

奈良の不退寺、三重の常福寺、京都の醍醐寺と大覚寺にも、五大明王がそろった重要文化財があります。

ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。天台宗の寺では、北方が烏枢沙摩明王に入れ替わっていることがあります。

延暦寺(えんりゃくじ)

重要文化財

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延暦寺の住所:滋賀県大津市坂本本町4220

像:木造金剛夜叉明王立像 一躯/重要文化財

この像に結び付く願い:厄除け

金剛夜叉明王が単独で重要文化財に指定された例です。

文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が延暦寺と記されています。

同じ寺には木造降三世明王立像、木造軍茶利夜叉明王立像、木造吉祥天立像の重要文化財もあります。五大明王のうち複数の像が同じ寺に伝わっています。

所在地は公式サイトで確かめた。

東寺 講堂(とうじ こうどう)

国宝

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東寺 講堂の住所:京都市南区九条町1番地

像:木造五大明王像(講堂安置)五躯/国宝

この像に結び付く願い:煩悩を除く

空海が構想した立体曼荼羅の一部です。金剛夜叉明王はその五躯のうちの一躯にあたります。

文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が宗教法人教王護国寺と記されています。

五大明王がそろって国宝に指定された、日本で唯一の組です。

同じ堂には国宝の帝釈天半跏像もある。

瑞巌寺(ずいがんじ)

重要文化財

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瑞巌寺の住所:宮城県宮城郡松島町松島字町内91番地

像:木造五大明王像 五躯/重要文化財

この像に結び付く願い:身を守る

五大明王が五躯そろって伝わります。金剛夜叉明王はその一躯にあたります。

文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が瑞巌寺と記されています。

東北で五大明王が五躯そろう例は少なく、密教の像が北へ広がった証しとして注目されます。

所在地は公式サイトで確かめた。

金剛夜叉明王をめぐる仏のつながり

金剛夜叉明王の位階と、似た仏との違い

金剛夜叉明王は明王の位に置かれます。五大明王のうち北方を受け持ちます。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。金剛夜叉明王は明王です。

五大明王は、中央が不動明王、東が降三世、南が軍荼利、西が大威徳、北が金剛夜叉です。それぞれ五智如来が怒りの姿をとったものだとされます。

金剛夜叉明王は北方で、不空成就如来が怒りの姿をとったものとされます。ただし天台宗ではこの位置に烏枢沙摩明王を置くことがあります。

烏枢沙摩明王 ─ 北方の枠を分け合う

真言宗の五大明王では北方が金剛夜叉明王、天台宗では烏枢沙摩明王が置かれることがあります。同じ枠を分け合う関係です。

見分けは目の数です。金剛夜叉明王は正面の顔に五つの目を持ちます。烏枢沙摩明王は三つが基本です。

烏枢沙摩明王は不浄を清める働きから、便所に祀られることでも知られます。

大威徳明王 ─ 五大明王の北と西

どちらも五大明王です。北が金剛夜叉、西が大威徳です。

見分けは乗り物です。大威徳明王は水牛に乗り、顔も腕も足も六つあります。金剛夜叉明王は乗り物を持たず、三面六臂です。

顔の数も違い、大威徳は六面、金剛夜叉は三面です。

夜叉 ─ もとになった鬼神

金剛夜叉明王は、もと夜叉だったとされます。同じ由来を持ちますが、位階が違います。

夜叉は天部、金剛夜叉明王は明王です。

夜叉は八部衆や十二神将の一員として仏法を守り、金剛夜叉明王は五大明王の一員として煩悩を打ち破ります。

金剛夜叉明王についてよくある質問

金剛夜叉明王とはどんな仏ですか。

五大明王のうち北方を受け持つ明王です。もとは人を食らう夜叉でしたが、大日如来に諭されて仏法を守る側に回ったとされます。

金剛夜叉明王はどう見分けますか。

正面の顔に五つの目が並びます。五つの目を持つ仏はほかにないため、これが決め手になります。三面六臂が標準です。

五大明王の北方は決まっていますか。

決まっていません。真言宗では金剛夜叉明王、天台宗では烏枢沙摩明王を置くことがあります。五体のうち北方だけが宗派で分かれます。

金剛夜叉明王のご利益は何ですか。

厄除けが中心です。もと夜叉であり、食らう相手を人から煩悩に変えたという由来から、悪を食い尽くす働きが説かれます。

金剛夜叉明王の像はどこで見られますか。

滋賀の延暦寺に単独の重要文化財の像があります。京都の東寺講堂には国宝の五大明王、宮城の瑞巌寺には重要文化財の五大明王がそろっています。

金剛夜叉明王と併せて覚えたい言葉・用語

五眼(ごげん)

五つの目。金剛夜叉明王の正面の顔に並ぶ。

三面六臂(さんめんろっぴ)

顔が三つ、腕が六本の形。

夜叉(やしゃ)

もとは人を害する鬼神。のちに仏法を守る側に回った。

立体曼荼羅(りったいまんだら)

曼荼羅を立体の像で表したもの。東寺講堂のものが知られる。