庚申の夜を守る青い体の尊格。足もとに三匹の猿。
青面金剛とはどんな仏か
青面金剛をひとことで言えば庚申待ちの本尊です。
もとになる考え方はこうです。人の体には三尸という三匹の虫がいて、六十日に一度めぐってくる庚申の夜、眠っているあいだに体を抜け出し、天に昇ってその人の罪を告げる。告げられれば寿命が縮む。
そこで人々は、庚申の夜は眠らずに過ごすことにしました。これを庚申待ちといいます。集まって夜通し語り、飲み、明かします。
その集まりの本尊が青面金剛です。虫が抜け出さないよう抑える力を持つとされました。
姿は体が青く、三つの目を見開き、腕は六本が標準です。足もとには三猿が彫られます。見ざる、聞かざる、言わざるの三匹です。
日本で庚申信仰と結びついて広まった尊格で、江戸時代には各地の路傍に庚申塔が立てられました。
重要文化財の木造青面金剛立像が一件ありますが、所有者は東大寺、保管施設は東京国立博物館と登録されています。寺へ行っても会えない像です。
青面金剛の読み方と梵名
読みは「しょうめんこんごう」です。「せいめんこんごう」と読む例もあります。
「青面」は青い顔、あるいは青い体を指します。体の色がそのまま名になっています。
「金剛」は何よりも堅く何をも砕くものを指す語です。金剛力士・金剛薩埵・金剛夜叉明王など、力の強さを示す尊格の名に広く使われます。
青面金剛(しょうめんこんごう)
もっとも広く使われる形。
せいめんこんごう(せいめんこんごう)
「せいめん」と読む例もある。
青面金剛童子(しょうめんこんごうどうじ)
童子を添えた呼び方。
庚申さま(こうしんさま)
日ごろの言い方。
ヤクシャ(Yaksa)
意味は「捷疾なるもの」。夜叉の原語。青面金剛はもと夜叉とされるが、日本で整えられた尊格のため固有の梵名は確かめられなかった。読みは「やくしゃ」。
青面金剛の見分け方(印相・持ち物・姿)
青面金剛の見分けは、足もとの三猿にあります。庚申塔でも堂の像でも、まず足もとを見ます。
三猿 ─ 足もとに三匹
足もとに三匹の猿が彫られます。目をふさぐ猿、耳をふさぐ猿、口をふさぐ猿です。
見ざる、聞かざる、言わざる。三尸の虫に罪を「見せない、聞かせない、告げさせない」という意味だとされます。
三猿を伴う尊格は青面金剛だけです。 庚申塔でも、猿が三匹いればこの尊格を刻んだものだとわかります。
体 ─ 青い色
体の色は青です。名がそのまま色を示しています。
三つの目を見開き、牙をむき、髪を逆立てます。忿怒の相をとります。
石に刻まれた庚申塔では色がわかりませんが、木彫や絵では青く塗られるのが決まりです。
腕 ─ 六本にショケラを提げる
腕は六本が標準です。剣・法輪・弓・矢・鉾などを握ります。
ときに、髪をつかんで小さな人をぶら下げます。この人をショケラと呼びます。
ショケラが何を指すのかは、はっきりしていません。 三尸の虫だという説、煩悩を人の形で表したものだという説があります。名の由来もわかっていません。
足もと ─ 二鬼と鶏
三猿のほかに、二匹の鬼が踏まれる形があります。
また鶏が二羽、左右に彫られることもあります。庚申の夜が明けたことを告げる鶏です。
三猿・二鬼・二鶏。庚申塔にはこれらが決まりのように並びます。 石塔を見かけたら、猿の数を数えてみるとよいでしょう。
青面金剛のご利益
延命
三尸の虫が罪を告げるのを防ぎ、寿命が縮むのを避ける。
厄除け
庚申の夜の災いを防ぐことによる。
病気平癒
体の中の虫を抑えるという考え方による。
無病息災
庚申待ちの願いによる。
青面金剛に会える寺
青面金剛の像で、寺へ行って会えるものは確かめられませんでした。
文化庁の国指定文化財等データベースには、重要文化財の木造青面金剛立像が一件あります。所有者は東大寺と記されていますが、保管施設は東京国立博物館と登録されています。寺へ行っても会えないため、この欄には入れていません。
一方で、屋外の庚申塔としては各地に数え切れないほど残っています。江戸時代に庚申講という集まりが盛んになり、そのたびに石塔が立てられたためです。
青面金剛にもっとも会いやすいのは、寺の堂の中ではなく、町の辻や道端です。 三匹の猿が彫られた石塔を見かけたら、それがこの尊格です。
青面金剛をめぐる仏のつながり
青面金剛の位階と、似た仏との違い
青面金剛は明王の枠に置かれます。ただしこれは便宜の分類です。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。青面金剛はこのどれにも、はっきりとは当てはまりません。
もとは夜叉の一種とされ、天部に近い性格を持ちます。一方で忿怒の相をとり、腕を多く持つ姿は明王に近いものです。
中国の道教の庚申信仰と、仏教の尊格が結びついて日本で整えられたもので、位階の枠に収まりません。 分類は便宜のものと考えるのが正確です。
不動明王 ─ どちらも忿怒の相
夜叉 ─ もとになった一族
青面金剛は、もと夜叉の一種とされます。同じ由来を持ちます。
見分けは三猿です。夜叉に三猿は伴いません。
夜叉は天部、青面金剛は明王の枠で扱われますが、どちらも位階の分類に収まりにくい尊格です。
烏枢沙摩明王 ─ 日ごろの場所に祀られる者どうし
どちらも、堂の本尊ではなく生活の場に祀られます。
烏枢沙摩明王は便所に、青面金剛は町の辻の庚申塔に立ちます。
どちらも国指定の彫刻がきわめて少ないのは、この祀られ方によります。 大切に守られる本尊ではなく、身近に置かれる仏だったからです。
青面金剛についてよくある質問
青面金剛とはどんな仏ですか。
庚申の夜を守る尊格です。体の中の三尸という虫が天に罪を告げるのを抑えるとされ、庚申待ちという集まりの本尊とされました。
なぜ三匹の猿がいるのですか。
見ざる、聞かざる、言わざるの三猿です。三尸の虫に罪を見せない、聞かせない、告げさせないという意味だとされます。
庚申待ちとは何ですか。
六十日に一度めぐってくる庚申の夜、体の虫が抜け出さないよう眠らずに過ごす集まりです。江戸時代に広く行われました。
ショケラとは何ですか。
青面金剛が髪をつかんでぶら下げる小さな人です。三尸の虫だという説、煩悩を人の形で表したものだという説がありますが、はっきりしていません。
青面金剛の像はどこで見られますか。
寺へ行って会える国指定の像は確かめられませんでした。重要文化財の立像が一件ありますが、所有者は東大寺、保管施設は東京国立博物館です。屋外の庚申塔としては各地の辻や道端に数多く残ります。
青面金剛と併せて覚えたい言葉・用語
三尸(さんし)
人の体にいるとされる三匹の虫。庚申の夜に天へ罪を告げる。
庚申待ち(こうしんまち)
庚申の夜を眠らずに過ごす集まり。
庚申塔(こうしんとう)
庚申講が立てた石塔。青面金剛と三猿を刻む。
ショケラ(しょけら)
青面金剛が髪をつかんで提げる小さな人。正体は不明。