八体一組で如来を囲む菩薩たち。顔ぶれは経典で違う。
八大菩薩とはどんな仏か
八大菩薩をひとことで言えば如来を囲む八体の菩薩です。曼荼羅や来迎図で、中心の如来のまわりに配されます。
この組み合わせでやっかいなのは、経典によって顔ぶれが違うことです。
八大菩薩曼荼羅経は、観音・弥勒・虚空蔵・普賢・金剛手・文殊・除蓋障・地蔵の八体を挙げます。薬師経は、文殊・観音・勢至・無尽意・宝檀華・薬王・薬上・弥勒を挙げます。理趣経はさらに別の顔ぶれです。
「八大菩薩」と書かれていても、どの八体を指すのかは、よりどころとする経典を確かめなければわかりません。
日本では、阿弥陀如来の来迎図に八大菩薩を描く形が広まりました。亡くなる人を迎えに来る場面で、阿弥陀如来のうしろに菩薩たちが従います。
彫刻としてまとまって残る例は多くありませんが、香川の開法寺に伝わる板彫の阿弥陀曼荼羅には、八体そろった姿が刻まれています。
八大菩薩の読み方と梵名
読みは「はちだいぼさつ」です。
一体の仏の名ではなく、八体をまとめて呼ぶ名です。四天王や十二神将、五智如来と同じ、組み合わせの名にあたります。
ただし四天王や十二神将は顔ぶれが決まっているのに対し、八大菩薩は経典ごとに違います。 組み合わせの名でありながら中身が定まらない、めずらしい例です。
八大菩薩(はちだいぼさつ)
もっとも広く使われる形。
八菩薩(はちぼさつ)
略した形。
八大菩薩曼荼羅(はちだいぼさつまんだら)
八体を配した図を指す。
アシュタマハーボーディサットヴァ(Astamahabodhisattva)
意味は「八体の大菩薩」。「アシュタ」が八、「マハー」が大、「ボーディサットヴァ」が菩薩を指す。読みは「あしゅたまはーぼーでぃさっとう゛ぁ」。
八大菩薩の見分け方(印相・持ち物・姿)
八大菩薩の見分けは、一体ずつの目印を追うことになります。組全体としての決まった形はありません。
顔ぶれ ─ 経典で入れ替わる
八大菩薩曼荼羅経は、観音・弥勒・虚空蔵・普賢・金剛手・文殊・除蓋障・地蔵の八体を挙げます。この形がもっとも広く使われます。
薬師経は、文殊・観音・勢至・無尽意・宝檀華・薬王・薬上・弥勒の八体を挙げます。薬師如来のまわりに配される形です。
どの八体かを確かめるには、その像や絵がどの経典によっているかを知る必要があります。 案内板に「八大菩薩」とだけあれば、確かめようがありません。
見分け ─ 一体ずつの目印で追う
八体まとめて見分ける方法はありません。一体ずつ目印を確かめます。
冠に小さな仏を戴くのが観音、僧の姿で錫杖を持つのが地蔵、獅子に乗るのが文殊、象に乗るのが普賢、剣と宝珠を持つのが虚空蔵です。
金剛手菩薩は五鈷杵を持ちます。除蓋障菩薩と無尽意菩薩には目立つ目印がなく、位置で判じるほかありません。
配置 ─ 如来を囲む
八体は中心の如来を囲んで配されます。
曼荼羅では、方形あるいは円形に八方へ配置します。来迎図では、阿弥陀如来のうしろに雲に乗って従います。
彫刻でこの配置を再現した例は多くありません。堂全体を使って八体を並べるという規模が必要になるためです。
来迎図での役目
日本で八大菩薩がもっとも活躍したのは、阿弥陀如来の来迎図です。
亡くなる人を迎えに来る阿弥陀如来のうしろに、菩薩たちが楽器を鳴らして従います。二十五菩薩を描く形もあり、八大菩薩はその簡略な形にあたります。
実際に堂で八体を数えるより、絵のなかで数えることのほうが多い組み合わせです。
八大菩薩のご利益
極楽往生
阿弥陀如来の来迎に従うことによる。
所願成就
八体それぞれの働きが合わさるとされる。
厄除け
八方を囲んで守る配置による。
先祖供養
来迎図が葬送の場に掛けられることによる。
八大菩薩に会える寺
八大菩薩を八体そろえて彫刻で表した例は、日本にほとんどありません。堂全体を使う規模が必要になるためです。
文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたのは、香川の開法寺の板彫阿弥陀曼荼羅でした。
一方、絵としては数多く伝わります。奈良には絹本著色釈迦八大菩薩像、東京には絹本著色尊勝曼荼羅図が重要文化財として残ります。八大菩薩に会いたければ、堂の像より寺の宝物館の絵を訪ねるほうが確実です。
開法寺(かいほうじ)
重要文化財
板に彫った阿弥陀曼荼羅で、中心の阿弥陀如来のまわりに菩薩たちが配されています。
文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が開法寺と記されています。
板に彫るという形は、立体の像でも平面の絵でもない中間にあたります。 八体を一つの面にまとめるのに適した手法でした。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
八大菩薩をめぐる仏のつながり
八大菩薩の位階と、似た仏との違い
八大菩薩は菩薩の組み合わせです。八体すべてが菩薩で、如来も天部も含みません。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。八大菩薩は菩薩だけを八体そろえた組み合わせです。
四天王や十二神将が天部の組み合わせ、五智如来が如来の組み合わせであるのに対し、八大菩薩は菩薩だけで組まれます。
ただし顔ぶれが経典で違うため、「八大菩薩」という名は中身を指すのではなく、枠だけを指す名だと考えるのが正確です。
五智如来 ─ 組み合わせの位階が違う
どちらも複数体で一組をなします。五智如来は如来だけ、八大菩薩は菩薩だけで組まれます。
五智如来は五体、顔ぶれも位置も固定されています。八大菩薩は八体で、顔ぶれが経典によって変わります。
顔ぶれが固定されているかどうかが、この二つの大きな違いです。
二十八部衆 ─ 数と位階の違い
八大菩薩についてよくある質問
八大菩薩とは何ですか。
如来のまわりに配される八体の菩薩の組み合わせです。曼荼羅や阿弥陀如来の来迎図で用いられます。
八大菩薩の顔ぶれは決まっていますか。
決まっていません。八大菩薩曼荼羅経と薬師経では、挙げられる八体が違います。どの経典によるかを確かめる必要があります。
八大菩薩と八部衆は同じですか。
別の組み合わせです。八大菩薩は菩薩八体、八部衆は天部八体で、阿修羅や迦楼羅が含まれます。
八大菩薩はどう見分けますか。
組全体としての決まった形はありません。冠に小さな仏を戴くのが観音、僧の姿なら地蔵というように、一体ずつ目印を確かめます。
八大菩薩の像はどこで見られますか。
八体そろえた彫刻は日本にほとんどありません。香川の開法寺に板彫阿弥陀曼荼羅の重要文化財があります。絵としては奈良や東京の寺に伝わります。
八大菩薩と併せて覚えたい言葉・用語
除蓋障菩薩(じょがいしょうぼさつ)
八大菩薩のひとつ。心の覆いを取り除く働きを持つ。
無尽意菩薩(むじんにぼさつ)
薬師経が挙げる八大菩薩のひとつ。
来迎図(らいごうず)
阿弥陀如来が菩薩を従えて迎えに来る場面を描いた絵。
板彫(いたぼり)
板に彫刻を施したもの。立体と平面の中間にあたる。