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菩薩

多羅菩薩(たらぼさつ)とはどんな仏か|見分け方・ご利益

多羅菩薩  / タラボサツ

救済 密教

観音の涙から生まれたとされる、女性の姿の菩薩。

多羅菩薩とはどんな仏か

多羅菩薩をひとことで言えば観音の涙から生まれた菩薩です。

観音菩薩が人々の苦しみを見わたし、あまりの多さに涙を流しました。その涙が蓮の花となり、花のなかからこの菩薩が現れた。救っても救っても尽きない苦しみへの嘆きから生まれたという筋書きになっています。

名の「ターラー」には二つの読み解きがあります。ひとつは「瞳」、もうひとつは「渡らせる者」です。涙から生まれたという由来には「瞳」が、救うという役目には「渡らせる者」がよく合います。

はっきりと女性の姿で表される、数少ない尊格です。仏教の尊格の多くは男女の別を超えたものとされますが、この菩薩は女性として説かれます。

インドとチベットではきわめて盛んに信仰されました。しかし日本にはほとんど広まりませんでした。 胎蔵界曼荼羅の蓮華部院に描かれるだけで、単独の像を造る習わしが根づかなかったのです。

多羅菩薩の読み方と梵名

読みは「たらぼさつ」です。

「多羅」は梵名ターラーの音を漢字に写したもので、字そのものに意味はありません。

意味で訳した名が救度母です。「度」は渡らせること、「母」は女性であることを示します。チベットでは今も広く信仰され、緑と白の二体を中心に二十一の姿が数えられます。

多羅菩薩(たらぼさつ)

もっとも広く使われる形。

多羅尊(たらそん)

略した形。

多羅観音(たらかんのん)

観音の一種とみる立場での呼び方。

救度母(くどぼ)

梵名を意味で訳した名。渡らせる母という意味。

ターラー(Tara)

意味は「瞳、あるいは渡らせるもの」。「多羅」はこの音を漢字に写したもの。読みは「たーらー」。

多羅菩薩の見分け方(印相・持ち物・姿)

多羅菩薩の見分けは、青い蓮華を持つ女性の姿にあります。ただし日本では作例がきわめて少なく、実物に会う機会はほとんどありません。

持ち物 ─ 青い蓮華

手に青い蓮華を持ちます。半ば開いた花を茎ごと握る形です。

観音菩薩が持つのは白い蓮のつぼみです。色と開き具合が違います。

もう一方の手は、恐れを取り除く施無畏印を結ぶか、願いを聞き入れる与願印を結びます。

姿 ─ 女性として表される

はっきりと女性の姿で表されます。胸のふくらみを彫り、腰をくびれさせます。

仏教の尊格の多くは男女の別を超えたものとされ、日本の仏像でも性別を強く出す例は多くありません。多羅菩薩は、その数少ない例外にあたります。

顔は穏やかで、わずかに微笑みます。宝冠をかぶり、瓔珞を着けます。

座り方 ─ 片足を垂らす

チベットの像では、右足を蓮華座から下ろし、左足を組んだ姿勢が多く見られます。

いつでも立ち上がって救いに向かえる姿勢だとされます。半跏踏み下げと呼ばれる形です。

日本の曼荼羅では正面を向いて座る形に描かれます。

なぜ日本に像が無いのか

国が指定した多羅菩薩の彫刻は確かめられませんでした。理由はいくつか考えられます。

ひとつは、日本に密教が伝わった時期です。空海と最澄が学んだのは唐の密教で、多羅菩薩の信仰が盛んになるより前の段階でした。

もうひとつは、日本にすでに観音信仰が根づいていたことです。同じ働きを観音が受け持っていたため、新しい尊格を迎える余地が小さかったと考えられます。

多羅菩薩のご利益

苦しみを渡す

救度母という名にちなむ。

厄除け

八つの恐れから救うと説かれる。

延命

白い姿の多羅菩薩は寿命を延ばすとされる。

安産

母としての性格による。

多羅菩薩に会える寺

多羅菩薩の像で、国が指定したものは確かめられませんでした。 文化庁の国指定文化財等データベースで彫刻を検索しても、該当がありません。

日本でこの菩薩に会えるのは、胎蔵界曼荼羅の絵の中です。蓮華部院の観音のとなりに、小さく描かれています。曼荼羅を伝える真言宗と天台宗の寺で、その姿を探すことになります。

単独の堂も、単独の像も、日本にはほとんど存在しません。 インドとチベットでこれほど盛んに信仰された尊格が、日本ではほぼ姿を見せない。その落差そのものが、この菩薩について知っておくべきことです。

多羅菩薩をめぐる仏のつながり

多羅菩薩の位階と、似た仏との違い

多羅菩薩は菩薩の位に置かれます。観音の一種とみる立場もあります。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。多羅菩薩は菩薩です。

胎蔵界曼荼羅では、観音たちが集まる蓮華部院に置かれます。観音の系統に属する尊格という位置づけです。

そのため多羅観音と呼ばれることもあります。ただし日本では観音の変化身として数える六観音・七観音・三十三観音のいずれにも含まれません。

観音菩薩 ─ 涙から生まれた相手

多羅菩薩は、観音菩薩の涙から生まれたとされます。親子に近い関係です。

見分けは持ち物と姿です。観音菩薩は白い蓮のつぼみを持ち、宝冠に小さな阿弥陀如来の像を戴きます。多羅菩薩は青い蓮華を持ち、化仏を戴かない作例もあります。

多羅菩薩ははっきりと女性の姿で表されますが、観音菩薩は男女の別を超えた姿に造られます。

准胝観音 ─ どちらも母と呼ばれる

どちらも母としての性格を持ちます。准胝観音は仏母、多羅菩薩は救度母と呼ばれます。

見分けは腕の数です。准胝観音は十八本、多羅菩薩は二本です。

准胝観音は足もとに二体の竜王が現れます。多羅菩薩には竜王が伴いません。

吉祥天 ─ 女性の姿の尊格どうし

どちらもはっきりと女性の姿で表されます。ただし位階が違います。

多羅菩薩は菩薩、吉祥天は天部です。

見分けは持ち物と装いです。吉祥天は唐の貴婦人の衣をまとい、宝珠を捧げます。多羅菩薩は菩薩の装身具を着け、青い蓮華を持ちます。

多羅菩薩についてよくある質問

多羅菩薩とはどんな仏ですか。

観音菩薩が流した涙から生まれたとされる菩薩です。はっきりと女性の姿で表され、青い蓮華を持ちます。

多羅菩薩の読み方は。

「たらぼさつ」です。「多羅」は梵名ターラーの音を漢字に写したもので、字そのものに意味はありません。

なぜ日本に多羅菩薩の像が無いのですか。

日本に密教が伝わったのが、この菩薩の信仰が盛んになるより前だったことが理由のひとつです。また同じ働きを観音がすでに受け持っていたことも影響したと考えられます。

多羅菩薩はどこで見られますか。

胎蔵界曼荼羅の蓮華部院に小さく描かれています。単独の像はほとんどなく、国が指定した彫刻は確かめられませんでした。

多羅菩薩と観音菩薩の関係は。

観音菩薩の涙から生まれたとされます。曼荼羅でも観音たちが集まる蓮華部院に置かれ、観音の系統に属します。

多羅菩薩と併せて覚えたい言葉・用語

救度母(くどぼ)

多羅菩薩を意味で訳した名。渡らせる母という意味。

蓮華部院(れんげぶいん)

胎蔵界曼荼羅で観音たちが集まる区画。

半跏踏み下げ(はんかふみさげ)

片足を座から下ろした座り方。すぐ立てる姿勢を示す。

胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)

大日如来の慈悲の面を図に表したもの。