竜を食らう金色の大鳥。八部衆の一員。
迦楼羅とはどんな仏か
迦楼羅をひとことで言えば竜を食う鳥です。八部衆と二十八部衆の双方に数えられます。
インドの神話に登場する巨大な鳥が出どころです。翼を広げれば空を覆い、竜や蛇を捕らえて食うとされます。全身が金色に輝くことから金翅鳥とも呼ばれます。
口から火を吐くと説かれます。この火が煩悩を焼き尽くすとされ、能や歌舞伎の「迦楼羅焔」という語もここから来ています。
日本での姿は、人の体に鳥の頭を載せた形が多く見られます。くちばしをとがらせ、背に大きな翼を広げます。
京都の三十三間堂の迦楼羅王は、横笛を吹いています。 竜を食らう猛々しい鳥の神が、静かに笛を吹く。この意外さが、この像を忘れがたいものにしています。
奈良の興福寺の国宝の八部衆にも、その一躯が含まれます。
迦楼羅の読み方と梵名
読みは「かるら」です。
「迦楼羅」は梵名ガルダの音を漢字に写したもので、字そのものに意味はありません。
意味で訳した名が金翅鳥です。金色の翼を持つ鳥という意味で、経典ではこちらの名で呼ばれることも多くあります。
インドではヴィシュヌ神の乗り物とされ、今もインドネシアの国章などにその名が残ります。
迦楼羅(かるら)
もっとも広く使われる形。
迦楼羅王(かるらおう)
二十八部衆での呼び方。
金翅鳥(こんじちょう)
梵名を意味で訳した形。金色の翼を持つ鳥。
妙翅鳥(みょうしちょう)
同じく意味で訳した形。
かるらてん(かるらてん)
「迦楼羅天」と呼ぶ例もある。
ガルダ(Garuda)
意味は「翼を持つもの」。インドの神話に登場する巨鳥の名。「迦楼羅」はこの音を漢字に写したもの。読みは「がるだ」。
迦楼羅の見分け方(印相・持ち物・姿)
迦楼羅の見分けは、鳥の頭と翼にあります。鳥の姿をした仏はほかにほとんどありません。
頭 ─ 鳥のくちばし
人の体に鳥の頭を載せた形が多く見られます。くちばしをとがらせ、目を丸く見開きます。
全身が鳥の姿に造られる作例もあります。
くちばしを持つ仏は多くありません。 飯縄権現も烏のくちばしを持ちますが、あちらは白狐に乗るので迷いようがありません。
翼 ─ 背に大きく広げる
背に大きな翼を広げます。羽の一枚ずつを彫り分けることもあります。
翼を持つ尊格は日本に多くありません。迦楼羅と飯縄権現がおもな例です。
三十三間堂の迦楼羅王は、翼を体に沿わせて畳んだ形に造られています。
持ち物 ─ 笛、あるいは蛇
持ち物は作例によって違います。
京都の三十三間堂の像は、横笛を吹いています。 竜を食らう鳥が音楽を奏でるという意外な姿です。
蛇をつかんだ姿、剣を握った姿もあります。持ち物で見分けるのは難しく、頭と翼を見るのが確実です。
火焔 ─ 口から火を吐く
口から火を吐くと説かれます。この火が煩悩を焼き尽くすとされます。
像では、背に火焔光背を負う形で表されることがあります。
「迦楼羅焔」という語は、この炎を指します。不動明王の背負う火焔を迦楼羅焔と呼ぶこともあり、明王の火とこの鳥の火が結びつけられてきました。
迦楼羅のご利益
毒を消す
竜や蛇を食うことにちなむ。
厄除け
煩悩を焼き尽くす火にちなむ。
雨乞い
竜を制することから、水にかかわる祈りを受ける。
音楽の上達
笛を吹く姿にちなむ。
迦楼羅に会える寺
迦楼羅は、八部衆または二十八部衆の一員として会うのがふつうです。単独で祀られる例はほとんどありません。
文化庁の国指定文化財等データベースで「迦楼羅」を検索しても、迦楼羅だけを名に掲げた彫刻は確かめられませんでした。いずれも組み合わせの一員として登録されています。
ここに挙げたのは、所有者が寺であることを確かめられたものだけです。
興福寺(こうふくじ)
国宝
国宝の八部衆八躯のうちの一躯が迦楼羅です。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、八躯ひとまとまりで国宝に登録され、所有者は興福寺と記されています。
天平時代の乾漆像で、少年のような細い体に鳥の頭を載せた姿は、猛々しさより静けさを感じさせます。
同じ組の一躯が阿修羅像にあたる。
三十三間堂 蓮華王院本堂(さんじゅうさんげんどう れんげおういんほんどう)
国宝
国宝の二十八部衆のうちの一躯が迦楼羅王です。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、所有者が妙法院と記されています。
横笛を吹く姿で造られています。竜を食らう鳥の神が音楽を奏でるという意外さで、二十八躯のなかでもとくに知られる一体です。
同じ堂には千手観音坐像と千体千手観音立像がある。
迦楼羅をめぐる仏のつながり
迦楼羅の位階と、似た仏との違い
迦楼羅は天部の位に置かれます。八部衆と二十八部衆の双方に数えられます。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。迦楼羅は天部です。
天部のなかでは、もとインドの神話に出る者の組に入ります。インドではヴィシュヌ神の乗り物とされた巨鳥が、仏教に取りこまれて守り手になりました。
孔雀明王 ─ どちらも鳥に関わる
どちらも鳥と結びつきます。迦楼羅は鳥そのものの姿、孔雀明王は孔雀に乗る姿です。
位階も違います。孔雀明王は明王、迦楼羅は天部です。
蛇を食うという性格は共通しています。孔雀は毒蛇を食べ、迦楼羅は竜を食う。この共通点が二つの尊格の根にあります。
緊那羅 ─ 八部衆どうし
どちらも八部衆と二十八部衆の双方に数えられます。
見分けは頭です。迦楼羅は鳥のくちばし、緊那羅は額に一本の角を持ちます。
どちらも音楽と結びつきます。緊那羅は歌をつかさどり、迦楼羅は三十三間堂の像で笛を吹きます。
飯縄権現 ─ どちらもくちばしと翼を持つ
どちらも鳥のくちばしを持ち、背に翼を生やします。姿だけでは紛れます。
見分けは乗り物です。飯縄権現は白い狐にまたがります。 迦楼羅は乗り物を持ちません。
飯縄権現は日本で生まれた尊格、迦楼羅はインドにさかのぼります。
迦楼羅についてよくある質問
迦楼羅とはどんな仏ですか。
竜や蛇を捕らえて食うとされる巨大な鳥です。全身が金色に輝くことから金翅鳥とも呼ばれ、八部衆と二十八部衆の双方に数えられます。
迦楼羅の読み方は。
「かるら」です。梵名ガルダの音を漢字に写したもので、字そのものに意味はありません。
迦楼羅はどう見分けますか。
人の体に鳥の頭を載せ、背に大きな翼を広げます。鳥の姿をした仏はほかにほとんどありません。
なぜ笛を吹いているのですか。
京都の三十三間堂の迦楼羅王が横笛を吹く姿で造られています。竜を食らう鳥の神が音楽を奏でるという意外さで知られますが、理由ははっきりわかっていません。
迦楼羅の像はどこで見られますか。
奈良の興福寺の国宝の八部衆、京都の三十三間堂の国宝の二十八部衆に、それぞれ一躯が含まれます。
迦楼羅と併せて覚えたい言葉・用語
金翅鳥(こんじちょう)
迦楼羅を意味で訳した名。金色の翼を持つ鳥。
迦楼羅焔(かるらえん)
迦楼羅が吐くとされる炎。不動明王の火焔をこう呼ぶこともある。
八部衆(はちぶしゅう)
仏法を守る八種の者たち。迦楼羅はその一員。
二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)
千手観音に仕える二十八体。迦楼羅王が含まれる。