忿怒相の仏像一覧|怒りの顔をする仏と、その意味
仏像には、恐ろしい顔をしたものがあります。眉を吊り上げ、牙をむき、目をむいて睨む。
この表情を忿怒相(ふんぬそう)といいます。
怒っているのは、怒りを向けたい相手がいるからではない。
言って聞かない相手を、力ずくでも導くための顔と説かれます。
このページでは、収録している忿怒の仏を横に並べて見わたします。
忿怒相とは|なぜ仏が怒るのか 1体
五大明王|不動明王を中心に四方を固める 5体
ふつうでない忿怒の仏 5体
忿怒の仏には、ほかにない受け持ちを負ったものがいます。
愛染明王は全身が朱い明王で、
欲そのものを、悟りへ変えると説かれる。
否定するのではなく、そのまま向きを変えるという考え方です。忿怒相でありながら、扱うのは愛と欲です。
烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)は不浄を火で焼き払う明王で、便所に祀られることで知られます。汚れた場所こそ守りが要る、という考え方です。
大元帥明王は国を守る修法の本尊で、宮中でだけ修されてきました。
倶利伽羅(くりから)は姿が変わっています。
剣に黒い竜が巻きつき、剣先を呑もうとしている。
人の形をとらない、不動明王の化身です。
馬頭観音は、観音のなかで唯一、怒りの顔をします。 頭に馬の頭を戴き、菩薩でありながら忿怒相をとる数少ない例です。
日本の山で生まれた忿怒の仏 6体
忿怒の仏を並べる
怒りの顔でも、受け持つものが違います。
| 仏 | 姿の特徴 | 受け持つもの |
|---|---|---|
| 不動明王 | 剣と羂索。背に火炎 | 力ずくでも導く |
| 降三世明王 | インドの最高神を踏む | 五大明王の東方 |
| 大威徳明王 | 水牛に乗り、六面六臂六足 | 五大明王の西方 |
| 愛染明王 | 全身が朱い | 欲を悟りへ変える |
| 烏枢沙摩明王 | 火で焼き払う | 不浄。便所に祀られる |
| 馬頭観音 | 頭に馬の頭 | 観音で唯一の怒りの顔 |
| 蔵王権現 | 片足を上げた激しい姿 | 日本の山で生まれた仏 |
| 倶利伽羅 | 剣に黒い竜が巻きつく | 不動明王の化身。人の形をとらない |
並べると、忿怒相は「怖がらせるための顔」ではないとわかります。
怒りの向く先は、相手ではなく相手の迷い。
不動明王の剣は迷いを断ち、羂索は逃げる者を引き戻します。どちらも、相手を捨てないための道具です。
もうひとつ、忿怒の仏は扱いにくいものを引き受けています。
欲、不浄、疫病、戦。
愛染明王は欲、烏枢沙摩明王は不浄、青面金剛は庚申の夜。穏やかな顔の仏では受け持ちにくいものが、この一群に集まっています。
最後に、忿怒相をとるのは明王だけではありません。馬頭観音は菩薩でありながら怒り、夜叉は天部でありながら忿怒相をとります。
位階ではなく、役目が顔を決めている。
逆に、明王でありながら孔雀明王だけは怒りません。
忿怒相についてよくある質問
忿怒相の読み方と意味を教えてください。
ふんぬそうと読みます。怒りをあらわした表情、およびその姿を指し、忿怒形(ふんぬぎょう)ともいいます。眉を吊り上げ、牙をむいて睨む顔が特徴です。
なぜ仏が怒った顔をしているのですか。
穏やかに説いても聞かない相手を、力ずくでも導くためと説かれます。不動明王は大日如来の命を受けて怒りの姿をとった仏とされ、その怒りは大日如来の慈悲そのものだと説明されます。
忿怒相の仏はどれですか。
明王のほとんどが忿怒相をとります。不動明王を中心とする五大明王、愛染明王、烏枢沙摩明王、大元帥明王などです。菩薩では馬頭観音、天部では夜叉が忿怒相をとります。
不動明王が持っているものは何ですか。
剣と羂索(けんじゃく)と呼ばれる縄です。剣は迷いを断ち、縄は逃げる者を縛って引き戻すためのものと説かれます。どちらも相手を捨てないための道具です。
怒らない明王はいますか。
います。孔雀明王です。明王のなかでただひとつ怒らない顔をし、孔雀に乗る姿で表されます。
日本で生まれた忿怒の仏はありますか。
あります。蔵王権現はインドの経典に出てこない、日本の山の中で生まれた仏で、修験道の本尊です。飯縄権現は烏天狗の顔で白狐に乗る姿で表されます。
忿怒の仏の一覧(収録しているすべての仏像) 29体
本文で取り上げなかったものも含めて、この役割に属する仏像をすべて並べています。名前を押すと個別ページへ移ります。