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菩薩

魚籃観音(ぎょらんかんのん)とはどんな仏か|見分け方・ご利益

魚籃観世音菩薩  / ギョランカンノン

救済 民間信仰

魚を入れた籠を提げる観音。中国の説話から生まれた姿。

魚籃観音とはどんな仏か

魚籃観音をひとことで言えば魚籠を提げた観音です。「魚籃」は魚を入れる竹の籠のことです。三十三観音のひとつに数えられます。

インドの経典には出てきません。中国で生まれた姿です。もとになったのは、馬郎婦観音と呼ばれる説話です。

昔、魚を売る美しい娘が町に現れました。娘は「経を覚えた者に嫁ぐ」と言い、覚えた若者と婚礼を挙げます。ところがその日のうちに娘は亡くなってしまいました。のちに墓を掘り返すと、骨が黄金の鎖でつながれていた。娘は経を広めるために現れた観音の化身だったというのが、この話の結びです。

魚を売る娘の姿がそのまま像になったのが、魚籃観音です。

日本では海に近い土地で信仰されました。東京の三田には、この観音を寺号に掲げる魚籃寺があります。ただし国が指定した彫刻は確かめられませんでした。

魚籃観音の読み方と梵名

読みは「ぎょらんかんのん」です。

「魚籃」は魚を入れる竹の籠のことです。「籃」は編んだかごを意味する字で、揺りかごを指す「揺籃」にも使われます。

馬郎婦観音という別名もあります。「馬郎の婦」、つまり馬という姓の若者の妻という意味で、もとになった説話の筋書きがそのまま名になっています。

魚籃観音(ぎょらんかんのん)

もっとも広く使われる形。

魚籃観世音菩薩(ぎょらんかんぜおんぼさつ)

正式な形。

馬郎婦観音(めろうふかんのん)

もとになった説話にちなむ呼び方。

うおかごかんのん(うおかごかんのん)

日ごろの言い方。

アヴァローキテーシュヴァラ(Avalokitesvara)

意味は「観じ、自在なるもの」。観音の原語。魚籃観音は中国で生まれた姿のため、これに対応する固有の梵名は確かめられなかった。読みは「あう゛ぁろーきてーしゅう゛ぁら」。

魚籃観音の見分け方(印相・持ち物・姿)

魚籃観音の見分けは、魚と籠にあります。生きた魚を持つ仏はほかにありません。

持ち物 ─ 魚を入れた籠

手に魚を入れた竹の籠を提げます。籠の中の魚がはっきり彫られることも、魚の尾だけがのぞく形もあります。

魚を持つ仏は、日本の仏像でほかにありません。 迷う余地がない目印です。

大きな魚の背に乗る形もあり、こちらは魚籃観音と呼ばれることも、鰲魚観音と呼ばれることもあります。

姿 ─ 娘の姿で表される

説話にもとづき、若い娘の姿で表されます。

裸足で立ち、簡素な衣をまとい、髪を結い上げます。宝冠や瓔珞といった菩薩の装身具を着けない作例が多く、姿だけを見ると菩薩に見えないことがあります。

顔つきは柔らかく、市井の人としての姿が強調されます。

なぜ経典に出てこないのか

魚籃観音は、インドの経典にはまったく出てきません。中国で生まれた姿です。

観音経に「三十三の姿に変じる」と説かれていることが、この自由さを支えました。相手に応じて姿を変えるという性格が、新しい姿を生み続ける余地を残したのです。

そのため三十三観音には、経典に根拠を持たない姿が数多く含まれます。魚籃観音はその代表格にあたります。

殺生とのつながり

仏教は生きものを殺すことを戒めます。魚を売る娘の姿をとる観音は、その戒めと正面からぶつかるように見えます。

説話では、この矛盾が「経を広めるための方便だった」と解かれます。目的のために、あえて戒めに触れる姿をとったという説明です。

漁を生業とする土地でこの観音が信仰されたのは、この筋書きが受け入れられやすかったためだと考えられます。

魚籃観音のご利益

大漁

魚を提げる姿にちなみ、漁の土地で祈られた。

海上安全

海に近い土地で信仰されたことによる。

縁結び

婚礼の説話にちなむ。

悪縁を断つ

殺生を業とする者を救う姿とされることによる。

魚籃観音に会える寺

魚籃観音の像で、国が指定したものは確かめられませんでした。 文化庁の国指定文化財等データベースで彫刻を検索しても、該当がありません。

会いに行ける場所としては、東京の三田にある魚籃寺が知られます。この観音を寺号に掲げる寺で、本尊が魚籃観音とされます。ただし公式の情報から所在地と本尊の詳細を確かめられなかったため、この欄には入れていません。

そのほか、漁を営む土地の観音堂や海辺の石仏として祀られる例が各地にあります。国の指定を受けたものはありませんが、地域の信仰としては今も続いています。

魚籃観音をめぐる仏のつながり

魚籃観音の位階と、似た仏との違い

魚籃観音は菩薩に分類されます。三十三観音のひとつです。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。魚籃観音は菩薩に置かれます。

ただしインドの経典に根拠を持たないという点で、ほかの菩薩とは事情が違います。中国の説話から生まれた姿で、密教の六観音や七観音には数えられません。

三十三観音という、絵の題材として整えられた枠組みのなかにだけ位置を持ちます。位階の分類はあくまで便宜のものだと考えるのが正確です。

白衣観音 ─ 三十三観音どうし

どちらも三十三観音に数えられ、中国で姿が整えられました。

見分けは持ち物です。魚籃観音は魚の籠、白衣観音は頭からかぶる白い衣です。

どちらも菩薩の装身具を着けない作例が多く、庶民的な姿で表されます。

楊柳観音 ─ どちらも中国生まれ

どちらも中国で整えられた観音で、三十三観音に数えられます。楊柳観音は第一、魚籃観音は第十番に置かれます。

見分けは持ち物です。魚籃観音は魚の籠、楊柳観音は柳の枝です。

楊柳観音は絵として数多く伝わりますが、魚籃観音は国指定の作例が確かめられませんでした。

聖観音 ─ 装身具の有無

聖観音は宝冠をかぶり、瓔珞を着け、正面に小さな阿弥陀如来の像を戴きます。

魚籃観音は装身具を着けない作例が多く、市井の娘の姿で表されます。

聖観音は密教の六観音の筆頭、魚籃観音は三十三観音のひとつで、枠組みが違います。

魚籃観音についてよくある質問

魚籃観音とはどんな仏ですか。

魚を入れた竹の籠を提げる観音です。中国の馬郎婦観音の説話から生まれた姿で、三十三観音のひとつに数えられます。

魚籃観音の読み方は。

「ぎょらんかんのん」です。「魚籃」は魚を入れる籠のことで、馬郎婦観音とも呼ばれます。

馬郎婦観音の話とは何ですか。

魚を売る娘が「経を覚えた者に嫁ぐ」と言い、覚えた若者と婚礼を挙げた日に亡くなりました。のちに墓を掘ると骨が黄金の鎖でつながれており、娘は観音の化身だったとわかった、という話です。

魚籃観音はどう見分けますか。

魚を入れた籠を手に提げます。魚を持つ仏はほかにないため、迷う余地がありません。

魚籃観音の像はどこで見られますか。

国が指定した彫刻は確かめられませんでした。東京の三田にはこの観音を寺号に掲げる魚籃寺がありますが、所在地と本尊の詳細を公式の情報から確かめられませんでした。

魚籃観音と併せて覚えたい言葉・用語

魚籃(ぎょらん)

魚を入れる竹の籠。この観音の名の由来。

馬郎婦(めろうふ)

馬という姓の若者の妻。魚籃観音のもとになった説話の主人公。

三十三観音(さんじゅうさんかんのん)

観音の三十三の姿を並べた枠組み。

方便(ほうべん)

教えへ導くための手だて。目的のために形を変えることを指す。