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天部

月天(がってん)|月天子とはどんな仏か|見分け方・ご利益

月天子  / ガッテン

守護 密教

十二天の一員として月をつかさどる尊格。月輪を捧げ、日天と対になる。

月天とはどんな仏か

月天をひとことで言えば月そのものの尊格です。月天子ともいいます。

梵名チャンドラは、インドで月そのものとされた古い尊格です。日天と並んで、時の移り変わりを受け持ちます。

姿は日天と対をなします。手に月輪を捧げ、鵞鳥に乗ります。 月輪の中に兎を描く作例があり、これが日天の烏と対になります。

十二天のなかで、月天と日天だけは方角ではなく時を受け持ちます。二体そろって初めて意味を持つため、月天だけが単独で置かれることはほとんどありません。

月天の読み方と梵名

読みは「がってん」です。「げってん」と読む場合もあります。

「月」を「がつ」と読むのは呉音で、仏教の言葉に多い読み方です。日天が「にってん」となるのと同じ系統です。

経典では「月天子」の形がよく使われます。 「子」は天に属する者であることを示す語で、日天子と対になります。

月天(がってん)

もっとも広く使われる形。

月天子(がってんし)

経典に見える形。

月天王(がってんのう)

敬って呼ぶ形。

戦達羅(せんだら)

梵名の音を漢字に写した形。

チャンドラ(Candra)

意味は「月」。インドで月そのものとされた古い尊格。読みは「ちゃんどら」。

月天の見分け方(印相・持ち物・姿)

月輪を捧げ、鵞鳥に乗る姿が決め手です。日天と左右一対で置かれます。

持ち物 ─ 月輪

手に丸い輪を捧げます。 これが月輪で、月そのものを表します。

輪の中に兎を描く作例があります。月に兎がいるという見方は、経典の物語にさかのぼります。

日天の輪には烏、月天の輪には兎。輪の中身を見れば見分けられます。

乗り物 ─ 鵞鳥

鵞鳥に乗るか、鵞鳥が引く車に乗ります。 白い鳥が選ばれるのは、月の白さに重ねたためと考えられます。

梵天も鵞鳥に乗るため、乗り物だけでは決められません。手の中の輪を合わせて見ることになります。

作例によっては三日月をかたどった台に乗る形もあります。

並び ─ 日天と一対

月天は日天と必ず対にして置かれます。 装いも姿勢もよく似ており、唐風の衣に天冠をいただきます。

本尊の左右、あるいは十二天の絵のなかで向かい合います。

一体だけを見て判じるより、二体そろった並びで見るほうが確実です。

なぜ丸彫りが少ないのか

月天の彫刻はきわめて少ないものです。十二天が儀式のたびに掛け替える絵として使われたためです。

国立文化財機構が持つ重要文化財の木造十二天面七面にも、月天の面は含まれていません。

十二天のうち面として残ったのは七面だけで、月天はそこから漏れています。

月天のご利益

除災

闇を照らす月の光によるとされる。

心の静まり

月の静けさに重ねられることによる。

時を守る

十二天のうち時を受け持つことによる。

道場の清め

灌頂の儀式で場を囲むことによる。

月天に会える寺

月天の像を安置する寺は確かめられませんでした。

文化庁の国指定文化財等データベースにある重要文化財の木造十二天面七面は、梵天・帝釈天・多聞天・風天・日天・火天・自在天の七面で、月天の面は含まれていません。 所有者も独立行政法人国立文化財機構で、寺ではありません。

絵であれば、国宝の絹本著色十二天像が奈良の西大寺と京都の東寺(教王護国寺)に伝わり、その一員として月天が描かれます。国立文化財機構が持つ十二天像もありますが、そちらは博物館の所蔵で、会えるのは展示に出ているときだけです。

丸彫りの月天を目当てに寺を訪ねても、まず会えないと考えたほうがよいでしょう。

月天をめぐる仏のつながり

化身・同じ経典 三尊・脇侍・眷属 対になる仏 混同・見分け

月天の位階と、似た仏との違い

月天は天部の位に置かれます。十二天の一員として月を受け持ちます。

仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。月天は天部です。

十二天のうち十体は方角を受け持ちますが、月天と日天だけは時を受け持ちます。空間を守る十体に時の二体を足すことで、世界のすべてを覆うという組み立てになっています。

日天 ─ 必ず対になる相手

月天と日天は一対です。 どちらも唐風の衣をまとい、天冠をいただき、輪を捧げます。

見分けは輪の中身と乗り物です。月天の輪には兎、日天の輪には烏。月天は鵞鳥、日天は馬に乗ります。

二体そろった並びで見るのが確実です。

月光菩薩 ─ 月をつかさどる者どうし

どちらも月にちなむ尊格ですが、位階が違います。月光菩薩は菩薩、月天は天部です。

見分けは役目です。月光菩薩は薬師如来の脇に立ち、日光菩薩と一対で薬師を助けます。月天は十二天の一員で、道場を守ります。

脇侍として薬師如来のかたわらに立っていれば月光菩薩と考えてよいでしょう。

梵天 ─ どちらも鵞鳥に乗る

鵞鳥に乗る点が共通します。 十二天の絵で紛らわしくなる組み合わせです。

見分けは顔の数と持ち物です。梵天は四つの顔を持つことが多く、月天は一つです。月天は手に月輪を捧げます。

十二天の並びでは、梵天は上方、月天は日天と対になる位置に置かれます。

月天についてよくある質問

月天と月天子は違うものですか。

同じものです。「子」は天に属する者であることを示す語で、経典では月天子の形がよく使われます。

月天はどう見分けますか。

手に月輪を捧げ、鵞鳥に乗ります。月輪の中に兎が描かれることもあります。日天と対にして置かれます。

月天の像はどこで見られますか。

寺が持つ国指定の彫刻は確かめられませんでした。重要文化財の木造十二天面七面にも、月天の面は含まれていません。

月光菩薩とは違うのですか。

違います。月光菩薩は菩薩で、薬師如来の脇に立ちます。月天は天部で、十二天の一員です。

月輪の兎には由来がありますか。

身を投げて行者に施した兎が月に上げられたという物語が経典に伝わり、月と兎が結びつけられたとされます。

月天と併せて覚えたい言葉・用語

月輪(がちりん)

月を表す丸い輪。月天が手に捧げる。

呉音(ごおん)

漢字の古い読み方。仏教の言葉に多く残る。

鵞鳥(がちょう)

白い水鳥。梵天と月天の乗り物とされる。