不動明王に従う八体の少年。運慶の代表作として名高い。
八大童子とはどんな仏か
八大童子をひとことで言えば不動明王の少年たちです。八体で一組をなします。
顔ぶれは、矜羯羅・制多迦の二童子に、恵光・恵喜・阿耨達・指徳・烏倶婆誐・清浄比丘を加えた八体です。
この組み合わせを日本の彫刻史に刻んだのが、和歌山の金剛峯寺に伝わる木造八大童子立像です。国宝に指定され、運慶の作とされます。八躯のうち六躯が当初のものです。
この像の見どころは、八体の顔が一体ずつ違うことです。 驚いた顔、怒った顔、落ち着いた顔、ふてくされた顔。少年たちの表情が細かく彫り分けられています。
仏像は、決まった形をどれだけ正確に彫るかを競うものでした。そこに一人ひとりの性格を彫るという発想を持ちこんだところに、鎌倉彫刻の新しさがあります。
二童子だけの三尊形式より格の高い構えで、大きな寺の不動堂に用いられました。
八大童子の読み方と梵名
読みは「はちだいどうじ」です。
一体の名ではなく、八体をまとめて呼ぶ名です。四天王・十二神将・五大明王と同じ、組み合わせの名にあたります。
八体の名は、恵光・恵喜・阿耨達・指徳・烏倶婆誐・清浄比丘・矜羯羅・制多迦です。このうち矜羯羅と制多迦だけが、二童子として単独でも広く知られています。
八大童子(はちだいどうじ)
もっとも広く使われる形。
不動八大童子(ふどうはちだいどうじ)
仕える相手を添えた呼び方。
八童子(はちどうじ)
略した形。
アシュタクマーラ(Astakumara)
意味は「八体の童子」。「アシュタ」が八、「クマーラ」が少年を指す。読みは「あしゅたくまーら」。
八大童子の見分け方(印相・持ち物・姿)
八大童子の見分けは、八体それぞれの持ち物と表情にあります。まとめて一つの形があるわけではありません。
八体の顔ぶれ
恵光は日輪を持ち、恵喜は三叉戟を持ちます。阿耨達は竜に乗り、指徳は輪を持ちます。
烏倶婆誐は炎を思わせる姿、清浄比丘は僧の姿をとります。そこに合掌する矜羯羅と、金剛棒を握る制多迦が加わります。
八体それぞれに持ち物と姿が定められていますが、作例による違いが大きく、名と像を一対一で結びつけるのは容易ではありません。
表情 ─ 一体ずつ彫り分ける
金剛峯寺の国宝の八大童子は、顔が一体ずつ違います。
目を見開いて驚く顔、口を結んで耐える顔、ふてくされた顔、静かに前を見る顔。同じ少年の姿でありながら、性格が彫り分けられています。
決まった形を正確に彫ることが仏師の仕事だった時代に、一人ひとりの性格を彫るという発想を持ちこんだ点に、この像の新しさがあります。
大きさ ─ 中尊より小さい
八体はいずれも、中央の不動明王より小さく造られます。
少年の姿であること、仕える立場であることを、大きさで示しています。
金剛峯寺の像はいずれも一メートル前後です。堂の中で不動明王を囲むように配されます。
二童子との関係
八大童子には矜羯羅・制多迦の二童子が含まれます。二童子は八大童子の一部です。
不動明王の脇侍としては、二童子だけの三尊形式が広く行われました。八体そろえるのは、大きな寺の不動堂に限られます。
八体そろっていれば八大童子、二体だけなら二童子。 数を数えるのが見分けの第一歩です。
八大童子のご利益
厄除け
不動明王の眷属として災いを払う。
子どもの成長
少年の姿であることによる。
学業成就
教えに従う姿にちなむ。
心の安定
八体それぞれが心の働きを表すとされる。
八大童子に会える寺
八大童子が八体そろって残る例は、日本に多くありません。ここに挙げたのは、所有者が寺であることを文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられたものだけです。
多くの寺では、二童子だけの三尊形式が用いられました。八体をそろえるには堂の広さと費用が要ります。
八大童子を探すときは、大きな不動堂を持つ寺をあたるのが早道です。
金剛峯寺 不動堂(こんごうぶじ ふどうどう)
国宝
八大童子の彫刻で唯一の国宝です。運慶の作とされます。
文化庁の国指定文化財等データベースの名称には「恵光、恵喜、烏倶婆誐、清浄比丘、矜羯羅、制多伽」と六体の名が記され、六躯が指定されています。所有者は宗教法人金剛峯寺です。
八体のうち六躯が当初のもので、残る二躯は後の補作です。 少年たちの表情が一体ずつ彫り分けられ、鎌倉彫刻の頂点のひとつに数えられます。
同じ寺には重要文化財の木造孔雀明王像、木造執金剛神立像・深沙大将立像もある。所在地は公式サイトで確かめた。
世田谷山観音寺(せたがやさんかんのんじ)
重要文化財
世田谷山観音寺の住所:東京都(文化庁の国指定文化財等データベースで所有者を確認。詳しい住所は公式の情報を確かめられませんでした)
像:木造不動明王及八大童子像 九躯/重要文化財
この像に結び付く願い:心の安定
不動明王と八大童子がそろった九躯が、ひとまとまりで重要文化財に登録されています。
文化庁の国指定文化財等データベースで、所有者が世田谷山観音寺と記されています。
東京で八大童子がそろって拝める、数少ない場所です。中尊と八体がそろった組み合わせは全国でも限られます。
所有者は文化庁の国指定文化財等データベースで確認した。
八大童子をめぐる仏のつながり
八大童子の位階と、似た仏との違い
八大童子は明王の枠に置かれます。不動明王に仕える眷属の組み合わせです。
仏には如来・菩薩・明王・天部という四つの位階があります。八大童子は不動明王の眷属なので、明王の枠に含めて扱われます。
ただし本来は仕える側の存在で、明王そのものではありません。天部に近い性格を持ちます。
同じように主に仕える組み合わせに、薬師如来の十二神将、千手観音の二十八部衆があります。どの仏に仕えるかで、置かれる枠が決まります。
矜羯羅童子 ─ 八体のうちの一体
矜羯羅童子は八大童子に含まれます。全体と、その一部の関係です。
八体そろって配される場合は八大童子、二体だけなら二童子と呼びます。
矜羯羅童子は合掌して独鈷杵をはさむ姿で、八体のなかでもっともおとなしい表情をします。
十二神将 ─ 眷属の組み合わせどうし
どちらも主となる仏に仕える組み合わせです。仕える相手が違います。
八大童子は不動明王、十二神将は薬師如来に仕えます。
姿も違います。十二神将は甲冑を着けた大人の武神、八大童子は少年の姿です。数も八と十二で分かれます。
八大童子についてよくある質問
八大童子とは何ですか。
不動明王に仕える八体の童子です。矜羯羅・制多迦の二童子に、恵光・恵喜・阿耨達・指徳・烏倶婆誐・清浄比丘を加えた顔ぶれです。
八大童子と二童子の関係は。
二童子は八大童子の一部です。不動明王の脇侍としては二童子だけの三尊形式が広く行われ、八体そろえるのは大きな寺に限られました。
八大童子の像で有名なものは。
和歌山の金剛峯寺不動堂の国宝の六躯です。運慶の作とされ、少年たちの顔が一体ずつ彫り分けられています。
八大童子はどう見分けますか。
八体それぞれに持ち物が定められていますが、作例による違いが大きく、名と像を一対一で結びつけるのは容易ではありません。まず八体そろっているかを数えます。
八大童子の像はどこで見られますか。
和歌山の金剛峯寺不動堂に国宝の六躯、東京の世田谷山観音寺に不動明王を含む重要文化財の九躯があります。
八大童子と併せて覚えたい言葉・用語
眷属(けんぞく)
主となる仏に仕える者たち。
運慶(うんけい)
鎌倉時代の仏師。八大童子立像の作者とされる。
当初(とうしょ)
造られた当時のもの。あとから補われたものと区別する言い方。
不動堂(ふどうどう)
不動明王を本尊とする堂。